厚生労働省の山本史官房審議官は18日の衆院内閣委員会閉会中審査で、イベルメクチンを新型コロナウイルス感染症の患者を対象にするために「治験結果踏まえ迅速審査をする」という答弁を行いました。
さて、巷で話題になっているこの「イベルメクチン」とは一体何なのでしょう?
イベルメクチンとはノーベル賞学者・大村智博士が米製薬会社のメルク社とともに開発した抗寄生虫薬です。
今年3月から新型コロナ感染者が急増し大混乱に陥ったインドで、実際にイベルメクチンを治療・予防に使った結果、5月に入り感染者数が急速に減少。南米のペルー・ブラジル・パラグアイなども、新型コロナ感染者向けにイベルメクチンを配布しています。
東京都医師会の尾崎治夫会長は、イベルメクチンの日本国内での使用を強く訴えています。
一方で、WHOやNIH(米国立衛生研究所)などの世界のメジャーな保健機関は、
世界中の科学者を納得させるだけのエビデンスを示した臨床試験結果は出ていない。
COVID-19患者の治療にイベルメクチンを使用することに関する現在のエビデンスは決定的ではありません。より多くのデータが得られるまで、WHOはこの薬剤を臨床試験内でのみ使用することを推奨しています。
という見解を維持しています。
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そもそもイベルメクチンは獣医の間ではとても重要な薬です。
イベルメクチンは抗寄生虫薬としてノーベル賞を受賞したくらいとんでもなく良い薬で、犬などのフィラリア症に対する特効薬としても多くの獣医師や飼い主がめちゃめちゃお世話になってる薬。それが今、変に持ち上げる人が多いせいで結果的に悪いイメージがついてしまってるのが凄く悲しい。
— アルパ・カパ@実験動物獣医 (@alpacapa) August 17, 2021
ヒトも含めて、本来の目的に使用する分が不足する懸念やデメリットも。
イベルメクチンは本来、疥癬(ヒゼンダニ;寄生虫)の治療に用います。
疥癬治療に用いる分の薬が無くなり困っております・・。
しかも、コロナ予防内服等で乱用すると、イベルメクチン耐性ヒゼンダニが生じる懸念があります。
病院や高齢者施設、保育所等での疥癬集団感染が相次ぐかもしれません。 https://t.co/fyHlCdDXZW
— やさしい皮膚科医 (@S96405539) August 17, 2021
疥癬や線虫に対する薬を、別の用途に「とりあえず使えばいいじゃないか」って使用すると、薬剤耐性を生んでしまい、いざ本来の使い方をしたい時に効かなくて困るってデメリットがあるんですよ。
効くかどうかのしっかりしたデータもないうちから、イベルメクチンを使用するのがダメな理由の1つです。
— ばりすた☕️脳神経内科医 (@bar1star) August 18, 2021
まだまだ分からないことが多いようです。
軽症患者は、イベルメクチンを投与しようが、しまいが、殆どの場合良くなるわけです。患者が治ったからと言って、イベルメクチンの効果かどうかはわかりません。なので、患者の条件を揃えた上で、投薬した場合とそうでない場合の重傷率や治癒までの時間などを比較する臨床試験が必要になります。 https://t.co/GOjPXW0Y8o
— 勝川 俊雄 (@katukawa) August 19, 2021
新型コロナ感染症に、はたしてイベルメクチンは安全で有効なのか?
イベルメクチンの効果や安全性を調べる臨床試験の結果が待たれます。