伝統金融の縮小こそ金融の活路だ

適正な経営において、企業は事業遂行に必要不可欠な資産だけを保有すべきである。その必要不可欠な資産すら、保有せずに借りることが合理的なら、売却して借り直すべきである。アセットライトと呼ばれる経営戦略だが、例えば、航空会社を経営するのに飛行機を保有する必要などなく、実際、LCCの多くは飛行機を所有しないでリースを利用しているのである。

飛行機に限らず、シェアリング経済の進展は、様々な機材や施設について、利用効率を高めていくわけだが、それは、同時に、社会全体で保有する総量の削減につながり、その生産量の減少につながり、更に製造設備の減少につながることで、社会全体として、資産総量は縮小し、その保有に要する資金需要を減退させるであろう。

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テクノロジーの進化により、決済機能は劇的に高度化し、その必然的な帰結として、産業界全体の経常運転資金に対する資金需要は大幅に減退するであろう。

金融は縮小する。しかし、金融の真の社会的機能は、社会の効率性の上昇に貢献すること、即ち、社会の進化に寄与することだから、むしろ、金融は自らの縮小を目指すべきである。これは、医療の真の目的が病気をなくすことなら、治療としての医療は縮小すべきなのと同じである。

しかし、治療としての医療が縮小しても、予防としての医療が拡大するように、伝統的な金融において、資産保有や運転資金に対する資金需要が縮小しても、新しい金融においては、リース事業とフィンテク事業は伸びる。

もはや、金融の成長は、量の拡大にはなく、逆に、量の縮小における質的な構造転換にしかないのである。

森本 紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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