私が横浜市長選にこだわり続ける3つの理由、「民意」「支配」「適格性」

8月8日告示、22日投票予定の横浜市長選挙は、10人が出馬表明する(一人は撤回)という大混戦になっている。今年7月6日まで、横浜市コンプライアンス顧問を務めていた私も、既に記者会見で、立候補の意志を持って政治活動を行うことを表明している。

しかし、告示が近づくにつれ、多くの立候補予定者の中から「主要候補」が次第に絞り込まれつつある。マスコミでは、現職の林文子市長、自民党市議の大部分が支持する小此木八郎前国家公安委員長、立憲民主党が推薦し共産党も支援する山中竹春元横浜市立大学医学部教授の3人が主要候補として扱われ、他の立候補予定者の中でも、田中康夫元長野県知事・元衆院議員、松沢成文参議院議員(元神奈川県知事)などとは異なり、公職選挙に初めて挑戦することになる私については、そもそも、政党・団体の推薦も支援も全くないのに、どうやって選挙戦に臨むのか、と思われているようだ。

こうした中、7月26日に、横浜市役所の会見室で、市政クラブによる私の「横顔会見」が行われた。

立候補予定者個人のプロフィールを中心に質問する場とのことだったが、私の場合、「主要候補」と扱われているわけでもないので、むしろ、政党・団体の推薦も支援も全くないのに、私が、なぜ、全くの私費で選挙資金を賄ってまで、立候補しようとしているのか、なぜ、それ程までに、横浜市長選挙にこだわるのか、という点を、最初に話しておいた方がよいと考えた。以下は、その点についての私の冒頭発言と、それに関する記者の質問に答えたものだ。

なぜ横浜市長選に戦いを挑もうとしているのか

私が、なぜ現時点においても横浜市長選に戦いを挑もうとしているのか、理由は、概ね三つに集約されてきたと思いますので、その点についてお話をしたいと思います。

まず、第一に「民意」、第二に「支配」、第三に「適格性」、この三つが、私が自ら挑まなければならないと考えた理由です。

市民に意見を問うこと、「民意」を確認することが不可欠

まず第一の「民意」の点ですが、今回の市長選は横浜へのIR誘致の是非が最大の争点になると言われてきました。この問題について、私はすでに私の考えをYahoo!ニュースなどでも書いていますが、一貫して言ってきたことは、IRを誘致すべきかどうかという議論に関して民意を問うということが決定的に欠落しているということです。

地方自治は基本的には市民から選ばれた「市長」そして「市議会」両方の二元代表制によって市政が営まれていく、これが原則です。しかし、市民の暮らしに、そして市の将来に重大な影響を与えるような事項については、その最大のステークホルダーである市民に意見を問うこと、「民意」を確認することが私は不可欠だと考えています。

IR誘致の問題、カジノ付きの巨大施設を横浜に誘致するかどうかの問題は、まさに「民意」を問うべき問題です。ところが19万筆を超える署名を提出して直接請求が行われたにもかかわらず、住民投票条例は否決され、住民投票はまったく実施されないまま、横浜市ではIR誘致に向かって手続きが進められ、既にその最終段階に近いところに至っているわけです。

私はこの市長選においても、IRの誘致について「民意」を問うことの是非が最大の争点とされるべきだと思っています。市長選でIR賛成か反対か、どちらを掲げた候補が当選するかで一刀両断的に事を決めるべきではないということは、私がずっと言ってきたところです。しかし、殆どの候補が市長選で、IR誘致への賛否を問おうとしている。

市長選後に住民投票条例を市議会に提出して、なんとか可決成立に持ち込んで住民投票を実施すべきだと言っているのは私だけです。この点において、私は、自分自身が市長選後の住民投票を掲げて市長選に立候補することが不可欠だと判断しています。

「菅支配」から横浜市政を市民の手に取り戻す

そして、二番目に「支配」、これは重点政策の中でも掲げた、横浜市に対する政治的支配の問題です。ひとことで言えば「菅支配」です。

横浜における最大の政治権力者である、現在の総理大臣でもある菅義偉氏という政治家に、これまで横浜市の市政行政は非常に大きな影響を受け、事実上「菅支配」とも言える状況が続いてきた。重要な意思決定は基本的に菅氏の意向に従う形で行われてきた。

私はコンプライアンス外部委員、コンプライアンス顧問として14年間横浜市の行政に関わってきました。その中では、直接横浜市の事業などの意思決定に関わったり、それについて相談を受けたりしてきたわけではないので、具体的にどのように菅支配の状況が生じているのかということは、私自身が直接体験したことではありません。

しかし、実際にそういう状況にあるということは、私はこれまでにも様々な人から話を聞いていますし、その点はおそらく間違いないだろうと思います。今回のこのIRの問題もそうです。そして、2027年に瀬谷地区で行われようとしている花博の問題も、私は、「菅支配」が事実上方向を決定づけているという問題だと思っていますし、そのことが、横浜市民を置き去りにして横浜市の市政行政が行われてきた、これまでの実態を象徴していると考えています。

そういう「菅支配」から横浜市政を市民の手に取り戻すためには、市長自身がまさに盾になってそういう政治権力に対抗しなければならない。おそらく、それができるのは今の候補者の顔ぶれの中では、私だけではないかと考えています。

このまま山中丈春氏が野党側の有力候補になることを放置していいのか

三番目に「適格性」の問題です。

これについては、これまでの出馬表明の記者会見のなかでもお話をしてきました。私は野党第一党、最大野党である立憲民主党が推薦をしている山中竹春氏が市長に相応しい人物なのであれば、そして政策面でも一致するのであれば、候補者が重複して自民党側を利することがないように、私自身は身を引くということは申し上げてきました。

しかし、残念ながら立憲民主党側、山中氏側の対応、私の公開質問状に対する回答の内容、対応をみると、凡そ山中氏が市長に相応しい人物だとは思えない。そういうことを理由に、私はやはり立候補の意思を固めざるを得ないということはこの場でも申し上げましたし、他の手段でも発信をしてきました。

そういった私の方に、山中氏はこういう人物だ、ということについて様々な情報が寄せられています。私はかつて23年間検察官として刑事事件で様々な人間を見てきました。詐欺事件も捜査公判に携わってきました。そういった経験に照らして考えたとき、私はこの出馬意思を固めたときよりも、むしろ明確に、山中氏は横浜市長に相応しくない人間であるということを言えると思います。

そのことを立憲民主党サイドには再三申し上げてきたし、ブログでも書きました。多くの人が、そこで書いた立憲民主党の候補者選定の経過に呆れ果てています。しかし、それにも関わらず、野党側の支持支援、推薦は山中氏の方に一本化されつつあり、連日街頭での活動が続けられて気勢を上げているという状態です。

私は本当にこのまま山中氏が有力候補になっていく、野党側の有力候補になっていくということを放置していていいのか、ということを真剣に考えています。

具体的に言いますと、まず、山中氏が立候補にあたって、自分が市長を目指す理由に関して、「データサイエンティスト」だと言っていますが、私はこれは事実上、嘘だと思います。彼にはデータサイエンティストとしての特別の素養、専門性があるとは思えません。それは彼が自分自身の経歴について、非常に曖昧な言い方をしているということにも関係します。彼にデータサイエンティストとしての専門性があるのかどうかということについても、私は直接情報を得ています。

二番目に、山中氏はIRの問題について、「カジノによるギャンブル依存症の増加、そして治安の悪化というのはデータから明らかだ」と明言しましたが、そのデータが、データ上の根拠が何もないということは公開質問状に対する対応、回答から明らかになりました。

IRを誘致すべきでないということに関して、彼が明確な根拠として述べられることは全くないと思います。ですから彼が仮に市長に就任したとしても、なぜIRを誘致してはならないのか、これまで進めてきたIRの誘致をなぜこの最終段階においてひっくり返さなければいけないのかということについて、明確な根拠を市議会で説明することは困難だと思います。

当然のことながら、IRを推進してきた市の執行部には、誘致すべきということの根拠しかありません。山中氏をサポートすることは極めて困難だと思います。

そして三番目、もう一つの山中氏の売りとして、自分はコロナの専門家だと言っています。これも嘘です。彼にはコロナという感染症に関する専門性は何もありません。

中和抗体について、ワクチンを打った人が1年後も中和抗体が持続しているという研究成果を発表した、それが唯一のコロナ対策に関する売りなのですが、この中和抗体に関する研究を行ったのは別の教授です。彼はそれを統計的に纏めて、広報活動をしたに過ぎません。コロナの専門家だというのは事実に反します。

ということで、今山中氏に関しては市民に、有権者に対してアピールしている内容と実体が著しく異なります。

私は今までコンプライアンスの専門家として、そして元々は検察官の経験に基づいて、様々な意見を言ってきました。様々な視点をしてきました。そういう私にとって、このような山中氏という人物が野党の有力候補として、今市民に市長選で選択される可能性がある状況を放っておくことはできないと考えた次第です。

以上述べたように、「民意」、「支配」、「適格性」、この三つが私が市長選に拘り続ける理由です。私の方からは以上です。

記者との質疑応答

(記者からの質問)
選挙戦にあたっては手足のない郷原さんはどうやって戦っていくのか。

(回答)
私としては、私が言っていることの独自性、私しか言っていないことをどれだけメディアのみなさんが取り上げてくれるのか、ということに注目しています。

たとえば、市長選後の住民投票というのは殆どまだマスコミのみなさんあまり重要な争点として取り上げていないのではないですか。

ご存知のように、藤木幸夫さんが会長の未来構想会議の候補者討論会が本来行われるはずだったのが取りやめになりましたね。取りやめになって基調講演二つと斉藤勁さんの提言の説明があって、その中で二番目の基調講演では市長選後の住民投票について、成蹊大学の武田真一郎成蹊大学法科大学院教授が話をされて、斉藤勁さんが五つの提言の前に、未来構想会議としては住民投票条例を市議会に提出するということを提言として市長候補に求めたいと、それについての意見も聞きたい、それだけではなく、もしIRに反対をしているのに住民投票はやらないというならば、どうやってIRを取りやめるのか、中止するのか、そこのやり方についても聞きたいと明言されています。

有力な団体の事務局長がそのように言われている。ところが全然そのことが報道されていないし、取り上げられてもいない。

私が散々ブログなどにも書いているように、IRの誘致の是非ではなく、住民投票をやるかどうか、やらないならばどういう方向でやらないのか、ということの方が最大の争点だと思っています。そうなると私がこれまでに言ってきたことそのものなのです。そういうことが取り上げられれば、当然私も議論の土俵に乗って来ざるを得ないのではないかと思っています。それと、菅支配の実体、これはまだ具体的に明らかにしていません。今後具体的に明らかにしなければいけないなと思っていますが、横浜市民にとってものすごく関心が高い問題ではないですか。自分たちの横浜市で一体どうやって物事が決められているのか、という話ですから。

そういうことについても当然発信を続けていきたいと思っていますし、それをメディアのみなさんがどういうふうに取り上げるのかという問題です。

それから三番目の「適格性」の問題も、みなさん取材されればすぐわかるはずです。

是非この場に山中さんが来られた時には、今日私が指摘した三つの問題を是非訊いてもらいたいと思います。彼はどう答えるのか、彼を知る人が私に言ってきているのは、是非公開の場で討論してくださいと。直ちにわかりますと。彼の人間性と彼が言っていることが本当なのかどうかということが、直ちに分かりますと言っています。

彼は、今まで横浜市立大学でも、そういう公開の場での討論をずっと避け続けてきたらしいですね。今回もなぜ未来構想会議の討論会が中止になったのか分かりませんが、ひょっとするとそれが関係しているかもしれない。だとすると、今後も一切討論の場に出て来ない可能性がある。そうするとみなさんが質問するしかないではありませんか。

そういう当然メディアでも問題になるべきだということが問題になっていけば、私が言っていることが他の候補とは全然違うことを言っているのだということもわかってもらえるのではないか、なぜ私が横浜市長選挙にこだわるのかということも、わかって頂けるのではないかと思っています。

※会見の様子を動画でもご覧いただけます。