なぜモデルナの接種後死亡者は少ないのか?(後編)

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後編では、自作のデータと厚労省のデータとの間で、なぜ差異が生じたのかについて考察してみます。

前編はこちら

自作データは、厚労省で公開されている接種後死亡者データ(ファイザーモデルナ)と年齢別接種回数のデータを用いて集計しました。発生確率は、100万人接種あたりの接種後死亡者人数です。別の言い方をしますと、発生確率に100万を掛けた数値が記載されています。

 

以下は、厚労省が公開している表です。

自作の表では、接種者人数を用いているのに対して、厚労省の表では接種回数を用いて計算しています。まず、この相違について考えてみます。厚労省の「年齢・性別別の推定接種回数について」では、1回目・2回目接種回数の合計と2回目接種の回数が記載されています。

1回目・2回目接種回数の合計 = [2回接種した人の1回目] + [2回接種した人の2回目] + [1回接種した人の1回目]

ですので、

接種者人数 = [1回目・2回目接種回数の合計] - [2回接種の回数]

となります。

計算してみますと、接種回数の合計は接種者人数の、1.4倍~2.0倍でした。これは、接種者人数で計算した時の発生確率は、接種回数で計算したそれの1.4倍~2.0倍となることを意味しています。つまり、表の数値を比較する時には、1.4倍~2.0倍の補正が必要なわけです。

厚労省の表では、頻度(発生確率)は、医療機関報告と製造販売業者報告に分けられて記載されています。この2つのデータを足して前述の補正をしてみましたが、まだ数値が合いません。詳細に分析した結果、医療機関報告と製造販売業者報告の中には、重複報告例が存在することが判明しました。合計数より重複数を引いた数値を、表の右側に追加するべきです。

多くの人にとって興味あるデータは、重複例を含まない接種後死亡者数の発生確率です。そのデータが記載されていない厚労省の表は、あまり出来のよい表とは言えません。

まとめ

  • 厚労省の表では、接種回数を用いて計算している。接種人数で計算すると、死亡報告頻度(発生確率)は、1.4倍~2.0倍となる。
  • 医療機関報告と製造販売業者報告の中には、重複報告例が存在する。
  • そのため、厚労省の表からは接種後死亡者の正しい発生確率を知ることは出来ない。