「世襲議員」は是か非か、制限することは可能なのか。まずは政治資金団体を課税対象にするのが現実解?
こんばんは、音喜多駿(参議院議員 / 東京都選出)です。
五輪=IOCが日程変更を許可、酷暑と湿度対策で
https://jp.reuters.com/article/sport-tokyo-olympics-heat-idJPKBN2EW0AJ
運営面では気になる報道もありますので、こうした点にもしっかりと注視をしながら、日本選手のみならずすべての選手の活躍と安全を祈念したいと思います。
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さて、今朝は経産省官僚のかどさんと、憲法学者の曽我部先生が非常に示唆に富んだやり取りをTwitter上で展開されていました。いわゆる「世襲議員」の功罪についてです。
親の地盤をついだ二世三世の議員は圧倒的な地力を持った状態からスタートするので、不公平ではないか・現代の貴族制だと批判の声は止みません。
いわゆる世襲議員は私の身近にもたくさんいて、卓越した能力・人格をお持ちの方が複数いらっしゃいます。
一方で、「叩き上げ」だからといって立派なわけでもない。逆のケースもまた然り。
とはいえ曽我部先生が指摘するように、「放っておくと世襲ばかりになる」という固定化の問題点を放置しておいて良いとは私にも思えません。
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その解決策の「仕組み」としてしばしば提案されるのが「予備選挙」です。
公募をかけて政党内部の見えないところで選考を行うのではなく(結局は世襲候補に決まる)、党員内や選挙区内での予備選挙を大々的にやって投票で決めれば良い!というものです。
ただ、これは残念ながら問題解決にはならないと思います。
前述の通り、世襲政治家はいわゆる
「地盤(後援会組織)・看板(知名度)・鞄(政治資金)」
という選挙に必要な「三バン」のすべてを継承した状態でスタートするので、新人が予備選挙で太刀打ちできる可能性は極めて低いでしょう。
言うなれば、世襲政治家は「強くてニューゲーム」をやっているキャラクターなわけで、予備選挙におけるチートキャラになってしまうわけです。
ただこれは、法律で一律にルール化することは違憲の可能性が高く、極めて困難です(憲法15条1項のいわゆる「立候補の自由」)。
ただ親が政治家であるというだけで、生まれ育った故郷から立候補する権利を奪われるなんて理不尽だ!という声も当然に出るでしょうし、その気持ちもまたわかります。
あと「世襲」の定義も難しい。親が地方議員を1期だけやっていた場合も「世襲」にあたるのか、国会議員で政治団体を持っていなければセーフなのか…線引き問題も出てくるでしょう。
そうなると結局は、冒頭で曽我部先生が引用している社説に戻って「政党が自主的に内規で世襲を制限する」という手段しかありません。
ただこれも難しくて、すでに自民党内で3割をしめる世襲議員たちのコンセンサスを取るのは困難。定年制すら形骸化し、現職優先で女性候補を増やすこともできない政党が、世襲の件で合意できるでしょうか。
「では自民党以外が自主的に始めれば良い」
という声も聞こえてきそうですが、世襲に反対していた旧民主党の大物議員が意見を翻して息子に継承し、
「我々だけ『世襲禁止』というハンデを背負うのは不合理だ(要旨)」
と述べたことにすべてが尽きます。世襲候補というチートキャラの方が選挙には強いので、その強みを野党側だけ手放したら勝てないと思うのは当然のことです。
結局、その努力は現与党を利するだけで、問題解決は遠のく可能性が高いと考えられます。
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というわけで、考えるほど暗くなってくるのですが、せめてまずできそうな提案を最後に。
「政治団体を継承する際に、課税対象とする」
小さな一歩ですけど、地味に重要なことです。現在は政治団体にプールされている政治資金は非課税で、親から子に右から左に継承できます。これが「鞄(資金力)」の厳選になるわけです。
ここに、他者に政治団体=政治資金を移譲するときはコストがかかりますよ、ということを明確にする。
それ以外にも資金移動の方法はおそらく無数にあるので、実務上は微々たる影響しかないかもしれませんが、世論に訴えかけるメッセージにはなるでしょうし、コンセンサスも得やすいと思います。
世襲議員について、皆さまはどのようにお考えでしょうか。様々なご意見をお聞かせいただければ幸いです。
それでは、また明日。
編集部より:この記事は、参議院議員、音喜多駿氏(東京選挙区、日本維新の会)のブログ2021年7月26日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は音喜多駿ブログをご覧ください。