人生、山あり谷あり・・・

どんな方も人生の浮き沈みはあるものです。10代には受験の試練、20代には就職、30代は家族ができるかもしれない、40代は仕事の行き詰まりや悩みがピークになるし、50代は人生に色づくとき、60で赤いちゃんちゃんこはもう古すぎるけれどリタイア後の人生が見えてくるとき、70代はいよいよ前線から退き、80代は健康との戦いに時間を割かれます。

その浮き沈みの中で同じ路線をまい進する人もいるし、切り替えていく人もいます。仕事や家族生活も転職や再婚などで転機を迎えることは今の時代、誰も不思議がらなくなりました。

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私がアメリカにいた19-20歳の頃に面倒を見てくれたアメリカ人ファミリーは仲が良い半面、しばしひどい夫婦喧嘩をしていました。ある時、3週間ぐらいかけてご夫婦と私の3人でニュージャージーからセミオートキャンプでフロリダまで行ったときは目も当てられない状態で間に入った私が大変肩身の狭い思いをしました。それから数年後、離婚したという知らせを受け取った時、大きな衝撃であり、離婚の意味が十分把握できなかった記憶があります。

バンクーバーに赴任してしばらくしたころ、ある総合商社の支店長をリタイアされた方が「バンクーバーの日本人は離婚するのが当たり前のように多く、とても変だ」と怒り交じりで述べていました。確かにその通りで特に国際結婚された方に苦労された方が多い気がします。統計がないので肌感覚ですが、離婚に至った理由の多くは価値観の相違であります。

これは日本の成田離婚でもそうですし、電撃離婚した前田敦子さんでも同じなのですが、恋愛と実生活が違うだけではなく、教育背景や家庭環境、価値観、共有する時間、更には国際結婚の場合は宗教観による常識の違いなども出てきます。では、昔の結婚と今は何が違うのでしょうか?個人的には昔は今よりはるかにシンプルな社会構造の中で夫婦が未来を共に築くという共通の目標が設定しそれを維持しやすかったと思うのです。

ところが今の時代、結婚した女性もお勤めするのが当たり前、とすれば夫婦双方が別々の社会的刺激を受け続けます。更にSNSなど怒涛の情報が入り込み、20代、30代という若くて成熟しきれていない間に別々の価値観が萌芽しているのではないかと思うのです。

マイクロソフトの創業者のビルゲイツ氏とメリンダ氏が離婚します。現地の報道を見る限り「お金ではない」「財団は今後も共同していく」としています。ゲイツ氏は65歳、メリンダ氏は56歳。日本人ならなんでこの歳で、と思うかもしれません。私はよく決心したと思いました。北米は個人主義が強いので自分の人生観との対比で相方が「自分と同じ山に登っているのか」を見ているのだと思います。ゲイツ氏夫妻は27年の結婚生活の間、数多くの山を共に上ったと思いますが、遂に卒業し、それぞれが別の山を目指し、余生のストレッチをするということでしょう。

2019年に離婚したアマゾンのジェフベゾス氏も同じでしょう。世間はお金の話で持ち切りでしょうけれど本人たちはお金より将来の自分に賭けています。仮に半分持って行かれてたとしてもそれぐらいすぐに取り返せるぐらい稼ぐという意気込みがベゾス氏にはありました。そこには「亭主留守で元気がいい」という発想はなく、夫婦と言えども一個人としての自立性を尊敬しているように見えます。

ところでウォーレンバフェット氏が自分が辞めるときはグレッグアベル氏を後継者とし、取締役会で既に合意されていると報じられています。バフェット氏も90歳になり、世界から賢人と注目され続けることから一歩下がり、フリーダムを楽しみたいのかもしれません。その時にハンバーガーとコカ・コーラ以外の発見があるかもしれません。

離婚や転職に伴い、別れた相手や前職のことをぼろくそに言う人がたまにいます。私はそれは違うだろうと思うのです。もちろん嫌でそこから離れたわけですがそれは自分を発見するきっかけにもなったでしょう。あるいは一緒にいる間に共に成長した部分、学んだ部分もあったはずです。それには感謝すべきです。「君とはもう、二度と会うことはないだろう」というのは嫌な響きのセリフで「ともに頑張ろう、行ってらっしゃい」というのが愛のある表現ではないでしょうか?

しかし、私も振り返れば、平たんな道のりは一度もなかったような気がします。それもまた人生ですかね。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年5月5日の記事より転載させていただきました。