バレンシア州で最大のリゾート地にヨーロッパで最も高いビルが誕生
バレンシア州最大のリゾート地ベニドルム(Benidorm)にヨーロッパで最も高いビルが誕生した。
地上からの高さは建物の先端まで202.5メートル、47階建てで256戸の高級マンションから成る建物である。建物の名前はインテムポ(Intempo)。
ベニドルムにはこれまでグラン・ホテル・バリが186メートルの高さを誇っていたが、遂にそれを追い越したことになる。
またベニドルムではこれまで27棟のマンションが100メートルを超えた高さにある。
ベニドルムの市役所に住民票を登録している人の数は7万人余り。1966年は人口僅か2800人だった。観光リゾート地となってからは年間に国内外から1600万人の観光客の訪問を受けているバレンシア州で最大のリゾート地となっている。特に観光シーズンになって直線で2キロのビーチ沿いを散歩すると英語、フランス語、ドイツ語の会話も良く聞かれるようになる。
この高層マンションが完成に至るまでに15年の歳月を要したという建物である。その経緯を以下に説明することにしたい。
- 2005年、不動産のオルガ・ウルバナ社が高層ビルの建設を目的に土地を購入。この土地購入と建設の為に9300万ユーロ(112億円)がガリシア信用金庫からオルガ・ウルバナ社に融資された。バレンシア州から最も離れた北西部ガリシア州の信用金庫が融資をしたのである。なぜ、大手銀行が融資しなかったのか?
- 2006年2月、建設が開始され、完成を2010年とした。
- 2007年になると不動産バブルが弾ける兆候が見られるようになってオルガ・ウルバナ社でも資金難や技術上の問題が目立つようになった。
- 2009年、100人の従業員を抱えていたこのビルの建設会社エストゥルクトゥラ・アリベン社が99人を解雇した。それは事実上の倒産である。その影響で建設は中断された。
- 2010年3月、コノ・エストゥルクトゥラ社が引き受けて建設が再開されれた。
- 金融危機の影響から銀行などの再構築を目的にスペイン政府によって設立されたサレブ銀行がこの建設で抱えている負債の解決に乗り出した。というのも、オルガ・ウルバナ社に融資したガリシア信用金庫が不動産バブルで危機に陥ったからである。
- サレブ銀行はオルガ・ウルバナ社の再建は困難と判断。
- 2014年11月、オルガ・ウルバナ社は会社更生法を申請して事実上倒産。
- 2017年、サレブ銀行は米国ミネソタにあるファンドSVPグローバル社に売却した。
- 2019年、SVPグローバル社は不動産ユニーク・レシデンシャル社に建設の再開を要請した。これまでのように二流の建設会社ではなく、同社はスペインの最大手ゼネコングループACSの傘下の建設業者ドゥラガドス社に建設再開を依頼した。そして今年7月に遂に完成に漕ぎ着けたのである。因みに、ACSの最高経営者はフロレンティーノ・ペレス氏で、同氏はサッカーレアル・マドリードの会長でもある。(スペイン紙「ラ・ラソン」6月28日付から引用)。
38階から47階は左右の建物が結合している箇所で、ダイヤモンドの形状を真似たような形になっている。256戸のマンションの4割がすでに売約済になっているそうだ。その内の7割は外国からの購入者でロシア、北欧、フランス、ドイツからの出身者が中心となっている。購入の狙いは以下の3つに分類できる。
- 購入してそれを貸しマンションにする。
- バケーションの期間中に利用する。
- バケーション以外の期間に貸しマンションにする。
1階から22階までは比較的手ごろな価格で25万ユーロからある。38階から45階になると床面積が250平米以上となり100万ユーロ(1億2000万円)を超えるものもある。
地下3階まで350台が駐車できるパーキングになっている。46階と47階はスポーツジム、ジャクジー、サウナなどがあり、プールは外縁が存在しないかのように見えるインフィニティ・プールとなっている。またレストランやバルもある(電子紙「エル・コレオ」7月11日付から引用)。
バレンシア州の第2都市アリカンテからは45キロ、バレンシアからだと140キロの距離にあるベニドルムには現在まで140軒余りのホテルがある。そのうち3万8000戸が供給できる体制になっている。そしてシーズンオフになると、スペイン国内の年金受給者を対象に政府が支援して安価な料金で高齢者が宿泊できるようになっている。
この新しい高層マンションビルの誕生で、ベニドルムの話題がまた一つ増えたことになる。