これまでにコロンビアのイヴァン・ドゥケ大統領を暗殺するプランは少なくとも6回はあった
6月25日、彼が搭乗していたヘリコプターを墜落させようとして狙撃手が発砲した事件の前に既に4回の暗殺プランが記録されている。
1度目はドゥケ大統領が所有しているマンションの1階下の真下に位置するマンションを外人が購入しようとした。
2度目は3人のベネズエラ人が2019年1月10日までに公の場に登場した時のドゥケ大統領の護衛の隙間を狙って暗殺する計画が練られていた。
3度目はドゥケ大統領が土着民族カウカを訪問した際に暗殺する計画だった。
4度目は2020年9月に明らかにされたことで、ロシアとイスラエル出身の狙撃手2名がその数か月前にコロンビアに入国。ドゥケ大統領だけでなく、彼の家族をも狙っていた。それ以後は、彼の家族の護衛もより強化された。
これらの情報はコロンビアの諜報局の調査で明らかになったもの。(電子紙「プルラリダー」2020年9月27日付から引用)。
そして、5度目となったのが6月27日のドゥケ大統領を乗せたヘリコプターが銃弾6発を受けた事件だ。それが発生したのはベネズエラとの国境近くの都市ククタに着陸しようとして滑走路の手前1.2キロまで近づいた時点であった。
ドゥケ大統領と一緒に搭乗していたのはモラノ国防相、パラシオス内務相、ノルテ・デ・サンタンデールのセラノ県知事それにククタのヤニェス市長の4人だ。負傷者はなかった。
ククタから80キロ離れたカタトゥンバ地方のサルディナタ地域を訪問した帰りであった。ドゥケ大統領の一行がなぜそこを訪問したのか? 理由はこの地方はコロンビアのゲリラ部隊や麻薬組織の巣窟となっており麻薬の密輸などの起点となっているからである。その取り締まりを今後強化したいという狙いから今回の訪問となったもの。
それを快く思っていないゲリラ部隊などが彼らを威嚇する意味もあって彼らが搭乗したヘリコプターに銃弾を浴びせたということだ。ヘリコプターを操縦していた軍人パイロットの巧みな操作によって難は逃れた。
この事件は20人余りの捜査員と専門家による調査で10人の逮捕につながった。
一般にヘリコプターは着陸する体制に入るとスピードを落とす。その瞬間が狙い時である。調査の結果から狙撃した場所とヘリコプターとの距離は1200メールであったということも判明している。また、この犯行は解散したコロンビア革命軍の和平交渉に応じなかった分派「33戦線」によるものだということも明らかになっている。(電子紙「エル・エラルド」7月20日付から引用)。
そして6度目となる今回新たに発覚した暗殺プランというのは同じく狙撃手が、大統領専用機フォッカーF28 のターボエンジンに銃弾を撃ち込んで墜落させようとするものだ。それが今回の10人を逮捕したことから明らかにされた。その計画は警察の方で極秘レポートとされていたのを地元誌セマナ(Semana)が特ダネとして明らかにしたものだ。(電子紙「ラ・パティーリャ」がそれを転載)。
この暗殺プランを彼らゲリラ組織は「目標、コロンビア6」と呼んでいた。ドゥケ大統領が必然的にククタを訪問せねばならなくなるように新たにノルテ・デ・サンタンデール地方でテロ事件を起こすことを計画した。
その対象になったのはそこの警察部隊本部で、そこから200メートル離れた場所に爆薬を積んだ車を用意する。そこは丁度下り坂になっており、そこから車が坂から下るようにさせてその本部に衝突するように仕掛ける計画であった。更に、ククタの警察調査部隊も爆破させる予定であった。
そうすることによってドゥケ大統領が現場を視察するのにククタを必然的に訪問せざるを得なくするというものである。そこで彼を乗せた大統領専用機がカタム空港に着陸体制に入って低空飛行している段階で狙撃手がそのターボエンジン目掛けて発砲するというものだ。また、用意する銃はバレットライフルは口径50ミリで凄い威力を発揮することになる。「ディアリオ・ディヒタルRD」から引用)。
コロンビアはラテンアメリカでコカインの最大の供給国だ。その被害を最も受けているのが米国である。米国は、コロンビアに資金を提供してコカの栽培を取り締まるべくコロンビア政府に圧力をかけている。
一方、コカインをビジネスにしているのがコロンビアのゲリラ組織だ。コカインをベネズエラそして中米経由で米国に密輸している。特にベネズエラは、マドゥロ大統領政権下で軍部がその密輸に協力している麻薬国家となっている。しかもコロンビアのゲリラ組織はベース基地をベネズエラにおいている。
この密売ビジネスを阻止しようとして第一線に出て積極的に活動しているのがドゥケ大統領である。
だからゲリラ組織にとってドゥケ大統領は抹消されるべき第一人者ということだ。