立憲・共産の「消費税5%減税」は選挙目当てか

立憲・共産の選挙公約「消費税5%減税」

立憲民主党や日本共産党は、今秋にも予想される衆議院解散総選挙に向けて、野党共通政策として、現行の消費税率10%から5%への時限的減税を「選挙公約」とする方針のようである。その理由として、長引くコロナ禍での消費の落ち込みを挙げている。確かに、5月11日総務省発表の家計調査によれば、2020年度の消費支出は前年度比4.9%減少した。これは新型コロナウイルス感染症流行の影響による外食、観光、交通、衣服などの消費の落ち込みが原因である。

消費税減税で消費は回復するか

しかし、消費の落ち込みが外食や観光などの需要低迷にあるとすれば、仮に消費税を5%に減税しても、その効果は微々たるものであり、消費全体の回復は望めないであろう。なぜなら、需要低迷の最大の原因が新型コロナウイルス感染症の流行である以上は、これが収束しなければ、たとえ消費税を5%に減税しても、外出自粛やテレワーク、巣ごもり等により、外食や観光などの需要低迷は解消しないからである。その意味で、消費税の減税をしなくても、ワクチン接種の普及などのコロナ対策の徹底により、新型コロナウイルス感染症流行が収束すれば、外食や観光などへの需要は反動で爆発的に増大するであろう。

代替財源確保の不安

そのうえ、立憲民主党や日本共産党は、「消費税5%減税」を主張するが、その代替財源の確保につき明確ではなく大きな不安がある。2020年度の税収は60兆8216億円であり、そのうちの消費税は20兆9714億円である(財務省7月5日発表)。したがって、消費税を5%に減税すれば、約10兆円の代替財源がたちまち必要になる。

消費税減税分5%に代わる約10兆円の代替財源としては、富裕層への所得税や大企業への法人税の増税が考えられるが、日本の税率は欧米先進諸国に比べて特段低いとは言えない。したがって、これらへの増税はコロナ禍での一層の景気停滞をもたらす危険性がある。そのうえ、大企業への増税は日本の国際競争力の低下をもたらしかねない。これら以外には、代替財源として時限的な赤字国債発行も考えられるが、財政健全化に逆行する。いずれにしても、立憲民主党や共産党が消費税減税を主張する以上は消費税減税分5%に相当する代替財源約10兆円の確保について具体的且つ確実な財源を示さなければ単なる選挙目当ての無責任な政策との批判を免れない。とりわけ、立憲民主党は旧民主党時代に一度政権を担当、消費税増税を主張し三党合意をした過去があるだけになおさらのことである。

消費税減税後、元の税率に戻すことは極めて困難

立憲民主党は、「消費税5%減税」はコロナ禍における消費落ち込みに対応する時限的政策であり、コロナ禍が収まれば元の税率に戻す方針のようである。この点は「消費税反対」の共産党とは異なる。しかし、一旦「消費税5%減税」を行なって、再び元の10%の税率に戻すことは長い年月を要し実現は極めて困難である。なぜなら、元の税率に戻すことで選挙が不利になり政権を失う恐れがあるだけでなく、元の税率に戻せば増税になり消費が落ち込み景気の停滞をもたらす危険性があるからである。したがって、具体的且つ確実な代替財源がなければ、元の税率に戻すまでの長期間にわたって、社会保障財源が不足しその確保が困難になるであろう。

選挙目当ての消費税減税は無責任

社会保障制度が充実しているスウエーデン、ノルウエイ、フィンランドなどの北欧福祉国家は消費税(付加価値税)の税率は25%程度であり、欧米先進諸国はいずれも消費税(付加価値税)の税率はおおむね日本より高く、社会保障の重要財源としている。その理由は、消費税は所得税や法人税のように景気変動に左右されない安定的な財源だからである。日本も同じである。とりわけ少子高齢化が急速に進む日本では今後も社会保障関係費の増大は不可避であるから、消費税の重要性はますます高まる。したがって、立憲民主党や日本共産党が、具体的且つ確実な代替財源を示せなければ、「消費税5%減税」は単なる選挙目当ての政策に過ぎず、社会保障財源の不足や不安定化により社会保障制度の崩壊をもたらしかねず、極めて無責任であると言えよう。