新型コロナの重症化率はワクチン接種の6か月後に2.8倍になると発表

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新型コロナ感染症の重症化率はmRNAワクチン接種の6か月後に2.8倍になるとする論文(New England Journal of Medicine)が発表されました。つまり、ワクチンの重症化予防効果は、接種後6か月で大幅に低下する可能性があるということです。これまで、重症化予防効果は発症予防効果より長く持続すると考えられてきましたので、この論文は衝撃的です。

論文より重要な部分を引用してみます。

The rate of severe Covid-19 among persons 60 years of age or older who were fully vaccinated in January was 0.34 cases per 1000 persons over the study period and decreased to 0.26 cases per 1000 persons among those who were fully vaccinated in February, 0.15 cases per 1000 persons fully vaccinated in March, and 0.12 cases per 1000 persons fully vaccinated in the April-May period. The numbers of severe cases in the younger age groups were too small for conclusions to be drawn.

分かりやすくまとめてみます。

60歳以上の人(イスラエル)において、

  • 4月~5月に接種した人の7月の重症化率:0.12人/1000人
  • 3月に接種した人の7月の重症化率:0.15人/1000人
  • 2月に接種した人の7月の重症化率:0.26人/1000人
  • 1月に接種した人の7月の重症化率:0.34人/1000人

接種からの間隔があくほど、重症化率が上昇していきます。6か月後の重症化率は、2~3か月後の2.8倍となります。

ただし、論文内で指摘されていますが、アルファ株からデルタ株に変化した影響と、ワクチンの効果減弱の影響とは、切り分けることができていないという問題があります。したがって、日本の第5波(デルタ株)の後にくる第6波(デルタ株あるいは新変異株)で、必ず重症化率が上昇するとは言えません。あくまでも可能性があるというだけです。

日本でも同様に重症化率が上昇するのであれば、以前の解説において、私が予測した第6波の致死率を変更する必要がでてきます。以前ともう一つ異なる点は、ブースター接種の時期を自治体の裁量により、8か月後より6か月後に変更が可能になったという点です。ただ、突然の変更に自治体は困惑
しており、どのくらいの自治体で6か月後に変更されるかは未知数です。

その後「地域の判断に応じ前倒し認めるものではない」と、軌道修正されました。地域の感染状況やクラスターの発生など非常に特殊な状況になった時に限り、6か月後の接種を認めることになったようです。

第6波の前兆が確認できたら、6か月後の接種を認めるという方法は、基本的に間違っていると私は考えます。その方針で、ブースター接種を実施した場合は、下に提示するイスラエルと同じような経過をたどることが予想されます。

数値の計算方法は以前の解説を参照

イスラエルの直近の波では、重症化率は上昇しましたが、致死率は低く保てました。イスラエルの致死率は、日本の第5波や韓国の致死率より低くなっています。これは、遅れて開始したブースター接種の効果と医療機関の奮闘により、重症者の死亡を防いだためと推測されます。ただし、感染率が上昇したため、死亡率が上昇してしまいました。

日本の場合、第6波で重症化率が2.8倍になり、且つブースター接種が遅れた場合、医療機関の奮闘によりイスラエルのように重症者の死亡を阻止できるのか、甚だ不安があります。第5波で既に医療崩壊が生じていましたから、このままでは第6波で更に大きな医療崩壊が生じる危険があります。

高齢者のブースター接種は、全面的に6か月後に前倒しするべきと、私は考えます。重症化率が必ず高まるわけではありませんが、そのリスクが発表された以上、対策を講じるのは当然のことです。第6波の前兆を確認してからブースター接種の前倒しを認めるという方法では、11月~12月に第6波が始まった場合、大規模な医療崩壊が生じ、第5波の時より死亡者(コロナ死+医療逼迫死)が増加することが予想されます。

高齢者のブースター接種が開始されますと、再び接種後死亡者が増加すると推測されます。厚労省は、ほとんどの因果関係は不明という見解です。私は、この見解には納得していません。トロッコ問題の観点から、ある程度までの接種後死亡者がでるのは、やむを得ないと、私は考えています。ただし、ブースター接種の時期を間違えたため、接種後死亡者の犠牲が無駄になってしまうことは、決して許される話ではありません。

【補足】
韓国では、高齢者のブースター接種を6か月後より4か月後に早めることが決定されました。確かに6か月後でも、まだ遅いのです。以前の私の分析では、接種1回目から6か月後が望ましいという結論でした。接種2回目からでは、5か月と1週間後となります。

【おまけ】

これは、厚労省が公開している表です。この表の全年齢の致死率が0.15%となっていますが、少し低すぎる気がしましたので確認してみました。全年齢の死亡者数209人が間違っています。Worldometerで確認しますと、7月の死亡者は444人です。厚労省のデータでは409人です。Worldometerのデータ(死亡者数、感染者数)で計算しますと、7月の致死率は0.38%となります。

この表の制作者は、数値に問題があることの自覚があったようで、表の下に、「死亡の入力率は7割程度であることに留意が必要」と但し書きが付いています。ただ、致死率は倍以上異なり、誤解を招きやすいため、公開を中止するか訂正するべきと、私は思います。