IPCCの報告がこの8月に出た。これは第1部会報告と呼ばれるもので、地球温暖化の科学的知見についてまとめたものだ。何度かに分けて、気になった論点をまとめてゆこう。
今回からIPCC報告の冒頭にある「政策決定者向け要約」を見てみよう。
まず冒頭を抜粋してみよう。
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以下、延々と続くが、省略。
「広範囲かつ急速な変化」などと、おどろおどろしい言葉が並んでいるが、「針小棒大」の極みだ。
CO2濃度が江戸時代末期と比較して増加し、気温が約1℃上がったという。だが、それをさも一大事のように大げさに言い過ぎだ。
もとよりCO2濃度が増えたこと自体は、植物がよく育つようになった便益こそあれ、悪いことは何もない。
何か問題があったとすれば気温上昇の方だが、こちらも何の問題もない。100年で1℃の気温といえば、子供が大人になるまでの時間として30年間程度で見るならば、0.3℃程度の気温上昇ということになるが、これは、ふつう人間は感じることすら出来ない。
猛暑が増えたとすれば自然変動や都市熱のせいである。地球温暖化の寄与はあるにしてもごく僅かだ(拙稿「地球温暖化のファクトフルネス」)。
のみならず、池田信夫氏が以前紹介した論文にあったように、いまの世界では暑さで亡くなるよりも寒さで亡くなる人の方が遥かに多い。そのため、過去の地球温暖化の帰結としては、世界の人間の寿命は伸びた(図1)。寒さによる超過死亡率は減少し、暑さによる超過死亡率の増加を上回ったのだ。
この間の地球の気温上昇は0.26℃。A アメリカ, B 欧州, C アフリカ, Dアジア, E オセアニア。赤が暑さによる超過死亡率、青が寒さによる超過死亡率。黒は両者の合計。期間を2000-2003(基準期間)、2004-2007、2008-2011、2012-2015、2016-2019の5つに分けている。
図1を見ると、殆どの地域で、寒さによる超過死亡率(青)が大きく減少していて、暑さによる超過死亡率(赤)の増加を上回り、合計(黒)では大きく死亡率が減少している。
これは日本でも同じことで、地球温暖化によって寿命は伸びている(図2)。
図2を見ると、日本は緑色になっていて、死亡率が減少していることが読み取れる。我々は温暖化のお陰で少しばかり長生きしている!
地球の気温は感じることも出来ないぐらいゆっくりと上昇したが、人類を脅かすような「広範囲かつ急速な変化」などという程のことは起きていない。
余談。因みに図1と図2、よく見ると面白いことがいろいろ。
- インド(Southern Asia)はこの間死亡率が増えている。じつはこの間インドは寒くなっている。そのせいで、地球温暖化の恩恵に預かり損ねた。
- 東南アジアで特に死亡率が激減している。暑いところは気温が上がったら死亡率が上がり易いかといったらそうではなかった。暑さに慣れているからだろうか。
- 反対に、暑さによる死亡率が増えているのは欧州とオーストラリア。白人は暑さに弱いのか、はたまた生活習慣の違いか。そういえば、欧米に行くと家にエアコンが無かったり、大した暑さでもないのに大汗をかいていたり、飛行機は凍えるように寒かったりする。
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1つの報告書が出たということは、議論の終わりではなく、始まりに過ぎない。次回以降も、あれこれ論点を取り上げてゆこう。
次回:「IPCC報告の論点㉑」に続く
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