内閣府大臣補佐官を拝命し、河野大臣のもと、ワクチン接種促進に従事して半年経ちました。自治体、医療関係者、職域接種を実施している民間企業など、ワクチン接種に従事している方々には、長期にわたるご尽力に感謝申し上げます。
現状、自治体では120万回/日を超えるペースで接種が進み、全国で累計7000万回を超えました。また、職域接種については、申し込みをいただいた約5000社のうち約2000社がスタートしており、20万回/日のペースで進んでいます。
ワクチン接種開始当初はワクチンの調達と接種体制拡充が困難でしたが、医療機関におけるワクチン接種の単価の引き上げ等の追加策の効果もあり、ゴールデンウイーク明けからは接種スピードが加速し、目標の100万回/日に達したものの、その後も想定以上に加速し、今月に入って自治体の求めるワクチンの数と、国からの供給のバランスが崩れてしまいました。先行きが見通せないことから、一部自治体では、予約受付停止等の混乱が起きています。
早い時期からファイザーの供給については、6月末までに1億回、7月〜9月は7千万回、というアナウンスはしていたのですが、自治体ごとにどの程度になるかをお伝えできていなかったことが悔やまれます。
なお、モデルナが9月末までに5000万回分供給されますので、計2億2000万回(1億1000万人の二回接種分)と、接種を希望される方全員が打てるワクチンが10月初旬には全国に供給される予定です。
この状況に対しては、先週、8月・9月に供給できるワクチンの数を自治体に提示して、接種予定を立てられるようにすることで、新規予約が再開されてきています。
また、ワクチンの供給とさらに都道府県に各市区町村の住所地外接種による影響等、詳細のデータを共有し、都道府県が市区町村間の在庫や接種計画の調整ができるようにしました。
新型コロナのワクチン接種については、国から自治体に、厚労省からワクチンの供給を管理するシステム「V-SYS」と、内閣府として私のチームで構築した、皆さんのワクチン接種を記録システム「VRS」を提供しています。自治体にはV-SYSから必要な数のワクチンの要求、VRSに接種実績の報告をしていただいています。一つのシステムで運用できればよかったのですが、河野大臣チームが立ち上がったときには、厚労省でV-SYSがほぼ完成していたため、両者を合わせることはできませんでした。
4月初旬と設定された一般接種開始に間に合わせるため、VRSの開発期間は2ヶ月しかなく、まずは、とにかく簡易に迅速に接種履歴が記録できることを最優先に開発しましたが、運用開始後も日々改良と必要な開発を続けています。5月にはV-SYSとVRSのデータを統合して可視化するダッシュボードを開発し、日々の政策立案の参考にデータを活用できるようになりました。
先週末から、都道府県の担当者にもアクセス権限を共有し、閲覧・分析に活用できるようにしました。都道府県と自治体の裁量で接種スピードをワクチンの供給状況を見ながら計画しやすくなります。
日本政府が、これほど日々更新されるデータを元にして政策決定をした経験はなかったことですし、さらに都道府県や日本医師会など関係者と共有しながらプロジェクトに取り組むというのは、非常に意義のある大きな一歩を踏み出したことになります。
VRSへの接種記録は、接種現場の皆さんにとっては追加の負担なのですが、ご理解とご協力をいただき、すべての自治体から接種記録を入力していただいています。本当にありがとうございます。接種現場の皆さんのご協力に応えられるよう、引き続き、ソフトの改善も続けていきます。
直近の残る主な懸案は、申請をしたものの、承認をお待ちいただいている企業の職域接種です。承認待ちの企業の方々にはお待たせして申し訳ありませんが、8月9日週以降から順次スタートいただけるよう、現在調整しています。
私が着任した1月の時点では、接種履歴は従来の予防接種と同じように、予防接種台帳で自治体ごとに手動管理することが予定されており、接種状況の全体像を把握できるのに、2-3ヶ月かかることが想定されました。また、接種の予約についてもさらに別のシステム開発が走っていました。しかしながら、1億人以上がほぼ同時期に3-4週間をあけて2回打つという特殊性、海外からワクチンを調達しなければならない不確実性、接種が進んだ際に発生するであろう住居違いの接種による混乱や様々な問い合わせへの対応、災害時のバックアップ、接種証明の必要性等を想定すると、V-SYSとは別であったとしても、可能な限り迅速に、国全体の接種状況が記録されるシステムが必要でした。
その状態から、わずか半年。自治体の皆さんにシステムを使いこなしていただけるようになり、官庁も官民混成チームでシステムの開発を直接できる事例ができ、政治は毎日更新されるデータを見ながら政策の意思決定ができるようになりました。結果的には、9月に創設するデジタル庁の最初の仕事になりました。VRSを開発した私のチームのメンバーの多くがデジタル庁にそのまま移行し、経験を活かして行くことになりますし、他省庁や自治体からの出向者は元の組織に戻って活躍いただけるでしょう。
この国のデジタル化の遅れはコロナ禍で顕著になったわけですが、テクノロジーを前向きに活用し、多様で適切な人材配置ができれば、この国は数倍早く動き、適切な政策を打つことができるようになります。19日の日本経済新聞の朝刊でも、デジタル庁を「行革の星」にと題した論説が掲載されました。
引き続き、このワクチン接種を1日でも早く、一人でも多くの方への接種を促進し、通常の社会経済活動を再開することを最優先に尽力していきます。そして、この任務で得た経験と知見を行政のデジタル化のみならず、行政組織の改革に取り組んで参ります。
編集部より:この記事は、衆議院議員、小林史明氏(広島7区、自由民主党)のオフィシャルブログ 2021年7月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は小林史明オフィシャルブログをご覧ください。