カタルーニャ州をが独立運動に明け暮れているうちにマドリード州が経済成長で追い越す

ESPAÑA, MADRID ADELANTA A CATALUNYA.22-11-2021.

マドリード州が独立運動に明け暮れるカタルーニャ州を経済成長で追い越した。

カタルーニャが独立を主張すればその経済的恩恵はマドリードに向かう

スペインを代表する2大都市マドリードとバルセロナ。カタルーニャで独立への動きが活発になる以前はバルセロナが国際的にも知名度が高く、スペインを代表する都市として存在していた。特に、1992年のバルセロナオリンピックの開催でバルセロナは世界を代表する都市のひとつにまで成長した。

ところが、2012年頃からカタルーニャ州の独立へのプロセスが盛んに取り上げられるようになってからはカタルーニャの州民は独立賛成派と反対派に二分し、企業も将来への不安を抱くようになった。

その結果、現在のカタルーニャはマドリードと比較して多くの面で後退を余儀なくさせられている。カタルーニャが独立を主張すればするほど、その恩恵を受けるのはマドリードだ。

その前例は カナダのケベック州に見ることができる。同州の中心都市モントリオールは1980年代から90年代に続いた独立運動の影響で経済の発展は大きく後退。それが現在も続いている。そしてその恩恵を受けてたのがトロントである。

 今ではスペインへの投資はカタルーニャではなくマドリードとなっている

カタルーニャの独立への動きが活発になってから逆にマドリードの存在が見直されるようになっている。解放された自治州でしかも多元性のある州としての地位を固めつつある。それは正に独立賛成派と反対派で二分したカタルーニャの閉鎖的な社会とは全く対照的な存在となっている。しかもカタルーニャは全てが停滞し、紛争を巻き起こしている。

例えば、マドリードでは31.5%の州民が多くの市民に信頼を寄せているのに対しカタルーニャではそのパーセンテージは13.8%という調査結果が出ている。同様にマドリードの州民はカタルーニャのそれよりも外国人への信頼度が4倍も高いとされている。(11月10日付「リブレ・メルカード」から引用)。

ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのアンドレス・ロドリゲスとダニエル・ハーディーの両氏が指摘しているのは、「スペインに投資する際に伝統的にスペインへの入口であり、そして開放的で多様性溢れる場所としてバルセロナが選ばれていた。ところが、これまでのイメージとは異なり事態は容易ではなくなっている」「今日、マドリードの方がより開放的で平穏であり投資活動への干渉がない」ということだ。また「マドリードはすべての経済指標においてバルセロナを追い越した」と言及している。(同上紙より引用)。

マドリードのGDPもカタルーニャのそれを追い越した

マドリードがカタルーニャを追い越した一つの例として2000年だとカタルーニャはマドリードよりもGDPにおいて80億ユーロ(9600億円)ほど引き離していた。ところが、この差は2008年から2012年の間に埋まってしまい、2012年にはマドリードはカタルーニャを追い越した。

国立統計局によると、2018年のマドリードのGDPは2307億9400万ユーロ(27兆7000億円)に対しカタルーニャは2286億8200万ユーロ(27兆4400億円)となっている。それはスペイン全体のGDPにおいてマドリードが19.2%を占め、カタルーニャは19%となっている。2000年だとカタルーニャが18.9%に対しマドリードは17.7%であった。

一方、州民一人当たりの所得を見ると、マドリードが2000年の時点で2000ユーロの差をつけていたのが、2018年になるとその差は4615ユーロまでその差は広がっている。(以上、同上紙から引用)。(2019年12月26日付「リベルター・ディヒタル」から引用)。

外国からの投資はマドリードに集中

外国からの投資に目を向けると、2019年3月20日付の「リブレ・メルカード」が両州の間で顕著な差を指摘している。

それによると、2018年のマドリードへの外国からの投資は399億2540万ユーロ(4兆7910億円)ということで、それはスペインに外国から投資された内の85.3%を占めることになった。一方、同年のカタルーニャへの投資は僅かに6.4%を占めるだけになっていた。2019年というのはカタルーニャの独立気運が高まっていた時であった。

外国からの投資

競争力という面についてだと、EU全体を100とした場合にマドリードは117.5、カタルーニャは88.6となっている。トップはルクセンブルクの156.6.それに続いてオランダが144.9となっている。

競争力

更に、マドリードが成長している背景には税負担率がカタルーニャに比べ非常に低いということである。EUの平均率を100とした場合にマドリードは87.6、一方のカタルーニャはEUで最も高い134.5となっている。カタルーニャに次いで高いのはイタリアの132.2となっている。一番低いのはエストニアの46.9だ。

カタルーニャは巨額の赤字財政を抱えており、あらゆるものを徴税の対象にしている。

税負担がマドリードは低いということがプラス影響して地下経済のGDPに占める割合が16.2%となっている。スペイン全体では23.1%、カタルーニャは23%。(4月16日付「リブレ・メルカド」から引用)。

独立を警戒してカタルーニャから企業が去っている

またカタルーニャの独立を警戒して多くの企業が本社を州外に移した。その恩恵を最も受けたのがマドリードだ。495社がカタルーニャからマドリードに本社を移している。(11月2日付「リブレ・メルカード」から引用)。

カタルーニャの州知事の年収はスペインの首相よりも上

カタルーニャは財政危機であり経済も後退している。そのような中にあってカタルーニャ州知事はスペインの自治州知事の中で最も高い年収13万2856ユーロ(1594万円)を得ている。マドリードの州知事は10万3090ユーロ(1237万円)が年収だ。

因みに、スペインの首相の年収は8万5608ユーロ(1028万円)ということで、上述3つの自治州州知事よりも少ないし、EUの加盟国の首相の中でも低いランクにある。

カタルーニャは独立への夢を捨てない限り経済の発展はないことを承知しておくべきであろう。