日本にまだお金はあるのか?

日本にまだお金はあるのか?「反緊縮↔緊縮」「積極財政↔財政保守」って結局なんなのという話

こんにちは、音喜多駿(参議院議員 / 東京都選出)です。

先日、ついにYouTubeチャンネル登録者数が3万人を突破しました!

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今日はこちらの動画でもお話をした「財政(マクロ経済)」の話をざっくりとですが書きたいと思います。

kazuma seki/iStock

まず私の立場から申し上げますと、ガチガチの財政保守派(タカ派)から、積極財政をかなりのレベルまで容認するようになった転向派です。

特に今のように長期不況に加えてコロナ禍が重なった状況では、積極財政+金融緩和をどんどん続けるべき。財政規律そのものを放棄して良いとはまったく思わないけど、財政健全化の気配も当面の間は封印すべし

というのが私の現時点でのスタンス。

そもそもリバタリアン(自由主義者)は小さな政府を追い求めるがゆえに財政タカ派が多く、また通貨発行権を持たない地方自治体の議会出身者は、基本的な財政観として保守派・タカ派になるケースが多い気がします。

ここで大まかな区分をしておきますと、

①財政保守派(タカ派、規律派、古典派)
→財政収支を短期間(最短で単年度)で均衡させるべきと考え、財政赤字に対して厳しい態度で臨む
②積極財政派(ハト派、ケインズ派)
→財政収支は長期間(場合によっては超長期間)で均衡すれば良いと考え、赤字財政を一定程度許容する
③ウルトラ積極財政派(フクロウ派、MMT)
→そもそも財政収支など均衡する必要がなく、赤字は悪いことでもなんでもなく、何らかの不都合が起きるまでお金を刷り続ければ良いと考えている

という感じになりまして、最近では②と③の立場が「反緊縮派」と呼ばれ、①は「緊縮派」に分類されます。

端的に言えば、緊縮か反緊縮かを分ける境目は「時間軸」に対する考え方の違いであると言えますね。

「国がどこまで借金をできるのか・するべきなのか(しないべきか)」というのは、今にいたるまで経済学会で長く長く議論されてきた深遠なテーマです。

家計の感覚で言えば赤字や借金は無いに越したことはないし、下手に借金を重ねれれば破産にまっしぐらになります。

しかしながら、通貨発行権・徴税権を持ち、寿命も人より遥かに長い「国家」となると、ことはそう単純ではありません。

だからこそ専門家同士でも激しい議論があったわけですが、2000年代に入り、特にリーマンショックやギリシャ危機以降になって、どうやらこの財政収支を均衡させるべきスパンがこれまで考えていたより遥かに長いらしいことがわかってきた

だって、日本を含めていろいろな国家が財政赤字を拡大させたのに、それまでの経済学の常識を覆して、金利もインフレ率も低位に張り付いたまま上昇する気配がないのですから。

それにもかかわらず、短期間で財政支出を均衡させ(プライマリーバランスを黒字化させて)、とにかく借金をしない・早く返すことを重視すると、むしろ不況が拡大・長期化して結果として財政にマイナスの影響のほうが大きくなる

とりわけコロナ禍で全世界が同時に財政支出(赤字)を拡大するような状況では、大胆な財政支出をしても国家財政への信任が失われる可能性はごくごく低い。

よって少なくとも現状においては、積極財政に舵を切るべきだ(反緊縮路線を取るべきだ)という結論が経済学的には徐々に導き出されつつあるわけですね。

これ書き出すと余裕で1万文字くらい費やさないと、色々と誤解を招くなと書きながら思いました(苦笑)。

でもめげずにもうちょっと書く。

そして現状において重要なことは、「今は積極財政・財政支出をするけど、どうせすぐに増税して取り返すんでしょう」と市場に思われないことです。

短期間で財政支出をペイさせようと政府が考えている(リカーディアン型という)場合、結局は市場はそのように「未来予測」をして動くので、お金が回らず景気が回復しません。

なので、少なくとも一定の条件(インフレ率や賃金上昇)が達成されるまでは、増税などで財政均衡を「目指さない」姿勢(非リカーディアン型)を示し、市場の期待を損ねないことが必要になります。

そう、この真逆をやっているのが今の岸田内閣なわけで、「積極財政」と言いながらすでに金融所得増税を打ち出し始めるなど、船出から座礁をしている感じが否めません。

一方で、やはり「財政均衡などしなくて良いのだ」「国家がお金を刷れば刷るほど、人々は豊かになるのだ」というウルトラ財政積極派(MMT)のような考え方は暴論だと私は思います。

ウルトラ積極財政派は「市場(マーケット心理)」を極めて軽視する傾向にあるのですが、財政規律を持たずに無尽蔵に支出を増やす政府・国家に対して人々が信任を失えば、あっという間に国債は投げ売りされていわゆる破綻状態に突入する可能性は決して低くありません。

財政支出は借金が発散(恒常的な拡大・不安定化)をしない程度に留めながら(ドーマー条件)、短期的な収支均衡は無理に求めず、長期的にみて好景気のときに健全化させていく。

長期とはいえ財政規律を保つためには、生産性を高めて税収を増やす努力は必ず必要になりますから、財政支出・マクロ経済だけで問題が解決することはありえず、構造改革・ミクロ経済政策を同時に進めて行くことは必須となるはずです。

なお「積極財政」のやり方にはいろいろな方法があり、大胆な減税というのもそのメニューに当然のことながら含まれるので、財政支出の拡大が即座に「大きな政府」になるとは限らないことも申し添えていきます。

現在の私の考えとしては、減税や社会保険料減免を中心とする政府のスリム化路線による積極財政で需要不足を解消しつつ、足元では構造改革を断行して労働生産性・経済成長率を高め、長期的なスパンで財政健全化を図っていくというビジョンを描いているところです。

以上は野口旭先生の「反緊縮の経済学」を参考にしながら、私の現時点での考え方を整理してみたものです。

「反緊縮の経済学」は新書レベルではないガチ本で4,000円しますが、古典派~ケイジアンの変遷~MMTの台頭(?)まで網羅した経済史としても非常に勉強になるので、マクロ経済に興味のある方はぜひお手に取って見て下さい。

妙な「真実に目覚める」系の本や動画よりこっちを読もう!私は夏から読み始めて、読み終わる頃には秋を迎えましたが…。。

というわけで岸田内閣、私もあくまで根っこは小さな政府+財政規律重視派ですけど、今は積極財政にアクセルで共闘できるところは共闘いたしましょう!

ラディッツ(サイヤ人)に立ち向かうために一時的に手を組んだ、孫悟空とピッコロ的なイメージで。その共闘がどこまで続くかは敵(経済状況・不況)次第…?!

上念司チャンネルでもマクロ経済の話をしています。

それでは、また明日。


編集部より:この記事は、参議院議員、音喜多駿氏(東京選挙区、日本維新の会)のブログ2021年10月5日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は音喜多駿ブログをご覧ください。