自民党総裁選における党員党友票取り扱いの課題

事実上の日本国総理を選出する議会制民主主義に則った権力闘争である自民党総裁選が、岸田新総裁誕生で決した。その中で見え隠れする問題の一つである、党員党友票の取り扱いに関して論じたい。

指摘されている問題点を大まかに整理すると

  1. 国民の声を反映する党員党友票をもっと重視すべきでは
  2. 意思を持たない党員党友の存在
  3. 不正投票の疑惑

これらを一つ一つ考察したい。

岸田新総裁 自民党HPより

党員党友票の反映する国民の声とは

河野候補の惨敗、過去は石破候補の逆転敗退等、党員党友票で多数から支持される候補が議員票の獲得不足で敗退する捻じれ現象が発生している。マスコミでは、この党員党友票を国民的人気の指標として伝えていて、平時から次の総理候補の支持数として宣伝し続けている。これを国民的人気と称し議員票で引っ繰り返す事を、あたかも密室政治、派閥の領袖の闊歩による悪の様に語られる風潮がある。果たしてどうなのだろう。

河野陣営の反省の弁を聞いていると、あたかも国民の声を聞かない自民党体制の組織問題を原因とする、組織が改善すべき問題との声が聞こえてくる。しかし、その反省では他責転換であり、自己反省亡くして河野さんの再起は難しいと言わざるを得ない。本質的な問題に目を向け反省する必要があるだろう。

国民的人気を形成する要素は『知名度』であり、それは直接でなくマスコミを通じた間接情報によるものだ。ある意味タレント性であり、虚像と言っても良い。タレント性であればマスコミの操作でいくらでも売り出せるし、逆に落とし込めるのも簡単だ。所謂マスコミの伝え方のバイアスがかかった虚像であり、選挙でタレント議員が圧倒的に強いのは、間違いなく政策や能力ではなく知名度なのだ。反して、議員票は、直接働きっぷりを見て、人となり、下働きも含めた実績や考え方、能力を間近で見ている人達の評価である。勿論、そこには自己の損得勘定もあるだろうが、政策実行における損得勘定であれば健全であるし、各議員は政策実効性を選挙で国民の審判を受けるので、これを否定するのは、間接民主制の否定でしかない。

国政を委ねる判断として、『人気』と『能力』のどちらを主に評価すべきかは明確ではないだろうか?この部分を河野陣営は反省する必要があるだろう。

今回、高市候補は河野候補や岸田候補と比較して知名度は圧倒的に低い状態からのスタートであった。それでもネット界隈の人気は急上昇、エコーチェンバー現象の要素も強かったが、後半はそれを凌駕するほどの人気となった。投票日が1週間後であれば結果は変わっていたかもと思わせる急追であった。議員も認める政策の確かさ、説明力、人間的魅力も評価され議員票も躍進した。それでも人気面では大きく及ばなかったのが現実である。今後マスコミ通じての露出が課題となるだろう。

この様に考えると、党員党友票の扱い事態、歴史を重ね練られた現状だとの認識が正しいだろう。国民の声だからと短絡的に重視するのは、実態軽視のポピュリズムへ向かいかねない。とは言え、国民の声を聞くことが民主主義の基本である前提で軽率に取り扱うべきでないのも事実。現時点ではバランスを保っていると判断できても、継続検討、議論が必要だろう。

党員党友とは

企業や組織が団体で党員申請するような事があり、個人の認識なく党員になっているケースが指摘されている。旧態依然とした組織票至上主義や党員確保ノルマ等の結果だろう。また、全く政治に興味のない人にも党員資格が与えられてもいた様だ。つまり、党員党友とは決して自民党支持者ではないと言うのが現実である。しかし、それで良いのだろうか?

基本的に現在の通常選挙の勝敗を決するのは組織票の確保が重要で、浮動票の取り込みを課題としながら、明確な取り込み戦略が不足しており、この事は国民への説明不足にも繋がる課題なのである。だから地元密着の選挙活動が必要になり、不正の温床にも成り得るのだ。

では、どうすれば良いのか。党員はともかく、党友に関しては、もっとオープンに個人参加が可能なコミュニティにするべきではないだろうか。但し、反自民活動家が混入するリスクを低減する必要はある。その方法はいくつかレベル感も含めて議論は必要だろうが、広く国民の声に耳を傾ける姿勢としては大きな意味がある。

そういう意味では広報戦略でもあるが、組織票以外の浮動層にもうったえていく効果も狙える。自民党各議員の主義主張、政策提言、議員同士の政策討論の公開、党友参加のカンファレンス、場合によっては野党とのコラボで討論等の企画をネットや専門チャネル開設で実行し充実させる。そこの有料会員を党友とする事で、メルマガ会員等に対する無味乾燥な情報提供ではない、活きた情報提供が視聴者参加型で活性化し、浮動層の取り込みも可能となる。

いずれ訪れるネット選挙。その場合、必ず投票率が増える。浮動層の参加率が高まるだろうからだ。しかし、その分政治は不安定になり得る。今から、健全な情報提供環境整備を進める事はあらゆる意味で有意義だ。法的整備が必要かもしれないが、ネット社会においてあるべき法整備ではないだろうか。

そして何よりも、偏向報道に毒されない情報発信チャネルが確保され、支持率等の指標もより正確な数値分析が可能となるので次なる施策判断の基盤ともできるだろう。

投票のセキュリティ確保

米国大統領選挙にて、バイデンジャンプと呼ばれる事象が発生し、不正投票疑惑が囁かれた。筆者も当時論考しているが、本当に不正があったかどうかは知り得る訳は無いが、確実に言える事は、『やる気になればいくらでも不正が可能な投票であった』事である。そして、発生しているデータを自然発生の条件と照らし合わせて統計的に不自然な部分が否定できない事も示した。

だからと言って、不正があったとは言わない。しかし、不正が出来ない様に制度改革、仕組み改善する必要性があると共に、日本の選挙制度ではあり得ないと論じた。ところが、今回の自民党総裁選挙は、同様の疑惑が持てる仕組みであった。そうノンセキュリティの郵便投票だったのだ。

自民党総裁選の党員党友投票で不正があったかどうかは不明である。しかし、不正が起こらない、起こせない仕組みに改善する必要性はあるだろう。

今後、必ずネット投票や郵便投票などに向かう事は間違いないだろう。自民党内でまずはデジタルセキュリティを確保した投票の仕組みを構築すべきだろう。そんな何年かに1回の為に投資をするのかというネガティブ思考ではなく、日本の将来に先駆け先陣を走るデジタル投資として。前述の専門チャネルの認証と連携する形で構築すれば良い。当然、個人認証とする事で、反自民活動家による活動を防ぐ事にも通じる。