なぜノーベル物理学賞の眞鍋淑郎さんはアメリカで研究を続けているのか

眞鍋淑郎さんのノーベル物理学賞受賞に祝意!と問題提起。

昨日、今年のノーベル物理学賞について、アメリカ・プリンストン大の真鍋淑郎さんの受賞が決定しました。

おめでとうございます!

真鍋さんの研究してきた内容は、「温室効果ガスの増加が気候にどう影響するかを予測する」というもので、長期的で複雑、予測のつかない気候変動に関する研究をリードしてきたことが評価されたそうです。

ノーベル賞と言えば、ダイナマイトを発明したことで知られるアルフレッド・ノーベルの遺言に基づいて、物理学、化学、生理学・医学、文学、平和の各分野で「人類に最大の貢献をもたらした人々」に贈られる賞とされています。

真鍋さんのコメントで印象的なのは、「好奇心」ではないでしょうか。

研究を始めたころは、こんな大きな結果を生むとは想像していなかった。好奇心が原動力になった。後に大きな影響を与える大発見は、研究を始めた時にはその貢献の重要さに誰も気付かないものだと思う。

「好奇心」とは、珍しいことや未知のことに興味をもつ心などを指すそうですが、

好きなことに時間を忘れてのめりこむ力、探究する力を伸ばし続けることが偉大な成果を残すこともあると改めて感じる機会となりました。

一方で、真鍋さんはアメリカ国籍を取得して、アメリカの大学で研究を続けています。

研究を続けるには、それだけお金がかかるのも事実であり、大学などの研究環境に対する公的予算や民間寄付の多寡は重要な指標になります。

例えば、東京大学の予算は年間2500億円程度といわれますが、イギリスのオックスフォード大学では1兆円を越えるとも言われます。

国別の研究開発費予算をみると、アメリカや中国は日本の3倍を超えるとされています。

真鍋さんのノーベル賞受賞は喜ばしいことですが、一方で、日本の研究環境について見直すべき部分があることに気づかされます。

ちなみに、東京都では2040年代のビジョンを描いた「『未来の東京』戦略」において、都立大学でノーベル賞クラスの研究の実現をうたっています。都立大学の年間予算は200億円程度なので、予算規模だけでは不足と言わざるを得ません。

ぜひ、目標の実現に資する予算と取組を期待するところです。

また、

研究費を取るには実用的な問題を選ぶということになっているが、やはり本当の研究の醍醐味(だいごみ)は好奇心。

と言ったお話もあり、日本とアメリカの研究に対する価値の置き方、評価基準の違いも気付かされます。

イノベーションというと、日本では経済価値を伴うものと考えがちですが、アメリカでは新しい知識そのものを指し、それを活用して経済価値を生み出す部分とは切り分けているのかもしれませんね。

眞鍋さんの生き方から学ぶべきことがたくさんあります。改めて、おめでとうございます!

眞鍋淑郎氏 前列右から2人目 Wikipediaより