バイデン大統領は主要7カ国首脳会議のデビュー戦で、用意周到にお土産を持参しておりました。
6月12日がホワイトハウスが公表したように、「より良い世界の再建を(Build Back Better World=B3W)」と題した対中を念頭に入れたインフラ投資計画を提案、見事合意に至ったのです。
中国の一帯一路に対抗するもので、「共有の価値の下、高い基準と透明性をもった主要な民主主義国家による」中低所得国向けのインフラ投資計画となります。B3Wを通じ、G7と同様の価値観を共有する友好国は、①気候変動、②健康と医療保障、③デジタル技術、④ジェンダー間の平等――の4分野を軸に、民間資本と協力し投資を展開する方針。対象地域は中南米・南米からカリブ海諸国、アフリカ、インド太平洋などほぼ世界全体となる予定です。
B3Wをめぐり合意できた半面、G20議長国を務めるドラギ首相はバイデン大統領に対し、気候変動を始めとした分野で協力が必要であるとの理由から、対中圧力を極度に高めないよう進言したとも言われています。他欧州各国もバイデン氏ほど積極的とは言えず、メルケル独首相は財源や規模の明確化を避け、マクロン仏大統領も外貨準備や国際通貨基金(IMF)の特別引出権(SDR)の引き出しなど、国家予算からの割り当てに消極的姿勢だったもよう。コロナ禍において、各国予算に余裕がない事情もあるのでしょう。
それでも、ホワイトハウスが公表した声明ではB3Wでの投資額は今後数年で数千億ドル規模となる見通しと明記しておりました。尖閣諸島の問題を抱える日本への貢献が求められることは、想像に難くありません。
追記:当初の報道通り、G7首脳宣言で「台湾海峡」が初めて明記されました。
「我々は台湾海峡の平和と安全の重要性を明確化し、両岸の問題を平和的に解決することを進めていく(We underscore the importance of peace and stability across the Taiwan Strait, and encourage the peaceful resolution of cross-Strait issues)」。覇権主義を進める中国に事実上、G7各国が共同戦線を張ったことになります。
また中国が海洋進出を進める東・南シナ海についても「現状維持を変えようとする一方的な試みや、緊張を高める行為に強く反対する」との姿勢を表明。香港やウイグルをめぐる問題にも言及し「人権と基本的な自由」を尊重するよう求めました。
問題は、どこまで各国が一枚岩となれるか。日本が今後、経済的な貢献以外で重要な旗振り役として存在感を発揮できるかについても、見守っていきたいところです。
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2021年6月14日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。