2021年4月12日、私は次のようにツイートしました。
東京では緩慢な増加傾向が認められます。直近では早朝の冷え込みが強く、最低気温の前週差は昨年末を超える非常に大きいマイナス値を示しています。体調管理にはくれぐれもご注意ください pic.twitter.com/LkCBGwibt5
— 藤原かずえ (@kazue_fgeewara) April 12, 2021
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日本の第4波の始まりにおいて、顕著な感染増が認められたのは、宮城県と大阪府でした。
この両地域の特徴としては、第三波のピークを作ったと考えられる気温差のボトム(宮城J、大阪h)からさほど時間をおかずに、次の大きなボトム(宮城k、大阪i)が現れ、さらに波状攻撃のように次の大きなボトム(宮城l、大阪j)が現れています。この間に実効再生産数が両地域とも急上昇するに至りました。
ここで、明暗が分かれたのが次のボトムです。宮城の場合ボトム(宮城m)の値が-2度とやや高くなったのに対し、大阪の場合はボトム(大阪k)の値は低いままの状態を維持しました。この結果、宮城は快方に向かいましたが、大阪はさらに実効再生産数を高めてしまいました。ここに大阪は日本最大のコロナ感染地となったのです。その後は次のボトム(宮城n、大阪l)まで両地域ともに気温差が低くならない日々が続いたため、実行再生産数が低下したものと考えられます。
なお、変異株に置き換わった大阪の場合、気温差のボトムに対して実効再生産数のピークが一定日数だけ遅れる状況が認められます。このことは、変異株の感染期間が第3波以前のウイルスよりも長いという特性と整合します。
さて、大阪の顕著な感染者増と比較して実効再生産数のピークは高くなりませんでした。これは1月~4月初めまで、東京の気温は非常に安定しており、気温差が4月中旬に大きなボトム(東京l)を示すまで低くなることがなかったことによるものと考えられます。
東京においても感染しやすい変異株に徐々に置き換わったことで実効再生産が微増した可能性が考えられますが、現状はGWで暫定的にピークアウトしており、第三波のピークを超える顕著な感染状況は認められませんでした。
さて、感染が遅れてやってきた愛知県と広島県では、宮城・大阪と比較すれば第3波ピーク後の波の襲来はやや断続的であり、2月中に気温差のボトム(愛知g、広島g)が極端に低くならなかったことが幸運であったと考えられます。
直近の大きなボトム(愛知j、広島j)を通過した今、感染はピークを越えた可能性があります。両地域とも東京とは異なり、3月中に大きな気温差のボトムを2回経験したことが第3波のピークを大きく超えた要因であると考えられます。
同様に感染が遅れた福岡県は中程度の気温差のボトムが波状攻撃のように認められました。この結果として第三波をやや超える感染となりました。この波状攻撃は第3波のものよりも弱かったため、変異株への置き換えがピークを高めた可能性があります。
以上、気温差の仮説は第4波にも適用することができます。第4波の感染増を説明する仮説としては、変異株やワクチン接種の影響説がありますが、実効再生産数の大局的なピークは気温差のボトムと概ね一致しており、気温差が感染の大きなトリガーとなっている蓋然性が高いと考えられます。
気温差の仮説を用いれば、第1波から第4波までの感染の変動を統一的に説明することができます。もういい加減、政府の分科会も、緊急事態宣言を繰り返す効果不明な対策ではなく、気温差に注意喚起するようなメリハリの効いた科学的対策に切り替える時であると考えます。緊急事態宣言の効果が殆どないことは[過去記事]で定量的に示してきた通りです。
なお、気温差の観点からすれば、春先の大阪府は不運そのものであり、東京都は幸運そのものでした。コロナに対抗する有効な科学的対策を世界中の誰も持っていない中、やみくもに大阪府知事や政府を叩いて留飲を下げているパニック社会は明らかに間違っていると考えます。
編集部より:この記事は「マスメディア報道のメソドロジー」2021年5月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はマスメディア報道のメソドロジーをご覧ください。