企業に非効率な資産保有を許す金融の欠陥

上場企業は、必要な資産だけを保有し、それに対応して、最適資本構成、即ち資本と負債の関係についての最適な比率を維持しなければならない。それが株主に対する責任である。しかし、実際には、無駄な資産保有と非効率な資本構成が横行している。

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例えば、不要不急の資産を保有したままで外部資金調達を行うようなことが常態化している。何が不要不急の資産であるかは、経営者の主観的判断によって決められるほかないとしても、本業との関連が薄い子会社株式、政策保有の株式、使途の明確でない多額の現金、事業目的に関係の希薄な不動産等については、不要不急といわれても仕方ない。

経営者として、資産保有の正当性を主張したいのならば、説得力のある論拠を提示する義務を負うわけだから、その説明義務を果たし得ないときは、原理的に、不要不急の資産の売却が促され、その分、外部金融機能の利用は削減され、経営は効率化されるはずである。

逆に、金融機関としても、上場企業に対して、最適な資産保有と最適な資産構成を提案し、顧客の経営効率化を求めるべきである。しかし、現実には、銀行は融資の提案、証券会社は株式や社債の引き受けの提案というように、金融機関の自己都合による商品営業がなされている。

現状、事態の是正が進まないのは、日本の産業と金融の構造に問題があるからであって、そこに、金融庁が進める改革の主眼がある。即ち、上場企業に対しては、コーポレートガバナンスの改革を求め、金融機関に対しては、自己都合の商品営業からの脱却と、真の顧客の利益の視点にたった総合的な提案力の強化を求めるに至ったということである。

森本 紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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