萩生田光一文部科学大臣は仕事師

田村 和広

萩生田光一文部科学大臣がまた一つ、日本のための大きな仕事を成し遂げた。

文部科学省HPより

「従軍慰安婦」および「いわゆる従軍慰安婦」という不適切な表現の教科書からの駆逐である。報道によれば、今後は「ともに不適切である」という政府見解に沿った教科書検定が実施されることとなった。萩生田大臣には心より感謝を申し上げたい。

「いわゆる従軍慰安婦」表現も不適切 文科省が教科書検定で見解 

文部科学省は12日、政府が教科書の「従軍慰安婦」の表現を不適切としたことに関し、「いわゆる従軍慰安婦」との表現も不適切であるとの認識を示した。同日の衆院文科委員会で日本維新の会の藤田文武氏が見解をただし、文科省の串田俊巳統括審議官が「今年度の教科書検定より、『いわゆる従軍慰安婦』との表現を含め政府の統一見解を踏まえた検定を行っていきたい」と述べた。「従軍」と「慰安婦」を組み合わせて使用することも検定対象となる考えを示した。

(産経新聞電子版5月12日より引用、太字は筆者)

「いわゆる従軍慰安婦」表現も不適切 文科省が教科書検定で見解
文部科学省は12日、政府が教科書の「従軍慰安婦」の表現を不適切としたことに関し、「いわゆる従軍慰安婦」との表現も不適切であるとの認識を示した。同日の衆院文科委員…

教科書における“いわゆる「従軍慰安婦」”の記載について

旧日本軍の時代には、慰安婦は存在した。しかし「従軍慰安婦」は存在していなかった。戦後に造られた「従軍慰安婦」という単語は、「朝日新聞の捏造キャンペーン(西岡力氏による表現、月刊正論6月号)」に始まる一連の歴史歪曲物語に登場する架空の産物に過ぎない。

「教科書における従軍慰安婦の問題」とは寧ろ「作り話がもとで世界が誤解し、学校の教科書にも登場する事態になった」誠に残念な歴史的珍事件のことを指すべきであろう。

この事件は未だに教科書に対して悪影響を及ぼし続けている。例えば次の産経新聞(電子版)の記事からは、結局河野談話の悪影響から、検定での指導は手足を縛られていることが伺われる。

文科省教科書課は「『従軍慰安婦』との言葉が河野談話に残っており、政府が談話を継承するとの立場である以上、教科書で使ってはいけないとするのは難しい」と話す。

(産経新聞(電子版)3月31日より引用)

教科書から消えない「従軍慰安婦」 根拠の河野談話、今も悪影響
 4月から中学校で使われる一部の教科書で、戦後の造語で、「強制連行説」と結び付けて使われることが多かった「従軍慰安婦」の記述が復活する。慰安婦募集の強制性を認…

結局、朝日新聞が過去に犯した一連の悪行とそれを適時適切に取り扱うことに失敗した当時の政府が作った“人的災害”とも言える不適切な状況を、現政権の萩生田文科大臣が後始末したということである。

従来から高校教科書では、山川出版社をはじめ実教出版や清水書院によって「いわゆる従軍慰安婦」という表現は使用されていた。それに加え山川は、今年から新規参入した中学校教科書においても「いわゆる従軍慰安婦」という表記を使用し教科書検定に合格していた。これは不適切な表現が中学校教科書でも“復活”する兆しにも思えたが、今回の文部科学省の統一見解によって来年度以降は修正(適正化)を期待できる状況となった。

朝日新聞は萩生田大臣に感謝すべきだ

萩生田氏が文部科学大臣に初めて就任した2019年9月当時、筆者は「朝日新聞が嫌いな萩生田 新文科相に望む4つのこと」という記事をアゴラに掲載した。

当該記事においては、次の4点を要望した。

  • 要望1:放射性物質や放射線への科学教育
  • 要望2:期待値の考え方の強化
  • 要望3:歴史教育の刷新
  • 要望4:成人に対する国民教育の創設

今回の“いわゆる「従軍慰安婦」”の教科書記載問題は、当時要望した「歴史教育の刷新」の観点から評価するならば、価値ある現実解の一つである。歪んだ歴史教育によって、次世代を担う若い日本人に対する「精神面の汚染」や「歪曲された歴史」の源の一つが遮断された効果は、今後数十年かけて徐々に発現するであろう。

朝日新聞は安倍前首相への“憎悪感情”をぶつける対象に、別人格である萩生田大臣までも含めており、今から1年8か月前となる初就任時には社説で次のような“怨念”オピニオンを展開していた。これは誠に不当な人格攻撃と言えるだろう。

首相は今回、加計学園の獣医学部新設問題への関与が取りざたされた側近の萩生田光一・党幹事長代行を文部科学相に起用した。森友・加計問題は、いまだ真相が解明されていないというのに、既に「過去のもの」と言わんばかりだ。

(朝日新聞デジタル9月12日社説より抜粋、太字は筆者)

https://www.asahi.com/articles/DA3S14174305.html

「従軍慰安婦」問題は、朝日新聞が展開した「捏造キャンペーン」が遺した、日本にとっての「負の遺産」である。にもかかわらず、今回の文部科学省の件についても、その背景にある自社の一連の捏造記事には一切触れず、“歴史教科書の一部には、1993年の河野洋平官房長官談話をもとに、「いわゆる従軍慰安婦」などと記述しているものがある。”といった極めて短い“アリバイ”記事を掲載したのみである。これを前掲社説風に指摘させて頂くならば、

朝日新聞は、

“「従軍慰安婦」問題は、いまだ評価が回復されていないというのに、既に「過去のもの」と言わんばかりだ。”

最近社長が交代した朝日新聞は社風に残る旧弊を一掃し、明確な方針転換を図るチャンスである。この際、「殊更に非難することもなく、粛々と自社の不始末を“後片付け”してくれる萩生田大臣」に対して、せめて感謝の意を表明するくらいのしたたかな「イメージ回復」キャンペーンを展開したほうがいいだろう。

むすび

筆者は勝手な希望を託したのだが、萩生田大臣はその一つを確かに達成してくれた。それはまた、日本にとっても失ったものを取り戻すための大きな一歩であると考える。心より感謝を申し上げると共に、引き続き活躍に期待している。

 

【参考サイト】萩生田光一文部科学大臣記者会見録(令和3年5月11日)

萩生田光一文部科学大臣記者会見録(令和3年5月11日):文部科学省

(「従軍慰安婦」という教科書の記述についての記者からの質問に答えて)

(萩生田大臣)
前段の件ですけれど、新しい閣議決定の中で、「従軍慰安婦」という造語は、今後ですね、誤解を招くので使わないという政府方針は明確になりました。一方、ご指摘の「河野談話」という談話そのものについては、今までも政府で継承していこうということを決めておりまして、今までその「従軍慰安婦」というワードが出てくることが、検定基準の中で、言うならば認められてきた根拠は、「河野談話」の中に「従軍慰安婦」というワードがあるんだから、それは政府として認めているじゃないかという建付けの中で「従軍慰安婦」というワードを認めてきたのですけれど、他方、今申し上げたように、この言葉を使わないということを決めましたので。教科書において「従軍慰安婦」という言葉を積極的に使うということは、子供たちに誤解を招くことになるので今後使われないという方針になりました。

(中略)

今後、教科書会社が、今後はその方針に沿って適切な教科書に変えていっていただけるんだろうというふうに期待をしています。

(当該サイトより引用、筆者が一部中略)

 

田村 和広 算数数学の個別指導塾「アルファ算数教室」主宰
1968年生まれ。1992年東京大学卒。証券会社勤務の後、上場企業広報部長、CFOを経て独立。情報検証研究所メンバー。