米国世論はバイデン政権の100日をどう評価しているか

バイデン大統領は4月に入って漸く、就任後初の記者会見や外国首脳との会談、そして議会演説を行った。本稿では米国の世論調査会社ラスムセンの最近の調査結果から、バイデン政権の100日を米国民がどう評価しているか見てみたい。

United States government officialより

30の報告は、4月のバイデン政権の仕事ぶりを有権者の49%が承認した一方、49%は承認せず、前者は3月比1%ポイント低下、後者は1%ポイント上昇したとした。なお、調査は月間約1万件の有権者の約1割に対し日々行われている。

100日目を迎える4月の総合評価は賛否が拮抗したようだが、4月最終週の10項目ほどの調査結果が5月1日、以下の通り報告された。

  1. バイデン政権の仕事ぶりを47%が承認し、4月平均を2ポイント下回った 。
  2. 多くの国民は、依然としてバイデンが昨年の選挙で公正に勝利したことを疑っている。
  3. 米国の政治的分裂は、コロナパンデミックへの対応を含めすべてに影響を及ぼしている。
  4. 民主党員は他の米国人よりもはるかにCOVID-19ワクチンを信頼している。
  5. 反警察の言説は警官の命をより危険に晒すと考える有権者の過半数によれば、政治家の警察批判は法執行を改善しない。
  6. 有権者の大半がカマラ・ハリス副大統領に好ましくない印象を持ち、共和党の有権者は彼女が大統領になる資格を疑っている。
  7. 近年、資本主義に対する批判があるが、有権者は社会主義より圧倒的に資本主義を好んでいる。
  8. 有権者の圧倒的多数は、不法移民が政府の利益に反していると考えている。
  9. 有権者のほぼ半数はより厳しい銃規制法を必要と考えるが、多くは既存の法律のより厳格な施行が暴力を減らすと考えている。
  10. 米国の有権者の39%は、米国が正しい方向に向かっているようだと考えている。

2.の大統領選不正疑惑の燻ぶりは、目下アリゾナ州マリコパで州議会による選挙監査が行われていることや、ジョージアやフロリダなどのトランプ勝利州を中心に、より不正の起こりにくい選挙法への改正が進められていることからも窺える。

13の報告では、不正行為が結果に影響を与えた可能性が「高い」と考える者が51%、「非常に高い」が35%だった。共和党支持者の74%が「高い」とする一方、民主党支持者は30%が「高い」、支持政党なしでは51%が「高い」だった。

関連で7日の報告では、53%が政治報道を信用しおらず、信頼しているは33%、わからないが14%だったとの調査を報告した。有権者の大半が、記者はバイデンを助けたいと考えているとしているからだそうだ。

民主党下院は、期日前投票や郵便投票など緩和する法案(HR1)を可決した。が、6日の報告は、75%がジョージアの改正法が謳うような身分証明の厳格化などの「ID法」を差別的とは思わないと考えているとしている。

同報告はまた、ジョージア州が新選挙法を可決した後、MLBがオールスターゲームをアトランタからデンバーに移したことを、大半の米国人がスポーツに政治を持ち込むのは良くないとする一方、民主党支持者の大多数はこの決定を正しいと述べたとする。

5.の一部政治家による反警察発言に関する27日の調査は、ジョージ・フロイドの死を契機とした大統領選をも左右した米国を分断する大問題に関するもので、55%が一部政治家による発言は警察官の仕事をより危険にするとし、影響を与えないは10%だった。

この一部政治家とは民主党下院の黒人女性議員マキシン・ウォーターズ。彼女は3週間にわたるフロイド裁判が終盤を迎えた17日、事件が起きたミネソタの集会で「有罪評決が出なければ、その時は、私たちは路上で抗議するだけでなく、正義のために戦わなければならなくなる」と述べたのだ。

ミネアポリス裁判所の陪審員は20日、2日間8時間以上の議論の末、白人警察官を殺人などで有罪(最高40年の禁固刑)とした。が、多くの有権者は地元の警察を支持し、警官が人種差別主義者であるという主張を拒否していると16日のラスムセンは報告した。

同報告は、裁判終盤には66%が警官は人種差別主義者ではないとし、74%は地元の警察のパフォーマンスを「良い」または「優れている」と評価、彼らに悪い点数をつけたのは8%だったとする。民主党州知事による警察予算縮小方針に、多くの国民は反対という訳だろう。

判決直後の23日の報告では、今日の米国の人種関係が「良好または優れている」と考える者が24%、一方、44%はそれを「悪い」と評価していて、20年1月の調査と比べ、前者は10%ポイントの減少、後者は13%ポイントの増加となった。この問題は深刻化している。

8.の不法移民も深刻だ。が、バイデンがこれをカマラ・ハリスに投げているのは、この問題が彼の足元を掬いかねないと考えているからではなかろうか。8日の報告では、50%がバイデンの移民政策を「悪い」とし、優れているが14%、良いが21%、公正が11%だった。

保守派ジャーナリストのリズ・ピークが筆者と同じ見方を28日のThe Hillに、「国境危機がハリスの大統領への可能性に火を点ける」と題して書いている。ピークのハリス批判派は舌鋒鋭い。

ピークは記事を、前任の遺産を破棄する大統領のせいで「2万人以上の同伴者のいない子供が酷い状態で収容」されている国境危機をハリスに担当させるのは、「たぶん彼女の懸念通り、副大統領にとってほとんど確実に(大統領になる)計画を失うこと」と書き出している。

ハリスは国境に行かないばかりか、予定を問う記者を笑ってごまかし、非常に不真面目な印象を与えた。史上最も透明性の高いホワイトハウスを約束したバイデン政権も国境報道を制限した。おそらくハリスが行けばメディアが押し掛ける懸念があったからだろう。

ハリスはバイデンに代わって各国首脳との電話会談をこなし、菅総理とも1時間会談した。一端の元首気取りだが、ならば不法移民を生み出しているグアテマラ、エルサルバドル、ホンジュラスをいち早く訪問し、各首脳と会談すべきだ。

斯くて26日の報告は、51%がハリスに好ましくない印象を持っており、うち43%は「非常に好ましくない」だった。特に共和党支持者は彼女が大統領になる資格そのものを疑っている。一方、46%は好意的な印象を持ち、うち28%は「非常に好意的」であるとした。

10.の有権者の39%が米国は正しい方向に向っているとの報告は26日のもの。前の週から1ポイントの低下だが、残りの61%の内訳詳細は不詳だ。が、民主党支持者なら、如何にもリベラルらしいバイデン政権の人事とバラマキ政策を高く評価をすることだろう。

ホワイトハウスによると、この100日で任命した1,500人の役人の約58%と、副大統領を含む25の閣僚と閣僚レベル職の約44%を女性が占めているそうだ。白人でない者やLGBTを公表している者も少なからず登用されている。

バラマキに関してバイデンは、インフラストラクチャパッケージは「子供たちと企業の成功を助ける」とし、「副大統領にこの取り組みを主導するのを手伝うよう頼んでいる」と述べた。国境対応と同様にバイデンは4兆ドルのパッケージの配分をハリスに投げたのだ。

対中政策は物足らない上に、内政でも米国民がこの様な評価している正副大統領が、果たして信頼に足るのだろうか。