非効率な資本構成の弊害

上場企業には適正な資本利潤を株主に還元する義務があるから、資本利潤は資本コストである。資本コストは負債コストよりも高い。そうでなければ、金融の秩序が保てない。故に、適切で効率的な負債の利用は、企業全体の資金調達コストを低下させるから、上場企業の重要な経営課題になる。

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さて、資本コストよりも負債コストが低いにしても、負債コストは事前約定により確定しているのに対して、資本コストは経営者が最善の努力を尽くすべき義務として長期的に決まるものだから、短期的な変動は許容される。つまり、資本は経営リスク、即ち短期的な業績悪化を吸収できる。

そこで、経営リスクに対する耐性を条件にして、資金調達コストの最小化を求めると、資本と負債の比率について最適解が得られる。それが最適資本構成である。外部金融機能を効率的に利用するとは、最適資本構成を維持することであって、費用の表面的な最小化だけでなく、リスクとの関係における最適化を志向することを意味する。

他方で、上場は企業の成長を前提としているから、その成長戦略との関係においても、資金調達構造の最適性が決まる。従って、外部金融機能の利用は、成長戦略、資金調達コスト、経営リスクの三つの要素に関して、最適化される必要がある。

逆に、金融の側からいえば、上場企業に対しては、成長戦略、資金調達コスト、経営リスクの三つの要素に関して最適化された提案をすべきである。しかし、現実には、銀行は融資の提案、証券会社は株式や社債の引き受けの提案というように、金融機関の自己都合による商品営業がなされている。

また、企業の側でも、極めて残念なことに、最適資本構成等の理論的理解に乏しいところが多く、金融機関の営業に対して受動的な対応になりやすいため、結果として、多くの上場企業において、外部金融機能の利用は最適とはいい難い状況にあり、その結果、無駄な金融機能の利用が横行し、株主の真の利益を損なっているわけだ。

森本 紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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