G7にみる世界潮流

英国で開催されたG7はこの数年間のもやもやを吹き飛ばす明白な位置づけを取り戻しました。これは表立って指摘されていませんが、コロナというブランクを経て西側諸国の足並みがそろい、相互理解が深まり、新たなる指導力を発揮するであろうことを私は強く感じました。

G7サミット NHKより

コロナで開催されなかった、あるいはトランプ前大統領に翻弄された、という表層的な見方はいくらでもできます。しかし、最大のポイントは共通項ができた、これに尽きるのです。どんな国家でも政権でも人間でも目標ができれば明白な位置づけと方向性の設定はたやすいものです。2018年ぐらいまで中国の躍進は見えていましたが、むしろ、その潜在的能力に英国もオーストラリアもドイツも魅力すら感じ、より中国に接近しようとすらしていました。

ところが中国はいつの間にか、牙をむきます。単なる優等生的な成長を遂げる国家ではなく、唯我独尊の中華思想を全面的に取り込んだ習近平帝国建立を打ち出し、西側諸国から取り込んだ先端技術を自らのものにし、西側の恩師をライバルや敵とし、国家のチカラをマネーと中華思想と人民を駆使しながら、強力に世界覇権を狙いました。これは私から見れば「中国第二次文化大革命」そのものであります。

その間、トランプ氏という10年後の評価は大きく変わるであろうアメリカ社会を二分し世界の指導者たちを翻弄したリーダーが4年間、独自の理論を国家という枠組みを超えてほぼ個人の発信力や行動力を通じて社会に疑問を投げかけました。当然ながら議論が巻き起こります。しかし、議論は時間や環境の変化と共にある方向に収れんしやすい傾向があるのも事実です。

実際、バイデン氏が大統領の職務を引き継いだ際、トランプ氏以上に中国を意識するとは正直、誰も思っていなかったはずです。氏がオバマ政権の際の副大統領だった際、どれだけ中国と親密な関係を結んだかそれは知らぬ者がいなかったのです。ですが、バイデン氏もトランプ氏が開けたパンドラの箱を覗き、認識を改めたとも言えます。

今回のG7における中国包囲網の一つが途上国へのインフラ整備であります。日経によると中国の20年の一路一帯関係国への対外投資は177億㌦に対して今回、西側諸国で計画する途上国向けインフラ整備投資は「今後数年間で数千億㌦」と報じています。これ、10倍以上だということです。中国はこれでは勝てません。仮に中国同盟国を誘い込んでもまず無理です。

中国式の途上国への影響力行使の仕方とはカネの力が全てでした。その頃、日本やアメリカはアジア開発銀行主導の資金支援をしていましたが、機能的にも資金的にも機動性にも欠けていました。その間隙を突かれたと言えます。それは逆に言えば当時、世界のリーダーたちは中国を甘く見ていたことと中国の歴史的成り立ちを理解していなかった判断ミスであったと私は思っています。

ところで中国問題だけではなく、世界では様々な事件や問題が起きています。一つ、私が気になるのは最近、アメリカとメキシコの国境に集結する中米からの難民志願者のラッシュです。担当であるカマラハリス副大統領はその阻止に行動を移しグアテマラまで行き、「来ないで」と訴えましたが、全く効果はなく、その危機度は日増しに高まっています。日本ではあまり報じられていないと思います。

テキサス州知事は独自でメキシコとの壁建設に取り組むと報じらています。結局、これもトランプ氏が訴えていた対策の一つです。とすればバイデン政権はトランプ氏との対立軸をもって政権奪回をしましたが、向かうところは結局同じなのかもしれません。

我々は議論をする時間で遠回りをしたかもしれません。しかし、その時間は有益であり、かつ、西側諸国が一体感を持つことができるのかもしれません。これは意義あることです。

私はポストコロナの世界潮流は今までにないBoldな社会を生み出していくと期待しています。20年代は我々にきっと微笑みをもたらすでしょう。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年6月14日の記事より転載させていただきました。