菅総理が辞意を表明したニュースを手掛かりに、日経平均は2万9,000円台を回復しましたね。
この方は「株高は“局面転換”歓迎相場、つまり衆院選での与野党逆転の可能性低下を織り込んだもの」、日本株トレーダーは「菅総理と蜜月だった銘柄(楽天)が下落して、その逆の銘柄(KDDIやソフトバンクなど)が上昇する露骨な相場」などと評価していらっしゃったのが印象的です。
気になる海外の反応はといいますと・・・・
〇CNBC「菅氏、総裁選不出馬表明で日経平均は2%高(Japan’s Nikkei 225 jumps 2% as Prime Minister Suga bows out of governing party’s leadership race)」
- 菅総理辞任の報道を受け、日経平均は2%高
- 菅総理の支持率は、コロナ対応と東京五輪、度重なる緊急事態宣言発出で急低下していた
- クレディ・スイスの白川弘道チーフエコノミストは、「緊急事態宣言とソフトロックダウンが続き光が見えない状況下、政権の支持率は低下し、信頼感指数は落ち込んだ。次の首相の役割は、打ちひしがれた人々の信頼感の回復」と指摘
(筆者感想)→第一報はCNBCなだけに、日経平均の大幅高にフォーカスを当てた仕上がり。
〇ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙「菅首相、辞任へ(Japan’s Prime Minister Yoshihide Suga to Step Down)」
- 過去最多の金メダルをもたらし、且つ無事に終幕した東京五輪という追い風を受けながら、国民の不満は収まらず支持率は30%割れまで低下
- 不足する病院ベッド数、緊急事態宣言下での飲食店の営業自粛と乏しい支援策が支持率低下につながったほか、総理の「朴訥としたスタイル(a wooden public style)」も菅離れの一因に
- 菅総理は休むことなく週末も公務にいそしんだものの失敗を繰り返すようになり、時には原爆記念日では原稿を読み落とし、側近は原稿を貼り付けた糊の弱さを問題にした
- 総裁選に出馬を表明した岸田氏、意欲を示す高市氏の両氏は、財政拡大政策に言及しているため日経平均は上昇で反応
- 高市氏は「与党からは菅政権の意思決定の遅さ、説明不足について批判が上がっていた」とコメント
(筆者感想)→全般的に、次期総裁選をにらんだ構成に。岸田氏の名前を挙げた回数は2回だった一方で高市氏は4回だったうえ、過去の発言を取り上げたのは高市氏のみで、WSJ紙は女性候補に期待を表しているようでした。
〇ニューヨーク・タイムズ(NYT)紙「菅首相、就任1年で辞任へ(Japan’s Prime Minister to Step Aside After Just a Year in Office)」
- 菅総理の辞任は、安倍政権以前に6年間で6人も首相が交代した回転扉のような時代への逆戻りを示唆か
- センター・フォー・アメリカン・プログレスのトビアス・ハリス氏は、新たな自民党総裁を迎えたハネムーン時期に解散総選挙を予定するため、自民党が有利に戦えると予想。
- 菅総理はカリスマ性に欠け、世間と繋がりが持てなかった。外交問題評議会(CFR)のシーラ・スミス氏は「菅総理のコミュニケーションは世間にとって効果的ではなかった」、「菅総理は日本政府が抱える深く根付いた問題を体現する。危機時には、適応能力が高く、常識破りで、問答無用の政治家が必要」とコメント
(筆者感想)→自民党の新総裁をもって総選挙が「ご祝儀相場」となるかは甚だ疑問ですが、必要な政策を果断なく実行できる首相が登場して頂きたいものです。
菅総理にはコロナ対策などで批判が集まった一方で、就任から1年を振り返ると携帯料金の値下げや不妊治療の保険適用、デジタル庁の新設など破竹の勢いで実行してきたことも事実です。こうした功績は世襲ではなく、選挙区の地盤もなく、ご自身が仰る通り「ゼロからのスタート」を切った叩き上げの政治家だからこそ、成し得たと言えるのではないでしょうか。
総裁選に出馬する声が次々に上がってくるなか、NYT紙が懸念するような「回転扉への逆戻り」だけは避けて頂きたいですね。
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2021年9月4日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。