「紙の本」は無くなっても、出版社は無くならない

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自己紹介で「本を書いている」と言うと、「印税でウハウハですね」といった反応がよく返ってきます。しかし、これは出版業界の現実を知らない人の発言です。一部のベストセラー作家を除けば、本の執筆は儲からない仕事です。

ビジネス書の場合、印税は最大でも価格の10%程度。1500円の本で一冊売れても150円ですから、1万部売れたとしても150万円です。

書籍の販売は年々低下しており、ビジネス書で1万部に到達するのは簡単ではありません。しかも、1冊売れても、次々と連続してヒットを出し続けるのは、更に困難です。一部の例外の人たちを除けば、書籍で印税生活を実現するのは、極めてハードルが高いといえます。

最近、ビジネス書作家から注目されているのは電子出版です。その理由は収益性です。出版社を通さず、著者が直接原稿を作って、アマゾンなどで販売する場合、著者が販売価格の70%程度を受け取れる場合もあるそうです。

確かに収益率が極めて高く魅力的に見えますが、私は自分で直接書籍を制作して電子出版しようとは、今のところ考えていません。

その理由は、出版社にいる編集者の存在です。

今まで40冊以上の書籍を出版してきましたが、編集者の役割は極めて重要です。こちらが持っているコンテンツをどのように調理し、読者に提供していくか。編集者の資質や提供してくれるアイディアによって、書籍のクオリティや販売部数は大きく変わってきます。

二番煎じのような作品を安易に大量生産するのではなく、真に読者への価値提供を考え、今までになかった書籍を作ろうという意欲のある編集者は、価値ある書籍の制作に必要不可欠です。そのような書籍を、これからも編集者の方と力を合わせて作っていきたいと思います。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2021年7月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。