2021年開催回避のための「現実的方策」としての“2024年東京パリ共同開催”

コロナ禍による医療の危機的な状況が続き、2か月先に迫った東京五輪の開催に、国民の8割以上が、中止か延期を望んでいるにもかかわらず、日本政府や五輪組織委員会、東京都の「開催強行」の方針は変わらず、国民の間に、強い不安と反発が渦巻いている。

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こうした中、東京五輪開催に否定的な論調のTBS系「サンデーモーニング」に出演した姜尚中氏が、東京五輪を2024年のパリ五輪と一部“共催”にする案を提示した。東京五輪開催を「賭け」と表現し、「それはしてはならない」と否定し、

「場合によっては、パリ大会の時に一部を日本で開催するなんていうことも、フランスとIOC、JOCでやって、そこで初めて日本なりに『克服しました』と世界にアピールすればいい」

と述べた。

私は、昨年6月、都知事選の際に、「2021年東京五輪」の開催を中止し、「2021東京パリ共同開催」とすることを現実的な選択肢として提案していた(【都知事選の最大の争点「東京五輪開催をどうするのか」】)。

その時点で考えた案は、

会場設置に多額の費用がかかる種目を中心に、全種目の3分の2程度を東京或いはその周辺で開催し、パリでは、会場の整備等の費用が低額で済む競技(例えば、暑さが問題とされるマラソン・競歩や、お台場の競技会場が「トイレのような臭さ」で評判が悪いトライアスロンなど)を開催することで、競技種目を分担し、開会式は東京で、閉会式はパリで実施する

というものだった。

7月に、あるルートを通じて、フランス側関係者の意向を確かめてもらったところ、

「フランス側としては、日本が2021年夏東京五輪開催の方針を維持している限り、2024年開催について日本側と話をすることは困難」

とのことだったので、それ以降、様々な観点から、2021年東京五輪開催を強行すべきではない、早期に開催を断念すべき、との意見を述べてきた(【”東京五輪協賛金追加拠出の是非”を、企業コンプライアンスの観点から考える】、【東京五輪開催中止「責任回避」合戦を、スポンサー企業も国民も冷静に見極めるべき】)。

パリ五輪については、フランス政府等は、予定どおり開催の方針を崩していないが、少なくとも昨年9月末の時点では、瀬藤澄彦帝京大学元教授が、コロナ禍でパリ市内の交通網の整備、開催資金の調達等が大きな影響を受けており、決して開催準備が楽観視できる状況ではないと指摘していた(【コロナ危機の影響受ける24年パリ五輪の開催準備】。

フランスとしても、パリ五輪開催には、国の威信がかかっているのであろうし、それに先立つ東京五輪の開催方針が変わらない以上、3年先の五輪開催に消極的な姿勢は見せられないのは当然であろう。

しかし、東京五輪でも、開催経費は当初の予定を大幅に上回り、しかも、開催直前まで開催の是非をめぐる混乱が続いていることで、パリ五輪開催に向けてのスポンサー企業の姿勢には大きな影響が生じているはずだ。フランスにとっても、膨大な費用をかけて当初の予定どおりパリ五輪の開催を進めることに、本当に問題はないのだろうか。

フランスのマクロン大統領は、いち早く、東京五輪開会式への参加を表明しているが、もし、「2024年東京パリ共同開催」ということにできるのであれば、東京五輪開会式を、日本とフランス政府、東京都とパリの代表だけが出席した「東京・パリ聖火共有イベント」に代替することで、日本とフランスの連携・協力をアピールする場にすることも考えられる。

1年前から、この方向に舵を切っていれば、今のような、直前に迫った東京五輪開催に向けての「進退両難」の“断末魔状態”に陥ることはなかった。しかし、時計の針を戻すことはできない。今からでも遅くない。2021年夏開催を中止する現実的な選択肢として考えてみるべきだ。

商業化したオリンピックというイベント自体に対して批判的な意見も多くなっており、東京五輪中止だけでなく、今後、オリンピックには一切関わるべきではないという意見もあろう。しかし、開催に向けてのIOCの強い意向を受け、政府・組織委員会・東京都が、開催に向けて「爆走」する中、「開催強行」から国民の命や健康を守るために、どうしたら、今年7月の開催中止を実現できるのかを考えるしかない。「2024年東京パリ共同開催」は、国民の命を守り、しかも、これまで東京五輪にかけてきた膨大な費用がすべて無駄になってしまわないように2021年東京五輪開催を中止する現実的な選択肢だ。

今からでも遅くない。パリ五輪に関する情報収集を行い、パリ市側との水面下での意見交換を行って「東京パリ共同開催」を模索することが、開催都市の東京都にとって、「東京都民の命を守る」という社会的要請に応える “究極のコンプライアンス”だと言えよう。