1.金融処分庁からの脱皮
2013年に放送された半沢直樹と言う視聴率40%越えのテレビドラマ。多くの方がこのドラマで金融庁検査というものを初めて目の当たりにしたが、実は金融庁にとって、とんでもないメッセージが含まれていた。
このドラマには伊勢島ホテルを不良債権とみなすと脅す金融庁に、半沢が伊勢島ホテルをフォスター(外資)の傘下に入れることによって不良債権化を免れるというサクセス・ストーリーが含まれているが(出展:Wikipedia)、これが、金融庁にとって致命傷となった。
メガバンクを絞り上げて、自国の企業を外資に叩き売る原因を作った金融庁検査を見た政治家から、いつしか金融庁は「金融処分庁」と揶揄されることになり、2017年には「金融処分庁から育生庁」にと報道される有識者会議報告書を出すまでに至った。
処分庁から育成庁へ、金融行政を刷新 有識者会議が報告書: 日本経済新聞 (nikkei.com)
2.最強の3省庁
最近、石川和男氏(元経済産業省官僚)が、バラエティ番組で、省庁ランキングを、尋ねられて出した回答は「1位・警察庁、2位・国税庁、3位・金融庁」であったが、いずれも、“個人や法人をお縄にできる”、機関である。
“お縄にできる”という力は、国家に特別に認められた暴力装置であり、「自由主義では、公権力、特に暴力装置の使用は抑制的である必要がある」(Wikipedia)というのが、一般的な解釈である。
今回、西村大臣は、この中の国税庁と金融庁の、使用は抑制的であるべき、“暴力装置”を使用して、国民を抑止しようとして、国税庁は実行に移されてしまったが、金融庁は通達発出間際で中止されたと伝えられている。
3.金融庁はギリギリセーフ
国税庁は内閣官房と連名で「酒類の提供停止を伴う休業要請等に応じない飲食店との酒類の取引停止について(依頼)」という文章を業界団体に出したが、金融庁は今回、通達は用意していたようだが、ぎりぎり発出を免れた。
それ以降の、世論の反発を見て、金融庁は生きた心地がしなかったであろうが、幸いにも「ギリギリセーフ」となった。
「要請応じない店と酒の取引停止」政府が文書で通達 (msn.com)
4.悪代官にならないように気を付けて
大人気大河「青天を衝け」では、農民時代の渋沢栄一が何度も地元の悪代官に苦しめられた上に、中央の武士になってもさえ、地方の悪代官に意地悪をされるという姿が描かれている。
日本では、江戸時代に300年間培われた士農工商制度で出来た、行政が民間より上の風土は今でも健在であり、省庁の事務方は民の事を考えるより、ロジ周り(全ての政策の、序列順での根回しを含む、おぜん立て)が仕事の大半を占めるという世界である。
しっかりしたロジ周りが出来れば、少々の理論破綻や、倫理に反していてもさえ、覆い隠されてしまう世界であり、ましてや、大臣周りのロジともなれば、神にお仕えするようなものである。
今更、それをどうにかしろと言っても、詮無きことであることは重々承知しているが、官僚の方には、時折、悪代官にだけはなりたくないという気持ちを忘れず、時には諫言する勇気も出して、引き続き “国のために” お仕事を頑張って頂きたいものである。
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