最低法人税率と中国包囲網

G7財務相会合で法人税の最低水準を15%とする方針を固めました。G7の国ではこの15%ルールに抵触するところは何処もなく、この方針の意図することは一部企業の税逃れ対策であります。また、オンラインビジネスが潮流となる中、本来課税できたはずの各種税金を取り損ねている可能性を排除し、企業の公平な税負担を強いるため、デジタル課税についても一定の合意がなされました。たとえば日本の方がオンラインでアメリカから直接商品を購入したとしたら今までは消費税を含め、税金を課すのが難しかったのですが、今後はそれを可能にするようです。

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この動きは健全だと考えています。大企業が合法的に「節税」という名の合法的税逃れをしているのは当たり前の行為です。それら企業は会計士や弁護士、専門のコンサルタントに多額の費用を払い、各国の税の抜け穴を見つけ出し、課税額を最小限にするテクニックで税務当局を翻弄してきました。特にオンラインビジネスの急速な発展に対して税務当局の対応がまったく遅れてしまったことが大きな敗因だったと思います。

しかし、これは不公平な仕組みです。ごく一部の大企業のみがその巨額の売り上げや利益をベースに破格の報酬で専門家を雇うことで可能になるというのは本来公平であるべき税負担が歪められてきたともいえるのです。節税対策は誰にでも平等に与えられる権利であり、選択の自由であるべきものなのに特定の企業のみがそれを享受しているのはおかしな話です。

また特にやり玉に挙がっている法人税率12.5%のアイルランドや9%のハンガリーなどは特定目的のために歪んだ税率を適用します。もしもアイルランドやハンガリーが純粋に国内企業にだけ適用するならそれは自国内の問題かもしれませんが、多国籍企業の節税を取り込むためのいびつな税制度は許されるものではないでしょう。

アイルランドは12.5%を維持すると反発していますが、たぶん、無力化されるはずです。仮に15%以下の税率適用を受けるなら多国籍企業の本来所属しているビジネス拠点国が差額税負担を強いるだけです。ルールを逸脱するものに当然のペナルティであり、アイルランドといった税回避目的の進出のメリットが薄まる見ています。

さて、これと中国包囲網がどう関係するのでしょうか?私がふと思ったのは中国の野心的な欧州やアフリカ諸国などへの投資が花咲かなくなるようにする施策の一つがこの最低法人税率の適用を含めた国際ルールの制定ではないかとみているのです。つまり、西側諸国が足並みを揃えてベクトルを同じにするという考え方です。

中国の一路一帯政策はカネと中国人労働者、更に相手の返済能力を超えた貸し付けをしてそれが返せないならそれを奪い取るという悪徳消費者金融のようなものであります。アフリカ各国からは中国人労働者が支配し、地元の経済貢献や技術移転につながっていないと不満が出ています。ギリシャやスリランカなどでは中国に施設を取られてしまっています。中国の経済力、成長力、そして甘い言葉に世界中が誘惑され、甘い汁だと思い、吸っていたらそこには劇薬が混じっていたことにようやく気が付き始めています。

その間、西側諸国は民主的議論という時間がかかるプロセスを取りながらもあるべき姿がようやく見えてきたように感じます。G7は機能していると改めて思ったところです。私が次に見込むG7による国際ルールの制定は暗号通貨だとみています。これは既に国際会議等で議論になっていますが、最終的にはサミットで法制度まで踏み込んだルール作りができるとみています。いま、暗号通貨は無法地帯と言ってもよく、その数、数千種類に及ぶとされます。ここで早く統制を取ることで西側経済ルールをディファクトスタンダードにすべきでしょう。

中国経済は共産主義と資本主義のいいところ取りをしているように見えますが、経済の成長と共に機能しなくなるのは分かっています。5か年の計画経済は国家がまだ十分な成長段階にない場合には機能しますが、一定水準を超えると成長を支配できないことが分かっています。ところが中国は国営企業と民間企業を仕分け、国営は潰れないと信じ込ませてきましたが、既にほころびは大きく、現在の政策が出口なきところに暴走し続けています。

中国はこれから先、もがくとみています。その間に西側諸国が企業と一体となって2030年代の世界経済を再構築するような仕組みを作り共存共栄できる社会を作ることが望まれます。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年6月8日の記事より転載させていただきました。