米3月個人所得、現金給付を追い風に2桁増と過去最大の伸び

米3月個人消費支出は、バイデン政権下で成立した追加経済対策の他、ワクチン接種の進展、経済活動の再開を支えに増加に転じた。個人所得は追加経済対策で1,400ドルの現金給付の効果を受け、過去最大の伸び達成。その結果、貯蓄率は過去最高を記録したトランプ前政権での景気刺激対策の影響を受けた20年5月以来の高水準を記録した。詳細は以下の通り。

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〇個人消費支出
→前述の現金給付やワクチン接種などの影響に加え、テキサス州などにみられるように大寒波の反動もあって大幅増加。

・前月比4.2%増と過去5ヵ月間で2回目の増加、市場予想の4.1%増を上回る、伸び率は20年6月以来の高水準
・前年比11.0%増と過去5ヵ月間で2回目の増加、5月は9.5%減、伸び率は1984年1月以来の高水準
・インフレを除く実質ベースの前月比3.6%増と過去5ヵ月間で3回目の増加、前月は1.2%減
・インフレを除く実質べースの前年比では8.5%増と2020年2月以来の増加、伸び率は2003年以降で最大

個人消費支出の内訳(前月比ベース)
・財 8.1%増と過去6ヵ月間で2回目の増加、前月は3.0%減
・耐久財 10.8%増と過去5ヵ月間で2回目の増加、前月は4.9%減
・非耐久財 6.5%増と過去6ヵ月間で2回目の増加、前月は1.9%減
・サービス 2.1%増と4ヵ月連続で増加、前月は微増

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チャート:項目別の寄与度、耐久財やサービスなど満遍なく個人消費を押し上げ 作成:My Big Apple NY

〇個人所得
→現金給付を追い風に、過去最大の伸びを記録。

・前月比21.1%増と過去5ヵ月間で3回目の増加、市場予想の20.3%増を上回り過去最大の伸び
・前年比では29.0%増と2014年1月以降の増加基調を維持、過去最大の伸び
・実質ベースでは前月比20.4%増と過去5ヵ月間で3回目の増加、過去最大の伸び
・実質ベースでは前年比は26.1%増と2014年1月以降の増加トレンドを維持、過去最大の伸び

所得の内訳は、名目ベースの前月比で以下の通り。

・賃金/所得 1.1%増、前月は横ばい(民間は1.1%増、政府は0.7%増)
・経営者収入 6.2%増と3ヵ月連続で増加、前月は3.0%増(農業は8.7%増、非農業は6.1%増)
・家賃収入 1.0%減と3ヵ月連続で増加、前月は0.9%増
・資産収入 0.3%増と2ヵ月連続で増加、前月は0.7%増(配当が0.6%増と6ヵ月連続で増加、金利収入は横ばい)
・社会補助 95.1%増と過去4ヵ月間で3回目の増加、前月は27.5%減
・社会福祉 96.2%増と過去4ヵ月間で3回目の増加、前月は27.7%減(メディケア=高所得者向け医療保険は0.7%増と増加基調を維持、メディケイド=低所得者層向け医療保険は0.1%増と増加基調を維持、失業保険は1.1%増と過去4か月間で3回目の増加、退役軍人向けは0.5%増と増加基調を維持、その他は現金給付を受け507.4%増と過去4ヵ月間で3回目の増加)

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チャート:項目別の寄与度、年金や失業保険など政府からの受け取る収入を指す移転所得の寄与度が大半を占める 作成:My Big Apple NY

〇可処分所得
・前月比23.6%増と過去5ヵ月間で3回目の増加、過去最大の伸び
・前年比は32.3%増と増加基調を維持、過去最大の伸び
・実質ベースでは前月比23.0%増と過去5ヵ月間で3回目の増加、過去最大の伸び
・実質ベースでは前年比は29.3%増と増加基調を維持、過去最大の伸び

〇貯蓄率
・現金給付に支えられ、貯蓄率は27.6%と20年5月以来の高水準。

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チャート:個人所得の伸びの割に消費の伸びは限定的で、貯蓄率は大幅上昇 作成:My Big Apple NY

〇個人消費支出(PCE)価格指数
→油価の上昇やサプライチェーン途絶による効果、需要の回復を受けてコロナ前以前の高い伸びに。

・PCE価格指数は前月比0.5%の上昇し20年6月以来の高い伸び、前月は0.2%の上昇
・PCE価格指数は前年比は2.3%上昇し2018年8月以来の高い伸び、前月は1.5%の上昇
・コアPCE価格指数は前月比0.4%上昇し2009年10月以来の高い伸び、前月は0.1%上昇
・コアPCEの前年比は1.8%上昇し2020年2月以来の高い伸び、前月は1.4%

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チャート:PCEコアの前年比、2020年2月以来の高い伸びに 作成:My Big Apple NY

――大方の予想通り、現金給付を始めとしたポジティブな効果が支えとなり個人消費や個人所得は市場予想を上回る増加を遂げました。問題は、こうした好調な結果がいつまで続くかどうか。貯蓄率が高い水準にあるため、支出へのバッファーは厚いながら、就業者がコロナ以前の水準を回復するまで840万人であることを踏まえると、貯蓄を取り崩して支出するにあたって、慎重となる世帯が存在するはずです。バイデン政権のインフラ計画”米国雇用計画”などが成立しても、現金給付ほど即効性は考えられず、やはり雇用増加の裾野が広がるか否かが消費のカギを握ることでしょう。現状、高学歴の失業率の動向など、質的な改善については課題が多い状況ですが・・。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2021年5月2日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください