スムーズな集団接種を妨げるコロナワクチン予診票の罠

2021年5月24日、自衛隊による新型コロナウイルス(以下コロナ)ワクチンの大規模接種が東京と大阪で始まった。早朝からワクチンを待ちわびた高齢者が集まり、次々と接種を受けて安心した様子だった。

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現在のところ高齢者が主な対象ではあるが、今後も約30カ所の大規模接種会場が順次開設予定されており、コロナワクチン接種のスピードアップや日本全体での集団免疫獲得が期待できる。

とは言え、実際にコロナワクチン接種に参加した経験から言わせてもらうと、このコロナワクチン予診票には、他の予防接種には見られないワナがあるのだ。

スムーズな接種を促す、インフルエンザワクチンの予診票

代表的な予防接種としてインフルエンザワクチンの予診票を提示する。回答欄における「はい/いいえ」選択肢の配置は一見バラバラに見えるが、「ハイリスク選択肢が前」「ローリスクが後」となるように計算されている。

「説明文を読んで理解しましたか→はい(後)」

「今日、具合の悪いところがありますか→いいえ(後)」

と、健康な一般人は後部の選択肢のみ「◯」を記しておけば、問診で時間を取られずスムーズに接種を終えることができるようになっている。医療者側も、一見するだけでハイリスク接種者を発見しやすい。

 

混乱を招きやすい、コロナワクチン接種における予診票

次に、コロナワクチン接種における予診票を示す。選択肢はお役所的に、「はい」が前部、「いいえ」が後部に統一されている。

その結果、

「効果や副反応について理解しましたか→はい(前)」

「今日、体に具合が悪いところがありますか→いいえ(後)」

と、ローリスクな選択肢が分散しているのだ。ただでさえ臨時接種で慣れない受付係が、ハイリスク接種者を見落としやすい。また高齢者が、いつもの予防接種時のクセで何となく縦一直線に「✓」をいれると、ムダに問診のための長い行列に並ばされる可能性が高い。

 

もっとも、自治体によっては下記のようにハイリスク選択肢を灰色で強調した予診票を使用しているケースもある(図は鹿児島県霧島市)。「健康問題が無く、とにかく速く接種を終えたい」接種予定者は、下記図を参考にして灰色欄に「✓」がないような予診票を、あらかじめ作成しておくとよいだろう。

鹿児島県霧島市の予診票