新型コロナワクチン接種予約:わが苦闘記

横浜在住の筆者に「新型コロナワクチン接種券」が届いたのは5月の初め頃だったか。何か信念があった訳ではないが、打ちたい人から順に予約すれば良い、との漠然とした思いから、しばらく放っておいた。そういう事情だから正確な到来日は記憶にない。

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インフルエンザ予防接種すら経験がない筆者だが、年も年だし新型コロナワクチンの副反応への恐れなど特にない。アストラゼネカの稀な血栓など付き物だろうし、mRNAワクチンで言われる将来懸念にしても、世界中で数十億人もが打つとなれば、「長い物には巻かれよ」とも思う。

まして、「痛くて腕が上がらない」などという話は、肩にかなり深く挿入されるらしい注射針のせいであって、薬液が何であろうとそうなるのではないか、などと考えているから、ワクチン接種へのためらいがある訳ではなかった。

ところが、ITに強くない家内が何かにつけて頼りにしている娘から、「お父さん、ワクチンどうする? お母さんは区センターで予約取れたよ。打つなら手伝うけど・・。泊まりに行くのを控えてたから、打ってくれるとありがたい」と、6月初めにラインが来た。

さすが親子、父はきっと打つまい、と看破されていた。「打つかどうかは自ら決める」と疑いもなく考えていた筆者は、「なるほど、そんな風に考えるか」と少々心を揺さぶられた。ファウチが「マスクは他者のため」といったらしいが、「ワクチン接種は他者のため」でもあるかと。

そこで、やおら神奈川県のサイトに入り予約を試みた。が、これが良く判らない。何とか接種場所を選ぶ画面に辿り着き、住所を入れて場所を選択し、日付を選ぶための予約カレンダーを開くと、カレンダーの上部に「〇余裕あり、△空きあり、X空きなし」とある。

が、6月と7月の予約カレンダーには、月~木のすべてにX印があるだけで、〇と△の印はない。で、金曜をクリックすると「予約できない日付です」と表示が出るだけで、「こうせよ」とは書いてない。娘の話では、朝9時にはすでに満杯、偶々キャンセルが出て家内の分を予約できたという。

日頃、PCに齧りつき内外の報道などをネットで読んでいる我が身にしてこの有様。自分が悪いのかサイトの仕様の問題かは判らぬが、仕方ないと諦めていると、娘から我が家の近所で接種できる病院のサイト情報3件が送信されてきた。

翌日訪ねたそのひとつは徒歩数分の眼科医院。なるほどサイトにある通り、入り口の横に名簿が置いてある。が、老眼鏡を取り出して見ると、氏名・年齢の他に診察券番号の記入欄があるではないか。

■眼科医院でのやり取り

―受付で―

筆者:ワクチンの接種したいんですが。診察券はないんですけど。

受付:診察券がないとできませんよ。一応、掛かり付け医としての接種なんで。

-誰にでも接種すると思い込んでいた筆者は、そこでハタと気が付き-

筆者:そうですよね、診察もせずに掛かり付け医はおかしいですね。じゃ診察します。すぐ受けられますか?

受付:もちろん受けられます。目の具合はいかかですか?

筆者:老眼なだけでまったく問題ないです。でも診察券は欲しいです。

受付:では診察しましょう。保険証お持ちですか。

筆者:持ってます。

受付:問診表を書いてください。

-問診表の「症状」に「長時間文字を追うと目が霞む」などと記入した後、検査に移り、先ずは視力などの検査ー

医者A:左右の視力に差があるので、老眼鏡とは別に普段用の眼鏡を掛けると見え易くなりますよ。

筆者:読書やPC作業の外は裸眼で問題ないです。眼鏡は結構です。

-別の薄暗い部屋に移っての別検査で―

医者B:眼圧に異常はないですが、あなたの目の形は緑内障の発作の可能性がありますよ。白内障の兆候もあります。緑内障用の点眼液出しておきます。

筆者:緑内障といったら「アオソコヒ」、失明するんでしょ、ほんとですか?何か症状が出てるんですか?

医者B:そうではないですが、目の形がそういう形なので。

筆者:目の形って生まれつきで、後天的なものではないですよね。

医者B:そうです。形自体が緑内障の発作を起し易いんです。

筆者:発作って何ですか?

医者B:眼圧が高くなって、神経がやられてしまうんです。最悪、失明します。

筆者:それは怖いですが、形の話だけで症状がないなら点眼液は結構です。

医者B:そうですか、それならやめましょう。白内障の気もありますよ。

筆者:白内障って、年を取れば大概なるんでしょう?

医者B:はい。白内障手術は緑内障の予防にもなります。白内障用の点眼液を出します。

医者:点眼液ってずっと続けるんでしょう? それで良くなるんですか?

医者B:良くなるというより、進行を抑えるということです。

筆者:そうですか。霞んでどうしようもなくなれば、いずれ手術するつもりなので、今日は点眼液は要りません。

医者B:ではやめましょう。

結局、初診料など2,800円也で収まった。が、従順なお年寄りなら「乱視用眼鏡」と「点眼液(緑内障用と白内障用」が処方され、点眼液はその後ずっと継続することになったと思う。それでクオリティー・オブ・ライフが劇的に改善するなら安いものだが、筆者にはまだ何の不自由もない。

帰り掛けにも、受付で以下のやり取りがあった。

筆者:接種の日取りは電話連絡が来るのですか?

受付:いいえ、そこに張り出します。

筆者:いつ張り出すのですか?

受付:6月分の予約は終わりました。7月分になるのでその前です。

筆者:いつ張り出すか教えてもらわないと、毎日見に来なきゃならないでしょう。

受付:7月分なので6月28~30日になると思います。

6月30日なら30日に決めれば良いと思うのだが、何か事情があるのだろうか。県の予約システムといい、この眼科医院の対応といい、使う側、受ける側の身になっているとは思えない。が、接種ができて夏休みに孫らとも会えそうなら、まあよしとしようか。

自衛隊の運営する大規模接種センターは、「誤入力」でも予約が取れるからか、はたまた痒い所に手が届く懇切丁寧な対応からか、すこぶる評判がいいようだ。が、大手町まで筆者には少々遠い。その点、徒歩圏内はありがたい。

いずれすることになる白内障手術の日のためにも、眼科医院の不手際には「眼」をつぶろう。