平時に強い日本人は、なぜ有事になると迷走するのか?

アメリカのメジャーリーグ、イギリスのウィンブルドン、欧州のサッカーなどの映像を見ていると、観客席は人に溢れ、ほとんど誰もマスクをしていません。なぜ東京オリンピックは無観客でやる必要があるのか?、なぜ日本では未だにほとんどの人がマスクをしているのか?、私のように国内外の大きな違いに釈然としない人が多いと思います。

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その背景には、この1年の新型コロナウイルス感染拡大への対応から見えてきた日本の問題があると感じています。

1.過剰なリスク回避
新型コロナウイルス陽性者数をゼロにするといった、過剰なリスク回避を声高に叫んでるいる政治家がいるのに驚きます。リスク回避は必要ですが、そのために必要なコストとの比較から判断するのが、正常なプロセスです。感染者を減らすための施策によって、雇用が減少し、精神的に追い詰められてうつ病になってしまったり、最悪自ら命を絶ってしまう人も増えています。

過剰なリスク回避によって、別のもっと大きなリスクが生まれていることをバランス良く考えるべきです。

2.同調圧力からの横並び意識
「みんなはどうしている」「他社はどうしている」といった周囲の動きを気にしすぎて、お互いに干渉し合うのも悪い傾向です。

未だに屋外を1人で歩いている人のほとんどが、30度を超える蒸し暑い日中もマスクをして歩いています。これは、マスクをしなければいけないという同調圧力によるものに見えてしまいます。

3.朝令暮改を恐れる
一度決めたことを撤回すると、世論から大きな批判を浴びます。しかし、今まで経験したことのない新しいウイルスからの脅威ですから、やってみて間違えたら躊躇なく修正してく姿勢が重要なのではないでしょうか。

世論の批判を恐れる余り、間違えたことに気が付いても、そこから軌道修正に時間がかかってしまい、結局傷口を広げてしまうことが多いように見えます。

4.形式整備の建前主義
飲食店に感染防止のステッカーを配る。監視員が飲食店を巡回してチェックをする。やらないよりはやった方が良いのかもしれませんが、どちらかと言うとアリバイ作りのための形式整備に見えてしまいます。

本質的にはあまり意味が無いとわかっていても「やってますアピール」のために、非効率な対策をするのは時間もお金も勿体ないと思います。もっと本質的な感染予防策を科学的根拠に基づいてやって欲しいものです。

日本人には、勤勉で、礼儀正しく、きれい好きで、秩序を重んじる賢明な人が多いというのが、一般的な認識だと思います。それは平時には大きなアドバンテージとなるのに、今回のような有事になると集団として迷走をはじめ、愚かな結果にしか導けない。

何とも残念なことです。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2021年7月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。