システム障害リスクのある銀行は不動産取引に怖くて使えない

金融庁は、システムトラブルを繰り返す「大手メガバンク」に業務改善命令を出し、システムを実質管理するそうです。これは、今まで発生した障害に対して、抜本的な対策が取られておらず、金融機関任せでは今後も同様の事態が発生する懸念が払しょくできないと当局が判断したことを意味します。

CHUNYIP WONG/iStock

金融システムの安定は、資産運用の中でも特に不動産取引において極めて重要です。

今月また東京23区の不動産を購入することにし、追加で1億円近い借り入れをすることにしました。

実は、日本の不動産の売買は、いまだに極めてアナログな方法で行っています。

通常は購入する物件に前の所有者の抵当権が設定されており、当日その抵当権を解除します。その上で、買い手の新たな抵当権を銀行が設定し、融資を実行するという流れになっています。

しかし、抵当権を解除して借りていた銀行に返済をしてもらい、その後抵当権を設定してから購入代金を支払うと言う流れでは、売り手への支払いができません。

そこで、関係者が金融機関の応接室などに一堂に会し、まず司法書士がすべての書類をチェックし問題ないことを確認する。終わったら登記に持ち込む前に融資をして、司法書士がすべての登記を同日で行うようにしているのです。

その際に、書類が足りなかったり、押印が漏れていたり、1つでもエラーが発生すると、取引全体が滞ってしまいます。毎回、極めて神経質なやりとりになります。

このような不動産取引に際し、もし決済日当日に銀行のシステムエラー等が発生すれば、決済が遅れてしまい登記手続きができなくなるリスクが出てきます。

決済の手続きは平日の午前中に始めることが多いのですが、支障が出れば、午後まで全員が足止めになったり、最悪決済が中止になる事態まで想定されます。

システムリスクのある金融機関を不動産決済に使うのは、最悪の事態を想定すると、私には怖くてできません。今回も安心して使えるりそな銀行さんでお願いしています。

システムトラブルを繰り返している銀行は、そのうち不動産会社から取引に使わないように要請されるかもしれません。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2021年9月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。