26日に欧州の3国で「投票」が実施

26日はドイツ連邦議会(下院)選挙が実施されるが、同日、スイスでは同性婚合法化を問う国民投票が行われる。それだけではない。オーストリアのオーバーエステライヒ州議会選挙もある。当方が取材対象としている3国で選挙ないしは国民投票が行われるわけだ。ヒマよりいいが、26日は忙しい日となりそうだ。

▲CDUのアルミン・ラシェット党首(CDU公式サイトから)

そこで3国の選挙ないしは国民投票の注目点、政治的インパクトなどについて簡単にまとめた。独連邦議会選が26日の最大イベントであることは間違いない。それに次いでスイスの国民投票、そしてオーバーエステライヒ州議会選の順で紹介する。

1.独連邦議会選

欧州の盟主ドイツの総選挙であり、16年間政権を維持してきたメルケル首相時代が終わり、ポスト・メルケル時代の夜明けを告げる選挙だ。ドイツばかりか世界でもその行方に関心が注がれている。

ドイツ国内のメディアによると、メルケル首相の率いる与党「キリスト教民主・社会同盟」(CDU/CSU)が社会民主党(SPD)にトップの座を奪われる可能性が出てきた。ただし、どの政党も1党では議会の過半数を占めることができないので、2党、ないしは3党による連立政権が選挙後、発足する予定だ。その際、SPDと「緑の党」が連立を組む可能性は高いが、2党では過半数に満たないため、リベラルな政党「自由民主党」(FDP)が加わることが考えられる。

ただし、FDPはCDU/CSUとの連立に関心が強いから、CDU/CSUと「緑の党」、FDPのジャマイカ連立政権が生まれる可能性も排除できない。明確な点はSPDとCDU/CSUは極右政党「ドイツのための選択肢」(AfD)との連立は拒否していること、SPDは「緑の党」に「左翼党」の3党左派主導政権には慎重な姿勢を崩していないことだ。いずれにしても、ドイツ議会選では、投票後,どの政党がどの政党と連立を組むかが重要となる。

2.スイスの同性婚合法化を問う国民投票

アルプスの小国スイスで26日、同性婚合法化に関する国民投票が実施される。世界でオランダが2001年4月1日、同性婚を最初に合法化した後、欧州を中心に同性婚を認知する国が増え、現在、29カ国が同性婚を認めている。欧州で同性愛者の婚姻を認めていない国は4カ国しかない。イタリア、ギリシャ、リヒテンシュタイン、そしてスイスだ。

スイス連邦議会は昨年12月、同性婚合法化を盛り込んだ民法典改正案「全ての人に結婚の自由を」を可決した。同案が可決された直後、保守系政党「スイス民主同盟」(EDU/UDF)や「スイス国民党」らを中心に反対の声が上がり、国民投票が実施される運びとなった経緯がある。

反対派は、「同性婚合法化は、社会的・政治的な亀裂を生み、男性と女性の間に築かれる永続的な関係としての婚姻の歴史的な定義を覆す」と指摘し、「婚姻は男性と女性の自然な関係であり、今後も保護されるべきである」(反対派の「国民投票委員会」の声明文)と強調。また、「同性婚合法化が認められれば、女性への生殖補助医療の道が開かれ、近い将来代理出産の道が認められるようになる」と懸念している(スイス公共放送協会のウェブサイト「スイスインフォ」日本語版)。

同国の同性婚支持グループ「ピンク・クロス」が2020年実施した世論調査では、国民の約80%が同性婚合法化を支持している。

なお、宗教界では、スイス福音教会連盟が2019年11月、同性婚の合法化に賛成を表明した。一方、スイスのカトリック教会司教会議やスイス福音ネットワークは同性婚合法化に反対している。

スイスではこれまで同性愛のカップルは「パートナーシップ制度」に登録できる。毎年約700組がこの制度を利用している。

3.オーバーエステライヒ州議会選

同州人口は約140万人、州都はリンツ市。オーストリア連邦議会ではクルツ首相が率いる国民党と「緑の党」の連立政権だが、オーバーエステライヒ州議会は国民党と極右政党「自由党」の連立政権だ。世論調査によると、国民党(トーマス・ステルツァー党首)の第1党は間違いない一方、前回の選挙(2015年)で第2党に躍進した自由党が得票率(前回30%)を大きく失うことが予想されている。自由党は難民問題が大きな政治的課題だった前回選挙では支持を伸ばしたが、新型コロナウイルスの感染後、マスク着用反対、ワクチン接種拒否を主張する自由党に対し、有権者(約110万人)がどのような審判を下すか注目される。

「自由党」の元党首ハインツ・クリスティアン・シュトラーヒェ氏が8月27日、ウィーン地方裁判所で汚職などの罪で懲役15カ月の執行猶予付き有罪判決を受けるなど、自由党を取り巻く政治環境は厳しさを増している。同党のオーバーエスターライヒ州のハイムブフナー党首がコロナに感染し、集中治療室にお世話になったばかりだ。低迷が予想される自由党に対し、社会民主党が伸びる可能性が予測されている。

なお、同州選挙はオーストリアにとっては今年最初の選挙であるだけに、クルツ政権のコロナ対策に対する有権者の評価がどう出るか注目される。参考までに、州内にはアドルフ・ヒトラーが生まれたブラウナウ市が含まれる。同市はコロナ・ワクチン接種率がオーストリアの中でも最も低い。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2021年9月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。