菅総理の望んだ社会

10月4日、組閣が行われ菅総理が退陣することになります。この1年間、新型コロナウイルス対策以外の施策がどうであったか、振り返ることは大切だと思います。とにかく1年と言う短い期間にも関わらず、政策的に果たした役割は大きいと思うのです。

先ずは、デジタル庁の創設と行政のデジタル化の推進です。この短期間にデジタル庁を創設出来たことは、ある意味奇跡に近と思います。菅総理と自民党きってのIT通である平井卓也デジタル大臣とのコラボレーションが、導いたと言えるでしょう。

日本人1人あたりの生産性は低く、行政の効率は悪い。日本経済も過去と比較すれば成長しているけれど、主要先進国はこの30年間に大きな変貌を遂げている。原因は「デジタル敗戦」と平井デジタル相が言っているように、IT&デジタル化の遅れです。IT基本が出来て、光ファイバーを日本中に張り巡らせITインフラを整えたまでは良かったのですが、その後にBPRセットのデジタル化が進まなかった事、例外措置を認め過ぎた事、省庁・自治体の骨抜き対応を放置した事、理由は多々ありますが、現実が全てを物語っています。

菅総理のデジタル改革は、司令塔を1つにして、アジャイル型で、コストが低くて便利なサービスを国民に提供する、その入り口に立てたのだと思います。デジタル庁が出来たから全てが、解決するという分ではありませんが、出来なければ前に進めないことも事実です。僕も自民党IT戦略特命委員会の事務局長として、またIT担当の内閣府副大臣として、IT政策を担ってきたからこそ、菅総理のデジタル庁創設は、日本にとって大きな節目の1つだと思います。自治体に至るまで、この思いが伝わり、真のデジタル国家日本が確立されることを望んでいます。

温暖化ガス排出を2050年に実質ゼロという、目標年度を明確にして、脱炭素に振り切ったのも、菅総理の功績の1つだと思います。エネルギー政策は国家の在り方そのものです。エネルギーは利害関係者が多く、皆の利害を調整してから前に進もうと思っても茨の道しか残されません。二酸化炭素削減に数字目標を掲げて推進する、原子力発電についても、新設・リプレースについて言及せず、特に再生可能エネルギー、水素エネルギーを電源構成において、重要視したことは大きな1歩です。

衆議院議員時代に、水素エネルギー社会推進議員連盟、再生可能エネルギー推進議員連盟を立ち上げ、実務を担う事務局長を担っていた僕からすると、菅総理の決断は思い切った決断と言うしかありません。次世代にとって、この決断は必ずや大きな意味を持つと思います。

一方で、これまで課題として残されていた福島第一原子力発電所の処理水の海洋放出を決定したことも大きな決断だったと思います。いつまでも、処理水を放置したままにするわけにもいきません。敵を作っても、誰かが方針を決めて、動き出さないと何も解決出来ません。

菅総理の在任期間1年、総理大臣も長くやることだけが全てではありません。例え、在任期間が短くとも、成しえたことが将来の日本にとって大切なことであれば、総理になった意味は十分あると思います。デジタル、マイナンバー、再エネ、水素、菅総理が取り組んだ施策は、僕が衆議院議員時代にメインで担っていたことであり、正直、菅総理の下で国会議員として取り組んでみたかったです。

新型コロナウイルス対策に明け暮れた1年であったと思いますが、これまで中途半端であった施策に息吹を与えた1年であったと思います。横浜市会議員から総理になるのは、菅総理が最初で最後かもしれません。菅総理、お疲れ様でした。


編集部より:この記事は多摩大学ルール形成戦略研究所客員教授、福田峰之氏(元内閣府副大臣、前衆議院議員)のブログ 2021年10月4日の記事を転載しました。オリジナル記事をお読みになりたい方は、福田峰之オフィシャルブログ「政治の時間」をご覧ください。