白鵬ほど国技への正しい敬意を払う日本人力士はない

貴ノ岩問題が起きたときに、私は断然、モンゴル人力士たちと、白鵬を擁護した記事をアゴラにもたくさん書いた。いままた、白鵬に対するいわれなき、ヒステリックな誹謗中傷が多く出されているので、再び、何回かに分けて白鵬問題を論じたい。

横綱 白鵬関 NHKより

私は白鵬は大相撲史上、最高の力士だと思っているということは、『365日でわかる日本史 時代・地域・文化、3つの視点で「読む年表」』(清談社)のエッセンスにした『日本の偉大なアスリートから歴代ベスト20』でも書いた通りだ。

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優勝の回数、通算勝利数で群を抜いているし、連勝記録でも2位でベスト10にも三度は行っている。勝率でも昭和以降では最高だ。

中国などにとって眼の上にタンコブ的な日本とモンゴルの良い関係を悪くしたいと思われる人と、モンゴル人力士がともかく嫌いという国粋主義者の両方から攻撃を受けて炎上した。中国の工作員がこの問題に興味を持ったら、保守派の白鵬に対する憎悪をおおいに煽っていること間違いないし、それは大成功している。

いまの日本にとって相撲の最大の価値は、モンゴルとの友好関係に役立っていることかと思うが、保守系の人までがその効用を忘れているのは困る。白鵬の価値は軍用艦何隻かに勝る。

少なくとも、モンゴルの世論が日本に対して悪い印象を持つような扱い方は勘弁して欲しい。

また、モンゴル力士への誹謗をする人は、もし、大リーグの日本人選手が同じ立場に置かれたらと思わないのだろうか。大リーグや欧州サッカーで、日本人同士が八百長の相談していると証拠もないのにいわれたらどう思うか考えるべきだ。

あるいは、イチローの内野安打とか大谷のバントヒットが卑怯だとかいわれてよい気持ちするまい。

白鵬の相撲や態度に酷いことをいう人がいて心外だ。相撲の歴史なども日本人の横綱などより、よほどよく勉強して礼儀正しいと思うし、日本の国にも敬意をはらっているのだから、批判はちょっとどうかと思う。

白鵬に国技だとか神事としての性格もあるという自覚がないという人が多い。国技というのは、国技館ができたときにそうなづけて宣伝につとめただけだし、神事であることが本質なら、宗教団体として扱うべきだし、NHKの放送だとか天皇杯などの授与も微妙になるから、それはあまり強調しない方がいい。

しかし、優勝回数で大鵬と並んだとき、白鵬は「この国の魂と相撲の神様が認めてくれたお陰で、この結果があると思います」「明治時代の初期。大久保利通という武士と明治天皇が(相撲という)長く続いた伝統文化を守ってくれたそうです。その中で天皇陛下に感謝したいと思います」と語っている。

また、東日本大震災の被災者慰問では、異例となる1日2度の土俵入りをし、土俵入りのしこを踏む所作には、災厄をはらい、地鎮などの意味が込められているとし、「大鵬さん(元横綱)には『横綱土俵入りは、相撲を2番取ることと同じぐらい大変なもの』と言われたことがある。簡単に見えるかもしれないけど、足の下ろし方とか難しいことが多い」と明かしたこともある。

これだけの言葉をいえる日本人横綱はいない。自分の思ったことを熟慮しつつも言葉にするのが白鵬の姿勢だし、そのことを不遜とか傲慢という言葉だけで片付けるべきでないと思う。

また、2010年名古屋場所で相撲協会が天皇賜杯を辞退したときに次のようなエピソードがあったことを忘れてないか(日刊スポーツ記事を要約)。

白鵬のもとに、天皇陛下から応援メッセージが届いた。「おねぎらいとお祝い」という天皇陛下の言葉の入った文面。3場所連続全勝優勝などの偉業を達成した白鵬をたたえ、激励する内容だった。陛下が優勝力士に書簡としてお気持ちを伝えるのは異例。協会が天皇賜杯の表彰を辞退し、涙を流して悲しんだ白鵬を気遣ったと推測される。白鵬は会見で感激の言葉を口にした。

思わぬ吉報に、白鵬の目は潤んでいた。「こんなにうれしいお言葉はない。今年はまだ2場所ある。その2場所を、天皇陛下のお言葉を糧に頑張っていきたい。(書簡の)コピーをいただいたので、この世に2通しかない。1人で読みたい」と、喜びをかみしめた。書簡は天皇陛下の言葉を伝達する形で宮内庁の川島裕侍従長が書いたもので、書簡を持った1人の宮内庁関係者が両国国技館に到着した。白鵬と執行部の親方衆が見守る中、協会の村山代行に書簡を手渡した。

(次回は白鵬の相撲について論じる)