立憲民主、共産、国民民主、社民の野党は菅内閣への不信任決議案を提出し、否決された。緊急事態宣言が出ている時に、おいおい何やっているのだ?というのが国民の思いだろう。とはいえ、野党も不信任決議を出すことで、自党の支持者にアピールする必要がある。出さないことは菅政権を信任すると認めてしまうことなので、政治的には仕方のないことだろう。首相が解散を選択する可能性があるかもしれないのに、その可能性に賭けるのは当然の行動だし、若干パフォーマンスの面もあるが、会期延長を求めるうえで、ある意味、重要な行為でもある。
多くの人が「セレモニー」「三文芝居」「意味あるの?」「伝家の宝刀を軽々しく抜くな」などと批判をするのは、少し言い過ぎではある。結果的に、二階幹事長の政治力に疑義を生み出したという面でも政治的な駆け引き的には意味があった。
しかし、個人的には、内閣不信任より前に、政治家さんたち自身に不信任案を出してくださいと思う。なぜなら、与党も野党もこの1年コロナ対策何をやっていたのか?ということこそ反省してもらいたいからだ。
1年間コロナ対策で何やっていたのか?成果不明
結局、今回の緊急事態宣言も「医療緊急事態宣言」に過ぎない。それなりに感染力が強いものの、数字を見てみればわかる。
- 死者数:14,187人、国民の0.001%(1000人に1人)
- 死亡率(年齢階級別にみた死亡者数の陽性者数に対する割合):1.8%
たしかに、80代以上に限ると
- 死者数:7,302人
- 死亡率(年齢階級別にみた死亡者数の陽性者数に対する割合):13.1%
という数値になるのだ。
欧米と圧倒的に比較して、陽性者数が少ないのに、なぜここまで過剰とも言うほど経済活動を制限したのだろうかという疑問を持っているのは、飲食業者だけではないはずだ。理由は医療体制が脆弱だからだ。それなら医療体制をあらゆる面で整備すればいいだけのはずだ。
しかし、政治は機動的に対応したとは言い難い。
- 病床不足解消のために医療体制整備をできない
- 中国のようにコロナ専門病院を作れない
- 都道府県をまたいだ患者の移送などが当初できてなかった
- 行政が病床確保のお願いをするが、協力が確保できたとは限らない
- 1年も余裕があったのに対応できない
という状況。何の権限があるのかわからないが、国民に偉そうに説教する日本医師会の会長が政治家の政治資金パーティーに参加したりする始末。政治家さんは何をやっていたのだろう?と思うのだ。2億円ももらっているスポンサーには歯向かえないのだろうか。
医療逼迫の根本的問題が明らかになったのが遅すぎる
東京大学大学院法学政治学研究科教授・内科医の米村滋人教授が、筆者もかかわるメディアにて凄いことを言っていた。
【米村教授の発言趣旨】
- 日本の医療逼迫の最大の原因は、日本の医療体制とそれを巡る法制度に問題がある
- 現在の医療法では都道府県は医療機関に対して病床の転換やICU(集中治療室)の設置、感染症患者の受け入れなどをお願いすることしかできない
- 日本は欧米と比べると公立の医療機関よりも民間の医療機関が圧倒的に多いため、コロナ患者を受け入れることで従来の患者を失い、結果的に経営が圧迫される可能性がある民間の医療機関は、政府からお願いをされてもコロナ患者を受け入れようとはしない
- 結果的に今日本では、強制はされなくても患者の受け入れを決めた一握りの医療機関にコロナ感染者が集中し、そこだけで「医療の逼迫」や「医療崩壊の危機」が起きている
【出典】米村教授ご発言:ビデオニュース・ドットコム、マル激トークオンディマンド「日本のコロナ対策論議に根本的に欠けているもの」
不勉強かもしれないが、筆者がこのことを知るのが2020年11月。新型コロナウィルスが蔓延してから、その時まで、野党の政治家からも、米村教授のような主張、発信、提案は聞いたことがなかった。
また、私の提案
- 国立病院をコロナ病院に
- 新国立競技場や五輪施設に高齢者を隔離する
- 民間病院の受入拡大、東京都医師会への協力要請
などのアイデアを政治家からはほぼ聞いていない。もちろんこちらの提案も聞き入れて、受け入れられなかった(政治家の方々、反論ください)。
最後に政治家の方へ
ただし、政治家の中には陰で頑張ってきた人がいることも知っている。維新の青山議員は上記のような数値結果をブログなどで発信していたし、立憲民主党の中島議員を中心に「日本版家庭医制度法案」を議員立法で提案した。菅首相も今回の自衛隊のワクチン大量センター開設を秘密裏に進めていて現在、一定の成果を出している。菅首相は安倍元首相がコロナ対策を中途半端にほっぽりだした中、敗戦処理に頑張っていると言ってもよいかもしれない。しかし、それ以外の方々はどうなのだろうか。
欧米とは死者数も感染者数もけた違いに違うのに、医療崩壊を防ぐ政策提案すらだせなかったこと、それはなぜだったのかを問い直すことが大事ではないか。政治家の資質の問題なのか。政策立案能力の問題なのか。
ただ政治家を批判したいわけではない、政治家さんたちの現状のレベルが、筆者レベルの政策提言すら国民の前に提示できなかったのだから、問題解決が必要だということだ。非常に厳しい言い方だが、政治家さんたちは世界第三位の厚待遇なのである。未来志向で真摯に向き合ってほしい。