菅総理が総裁選不出馬を表明された。いろんな意味で残念なことである。
今年大学生になった息子に「菅総理がやめるようだが、野党党首の反応はどうだと思う」と聞いてみた。「遅きに失したのではないか?」というのが答であった。今まで「早くやめろやめろ」と言っていたのだから、この回答は普通なら正解であろう。
では、実際の反応はどうであったか。
A党:一刻を争う中、無責任だ
B党:投げ出した
C党:真っ只中での辞意は異常事態
D党:あまりにも無責任で逃げるのはひどい
ことごとく、今まで言っていたことと正反対である。国民はバカではないので、こういうダブルスタンダード、反対ありきの姿勢は、すでに多くの人が気づいているのだろう。だからこそ、今の野党支持率だと思う。発言に責任を取らないなら支持されないのである。
ところが、責任を取らない上に国民を丸め込むのがうまいのがマスコミである。
発足当初の菅総理の支持率と最近の支持率、その間の政策を考えると、当初の支持率が高すぎるとしても、至近の支持率は普通に考えてかなり違和感がある。現政権の施策が完璧な施策ではないにしても、そこまでコロナ対策で失策があったであろうか。ここは世界のコロナの状況と日本の状況を比較すれば常識的にわかることで、ここまでの支持率の低下は何かの力が働いているとしか思えない。これは陰謀論ではなく、一般的な常識の話だと思う。
再度述べるが、7割もあった支持率がここまで下がるということは、よほどの失策があったはずなわけであるが、この失策とは何か、を考えればマスコミによるダブルスタンダードとそれによる世論誘導が見えてくる。
以下に例示するが、施策の結果がきちんと報道されているなら、ある程度の低下はあるとしても、普通に考えてここまで支持率が低下するとは思えないのだ。
ワクチンの危険を煽り立て承認を早められなくしたうえで、それでもようやくの接種開始に「遅すぎる」と煽り、自治体に接種増を指示すると「そんなに打てるわけない、無理な注文だ」と煽り、実際に1日百万接種を達成して職域に拡げようとすると(それでも1日百数十万回はキープしているのに)「ワクチンが足りない」と煽る。「十分な人数にワクチン接種するには来年の春までかかる、やることが遅い」と煽ったのにすでに国民の約半数がワクチンを接種できている実態には評価無し。「半数以上が摂取しないと集団免疫ができない」といいながら、半数に近くなると「デルタ株は違う」「3回目が必要だ」と煽る。しかも、ファイザーからの追加ワクチン購入など、お隣の国のワクチン獲得の苦労を見ればすごいことなのに報じない。死者の数が増えていないことを評価しないうえに、重症者の年齢別の絶対数など報じず比率のみ報じる(高齢者が減ったので、当然若い人の比率は増える)。様々な宣言などについても「早く実施しろ」と言いながら、やったら「こんなに国民が大変だ」と煽る。まだまだ挙げればきりがない。いろいろ書いたが、書いていて嫌になる。
煽ると書いたが、マスコミは必ずしも嘘をついているのではない。公平に報道しないことが問題なのである。政権の施策について良い点も良くない点もあるが、普通に見れば、上記のような報道の仕方はダブルスタンダード以外の何であろう。イソップのロバを引く親子の話の複数の通行人役をマスコミが一人でやっているのである。
まずい点を批判することは正しいが、言いっぱなしをやめ、前に報道したこと、コメントしたことの責任を明確にして次の報道をしていれば、また、よかったことも客観的に報道していれば、国民が正しく評価でき、菅総理の支持率はそれなりの線に落ち着いていたのではないだろうか。
菅政権の政策は、100%素晴らしいとは言えないが、今の野党にこれだけのことができるとは思えないのだが、こんな報道ばかり見せられていたら、苦しみを我慢している国民の多くが政権与党を批判する方向になるのは当たり前である。
菅総理は、説明不足、発信力不足であるとよく言われるが、ほとんどはきちんと発表を聞いて、読めばわかるようになっている。そこは報道しない自由を行使するマスコミが伝えないだけで、正確に報道していたら、カバーできる問題である(政権発足当初はマスコミは口下手さすら評価していたように思うのだが)。
もちろん、マスコミのダブルスタンダードに反論せず、また、あおられた世論につられてやりかけた施策を修正してしまいそれであげ足を取られたことは、菅総理の評価できなかった点ではあるが、それにしても、である。
今回の総理の出馬見送りは、マスコミによるこういった誘導により支持率が下がり、政権を保てなくなったということではないか。こんな前例を増やしていいのだろうか?
日本国民はこんなマスコミに日本の政治を任せてしまっていいのだろうか?日本もイソップの話のロバのように死んでしまわなければいいのだが。
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田中 奏歌
某企業にて、数年間の海外駐在や医薬関係業界団体副事務局長としての出向を含め、経理・総務関係を中心に勤務。出身企業退職後は関係会社のガバナンスアドバイザーを経て2021年4月より隠居生活。