ワクチンパスポートという言葉がちらほら聞こえてきました。日本国内のおおよその一致した認識は「(海外渡航用などのために)ワクチン接種した証明」です。市町村のウェブサイトにもわざわざ「接種証明書(ワクチンパスポート)」とあります。これ、よく考えると接種証明がなぜパスポートになるのか意味不明なのです。
パスポートの意味とは①旅券②フリーパス③その状況になるための手段です。ワクチン接種に絡む意味合いからすると②のフリーパスが適用できるわけですが、日本のそれは現状、ワクチン接種者になにか特別優先権的なメリットはありません。
菅総理が「ワクチン接種証明書の積極的な活用の方法を含め、飲食店の利用、旅行、イベントなど日常生活や社会経済活動の回復もしっかり検討する」と述べ、それを補足するように加藤官房長官が国内で接種の事実を証明するに当たり、『接種済証』を用意していただくということは可能だ」と述べています。つまり接種証明はワクチンパスポートを作るための一プロセスであり、接種証明がパスポートになるわけではないのです。ここがきちんと理解されていない気がします。
では本当のワクチンパスポートとはどんなものでしょうか?ここ、カナダ、ブリティッシュコロンビア州で9月13日から本格導入される「ワクチンパスポート」は詳細プランがまだ発表になっていませんが、シビアです。「必要不可欠以外の活動やイベントに参加する場合に、州民に新型コロナウイルスワクチン接種証明の提示を義務付ける」もので9月13日以降、移行期間を経て「ワクチンを打っていないとどこにも入れないよ」ということになるのです。その規制対象はすべてのレストラン、パブ、バー、コンサート、劇場、映画館、ジム、レクリエーション施設、結婚式、パーティー、会議、学生寮…。どうです?ここまで規制されるとまず、仕事ができません。友人と会ってお昼ご飯も食べられません。これらのところに入るには政府発行のIDを提示することが求められるのです。
当然ながらこの発表には強い反対もあります。当地の新聞には「そんなことしたら客がいなくなる」「常連にそんな失礼なことを聞けるか!」といった声が出ています。しかし、当地は強制力があるのです。できなかったら厳しいペナルティが課せられるのです。この1年半の間、若者が家でパーティーをしているといった通報で数十万円単位の罰金を科せられ、マスコミに公表されるといったことすらしばしば起きています。このルールを守らなかった施設には厳しい罰則が待っているとあれば否が応でもそれに従うし、逆にずるをしていたら必ずそれを見ている目があり、通報されるのがこちらの社会構造なのです。
私の日本の友人たちと時折やり取りしていてもワクチンを打っていない、あるいは打つつもりがないという人はかなり多いのです。なぜ、そう考えるのだろう、と思った時、当地のワクチン非接種者の傾向とある共通点が見えた気がするのです。当地の非接種者は疾病や体質問題などを抱えるそもそも接種できない、あるいはすべきではない人を別にすると、地方居住者、一部の先住民にその傾向がみられます。なぜか?といえばワクチンに対する正しい理解ができないことと隔離された生活を送っているため、コロナに鈍感になっていることがあります。ただ、もう一つ、信条に着目したのです。つまり、人体に人造の薬を入れることを良しとしないという発想です。
この信条はどこから生まれるのか、といえば案外宗教的なものであるケースがあります。当地の先住民はIndigenous religion(土着宗教)にいまだ影響を受けています。この土着宗教は日本の八百万の神に近いものがあります。それは近代の三大宗教であるユダヤ、キリスト、イスラムと絶対対比の関係です。宗教史を紐解けばすぐに出てきますが、古代アフリカで発祥した宗教観は土着宗教で日本はそれの足跡を残す神道が今でも根本にあります。私はここに日本が政治や決め事で強制力を持たせられない根本理由があるのではないか、と最近、要研究対象の一つに入れています。
日本に於いて狭義の意味でのワクチンパスポートは絶対に作れないでしょう。強制できないし、ペナルティや罰則規定もできません。それらの発想は根本は聖書の教えによるものであり、「罪と罰」であり、「禁断の果実」なのです。一方、神道に天罰や祟りはあっても教義がないので罰則はなかったかと思います。
ワクチンを打ちたくないという理由に間違った情報の流布が指摘されています。もちろん、私はその影響は計り知れないと思っています。しかし、それ以上に日本人は心の中に土着宗教的な抵抗感を持っているのだろうと推測しています。「そんなできたばっかりの薬で副作用がどうなるかわからない」というのは近代医学に対して漢方治療の話をしている比較がわかりやすいかもしれません。あるいは抗生物質を否定するようなものです。ならば日本人の薬好きはどこから来るのか、実に矛盾するその考えは自己都合と自己解釈によるものでしょう。
コロナは地球儀ベース。そこに神道国家の日本が世界スタンダードとどうすり合わせていくのか、これ、私のふとしたつぶやき的思いつきですが、真の意味のワクチンパスポートは究極の難題ではないかという気がしています。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年8月30日の記事より転載させていただきました。