世論調査で「なぜ現政権を支持しますか?」の問いに「自民党だから」という選択肢が必ずあります。私はこの回答の意味が昔から理解できないのですが、「自民党だから」を選択する人は常に無視できないほど一定数あります。
世論調査をすれば調査機関にもよりますが、自民党支持が4割ぐらい、野党は各党一桁%が並び、残りは無関心派です。無関心派は若い人に多いのですが、そういう人たちは〇〇党という枠組みがよくわからないだけではなく、右派と左派、あるいは保守と改革という切り口がわからない人も案外多いのだろうと思います。
なぜ、自民党が公明党とタッグマッチを組むのか、街の人に聞いてみたらよいでしょう。半数ぐらいの若者は知らないはずです。公明党のバックが創価学会というのも知らないし、創価学会がどんな宗教かも知りません。ましてや自民と公明はそもそも水と油の関係だったが公明が自民の軍門に下った歴史なんて驚きの話なのでしょう。一方、立憲民主党が何を主張しているのか、共産党がなぜ、幅を利かせているのか、そもそも論がほとんど分かっていないし、情報が断片化している現代において若者は興味すらないと思います。「政治無関心派が多すぎる」のはこの基本の理解が欠落したため案件ごとの劇場型選挙が分かりやすいということになったともいえます。
戦後、政党が自由になったこと、組合や学生運動が盛んな頃はなんとなくかじった右や左の話もありました。学生運動の末期の頃は何が何だかわからず、やけやたら原理主義を叫び、力による自己主張を標榜していました。今の人から見れば「あれは何だったの?」でそもそも論を理解できないのです。
一方、経済成長と輸出の促進、あるいは相手国との摩擦解消を背景に自民党のリーダーシップが基本的には続いてきたのですが、この枠組みを壊してもよい時代がやってきたように思えます。切り口は簡単です。今、日本にとって一番大事なことは何だろう、であります。国内向けの政策は与党も野党も大して差は出せなくなっています。両方とも国民の賛同がないと支持されないからで双方はより中道化するのです。アメリカでもかつては共和党と民主党は相当の違いがあったものの時代と共に寄り添う傾向が強まっています。
たとえば消費税一つ取り上げても野党の一部は反対と叫びます。ではその代わり日本の財源をどうしますか、と聞けば答えに詰まるでしょう。歳出を減らせばいいでしょうか?ではどの歳出が多いのか、といえば社会保障費だったりするわけです。すると医療費歳出削減反対の声が出ます。結局、パズルのようなもので誰がやっても論理的に答えを引き出そうとすればさほど選択肢はないのです。野田政権が消費税を上げざるを得ないと考えたのは結局、誰が政権をとっても同じことだったといえます。
とすれば国民はもう少し外に目を向けるべきかもしれません。それは新たなる切り口、中国とアメリカの派閥関係でどちらに肩を入れるべきか、です。自民党の中には親中派と称する二階幹事長がいます。公明党は池田大作氏と周恩来の関係もあり、逆立ちしても中国を敵視することはありません。中国とアメリカという切り口を前面に出すと案外、今の与党体制なんて真っ二つに割れるのは自明なのです。とすれば力のない統一野党論より米中論で政治を再編してしまった方がより分かりやすく、国民の理解も得られやすいのかもしれません。
それは暴力的ではないか、という声はあると思います。しかし、台湾では親中派と独立派がずっと対立してきました。いずれ中国が台湾にちょっかいを出すとき、煮え切れない日本側の姿勢より、白黒はっきりさせなくてはいけない時は来ます。先日も指摘したように半導体戦争にでもなれば日本はどちらにつかねばならないか、中途半端にはできません。
日本は島国ということで国内政策のことが政治の大半を判断します。アメリカも大統領選では外交は二の次とされます。それは外交が占めるウェイトが国民レベルでは低いからです。ところが隣国の強大化で外交が日本の進む道を否が応でも決めなくてはいけない時代は確実に来ます。その時にそれが決められないのでは日本は致命的状況になることに早く察してもらいたいと考えています。
国内政策は折衷である程度向かう方向は一定します。ただ、外交、特にそれが日本に直接的影響を受けるとなると日本人のメンタリティから明白に分かれるでしょう。幕末の様子はその顕著な例であったし、日露戦争直後は国民は外交に関して非常にクリアな意見を持っていました。幸いにして戦後、経済で世界をリードし、外交は政府をはじめ、外務省や経産省がうまく取り仕切ってくれたのですが、これからはそういかなくなります。その時のためにも我々はもう少し、赤い船がやってくる時代に対してもっと勉強し、議論しながら備えを進めなくてはいけないのではないでしょうか?
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年8月10日の記事より転載させていただきました。