ブラジルの来年の大統領選挙に向けて既に動きが始まっている。有権者は、ボルソナロ大統領でもない、ルラ元大統領でもない、第3勢力の候補者を探している。
中道派政党が独自の候補者を擁立させたいと望んでいる
世論調査機関ダタフォーリャ(Datafolha)が9月に発表したところによると、決戦投票でルラ元大統領が56%に対しボルソナロ大統領が31%という予測を出している。(9月23日付「エル・パイス」から引用)。
ところが、ボルソナロ大統領にもルラ元大統領にも票を入れたくない有権者がおよそ25%いるとされている。そのような中、中道派の主要7政党の間でまとまってひとり候補者を擁立させたいと望んでいるが、現在までそれがまとまっていない。
その中でもカルドッソ氏を大統領に輩出させた中道派の中核となるべき社会民主党(PSDB)が内部で意見が分かれており、他の中道政党を引き付けられないでいる。また、民主党(DEM)は内部でボルソナロ氏の支持派と不支持派で分裂している。
第3勢力の候補者の選択が決まりそうにない
当初、中道政党による第3勢力として一つに纏め上げる候補者にテレビ司会者のルチアノ・フック氏を擁立させたい意向をもっていた。ところが、同氏が立候補することを辞退した。また、マガジン・ルイザのチェーンショップを展開をしているルイザ・トゥラハノ氏に打診してみたが、彼女の方から政治にはタッチしたくないとして断られた。ということで中道政党の間で候補者を擁立できないでいるというのが現状だ。
第3勢力の候補者として政治家に目を向けると、サンパウロ州のジョアン・ドリア州知事(PSDB)、リオグランデ・ド・スル州のエドゥアルド・レイテ州知事、エンリケ・マンデタ元保健相(DEM)、そしてルラ政権時に閣僚を務めたシロ・ゴメス(PDT)の4人が挙げられている。(9月12日付「エル・パイス」から引用)。
シロ・ゴメス氏の場合は2018年の大統領選挙に立候補して3位となった。しかし、彼の政党PDTは現在ルラ氏を支持する方向に動いている。
またダタフォーリャの調査で望まない候補者がリストアップされている。それによると、ボルソナロ氏(59%)、ルラ氏(38%)、ドリア氏(37%)ということで、かなり高い率でこの3人の候補者を拒否している有権者が多くいるということだ。また十分に知られていないレイテ氏の場合は18%となっている。(9月23日付の同上エル・パイス」から引用)。
企業家がボルソナロ大統領への支持に動き始めている
9月24日付の「ラ・ポリティカ・オンライン」はIPECが1回目の投票結果を予測している。それによると、ルラ氏(48%)、ボルソナロ氏(23%)、シロ・ゴメス氏(8%)、ドリア氏(3%)、マンデタ氏(3%)という予測をしている。何れの候補者も50%に達していないということで上位2者の決戦投票となる。その場合はルラ氏の勝利が濃厚というのが現在の予測である。
このような予測から、ルラ氏の大統領復帰を望まないことと、第3勢力による候補者の擁立は難しいと見ている企業家の間ではボルソナロ氏を支持する動き強まっている。
企業家の間ではなぜルラ氏の再登場を望まないのかとについて理解できないとしているのがブラジルの政治評論家アントニオ・マリアノ氏だ。というのも、企業はルラ大統領政権時に彼から差別は受けておらず寧ろ好意的であった、と同氏は指摘している。ルラ氏が労働者党出身者で左派だという政治イデオロギーが特にサンパウロのエリート企業家の間で「彼は左派だ」というのが先入観となって彼を敬遠しているようだとマリアノ氏は指摘している。
ボルソナロ大統領が続投することになると、米国のバイデン政権とはアマゾンの環境保護問題などから米国との関係に躓きを見せる可能性がある。その一方で、ブラジルにとって最も重要なアルゼンチンとの関係が2023年以後回復する可能性がある。同年にアルゼンチン大統領選挙が予定されているが、現時点の予測ではフェルナンデス大統領が敗退して右寄りの政権が復活する可能性があるからだ。