政策が決まる前に先取りする方法:政府会議資料の読み方

1.政府会議の資料は情報の宝庫

こんにちは、千正組の千正康裕と西川貴清です。

今回は政府の会議から政策の方向性を先取りする方法について取り上げます。

whyframestudio/iStock

政府では日々様々な会議が開催されています。例えば、第3回:骨太の方針とは(菅政権の最重要政府方針を理解する)で取り上げた経済財政諮問会議では今後1年間の財政政策・経済政策の方針を決めるための議論が年間を通して行われています。

2000年頃から日本の重要政策の方向性を定めるために活用されてきたこの会議では、総理に任命された民間人を会議のメンバーとして招くことになっています。

民間人は連名で又は個人名で政策を提案し、個々の政策を担当する各省の大臣が、現状の取組を踏まえた対応方針について回答します。そして数次の議論が行われたのち、最終的に6月の骨太の方針につながっていきます。

経済財政諮問会議は日本の政策方針を知るうえで絶対に押さえておかなければいけない会議ではありますが、他にも政府内にはさまざまな会議が立ち上げられています。社会に対する影響の大小はありつつ、すべての会議において、政策に関わる何かが固められていることは間違いないのです。

また、経済財政諮問会議のような、日本の大きな方向性を議論する会議以外にも、霞が関では無数の政策を検討するための会議が開催されています。読者の皆さんの特定の活動に関係するものだけでも、いくつもの会議が並行して開催されて、検討が進められています。

こうした会議の検討状況は、報道されることもありますが、よほど注目度の高い物でない限り、会議が立ち上がって検討がスタートした時と、会議の結論が出た時に報道が集中します。

それだけを見ていたのでは、民間の立場の方からすると、議論がまとまったタイミングで政策の結論が出たという情報をキャッチすることになります。そして、それから自分たちの活動やビジネスについて、どう対応していくかという後追いになってしまいます。

でも、我々プロの目から見ると、いつ、何が、どういうメンバーで議論が進み、論点が何なのか、どういう方向性になりそうかなど、会議の結論が出る随分前から見通しを立てることができます。

そういう見通しがあらかじめ立てられれば、政策の影響を受ける民間側としても十分な余裕を持って、自らの事業の方針を検討することができます。

例えば、企業などでは、先を見通して来年の予算を確保しておくということもできるでしょう。また、議論のプロセスやスケジュールを理解しておくことで、場合によっては政府の議論に足りない視点をインプットしたり、働きかけをしたりすることも可能になります。あらゆる政策に言えることですが、ものが決まるタイミングに近づけば近づくほど、方針を変えてもらうのは難しくなりますので、早めにインプットすることは、政策実現の鉄則です。

だから、政府会議の情報をしっかりとキャッチして、政策の動きを先取りすることは、とても大事なのです。政策を先取りする、というと官僚と仲良くなって、公表していない内部情報をこっそりもらう、ということかと思っている人もいるかもしれませんが、そんなことをしなくても、公表資料だけで分かることはたくさんあるのです。ただ、多くの人はその読み方を知らないだけなんです。

今回は、政府会議の公表資料の読み方について解説します。

・政策の方向性が決まる前に先んじて情報を取りたい
・会議情報があるHPが見つけられない
・会議の位置づけや目的が分からない
・会議の結論がどのように政策に結びつくのかわからない

こんな悩みのある人にとってとても参考になる内容だと思います。

2.会議のHPが見つからない!の解決方法

この記事をご覧の皆さんが政府の会議の内容を知りたい、と思うときはきっと、皆さんのお仕事に関係のある政策が議論されていることをメディアの報道などで知ったときではないかと思います。

でもなぜかメディアの報道では具体的な会議名を記事の中で取り上げないことも多いです。そのため、もっと詳しいことを知りたいのに、お目当ての会議資料を掲載するHPになかなかたどりつかないという方も少なくないのではないでしょうか。

一つ例をあげて、調べ方をお伝えします。

「こども庁」有識者会議が初会合 次期政権の課題に(2021年09月16日時事通信配信) という記事では、

「政府は16日、子どもに関する諸施策の司令塔となる「こども庁」新設に向け、有識者会議(座長・清家篤日本私立学校振興・共済事業団理事長)の初会合を首相官邸で開いた。(中略)席上、加藤勝信官房長官は「…」と指摘。(以下略)」

という記載がされています。

この有識者会議、どうすれば見つかるかというと、

「go.jp」を検索キーワードにつけると大体の場合は見つかります。

政府が開催する会議はほぼ間違いなく、日本政府のHPで公表されているため、日本政府のドメインである「go.jp」を検索キーワードに入れることで、該当するページがヒットしやすくなるという仕組みです。

例えば「こども庁 有識者会議」だけで検索すると、

画像1

ニュースサイトばかりヒットしますが、

「こども庁 有識者会議 go.jp」で検索すると、政府の会議が表示されやすくなります。

画像2

いくつかクリックしていくとどうやら「こども政策の推進に係る有識者会議」というのが、このニュースの元となる会議の可能性が高そうだ、ということが分かってきました。
後は、報道で明らかにされている

(1)会議の開催日は2021年9月16日
(2)座長は清家篤さん、

等といった情報を頼りに、本当にその会議が目当てのものか確認していきます。
(1)会議の開催日については、「開催状況」などとして会議の開催日を書いてあるページがあるので、そこを見れば確認できます。下記のような形です。

画像3

そして、(2)座長を確認するには、上の画面で「こども政策の推進に係る有識者会議の開催について」をクリックすると、会議の設置の趣旨やメンバーが記載された資料が出てきます。2ページ目に構成員が記載されているので、座長が誰か分かります。

画像4

ニュースで報じられている会議がほぼ「こども政策の推進に係る有識者会議」で間違いないことが分かりました。あとは、「議事次第、資料」を確認して、知りたい内容が公表されているかを確認するだけです。

これで皆さんが詳しく知りたい政府会議HPへのたどり着き方がわかりました。
次以降は、会議資料からどうやって政策を読み解くのかにフォーカスしていきます。

メルマガでも同様の内容を配信しています。

この続きをみるには この記事が含まれているマガジンを購読する


編集部より:この記事は元厚生労働省、千正康裕氏(株式会社千正組代表取締役)のnote 2021年9月24の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。