専門家は恣意的な判断をしてはならない

鈴村 泰

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7月、韓国において、心筋炎死亡例(20代男性)とワクチン接種との因果関係が、初めて公式に認められました。ところが、8月の心筋炎死亡例(31歳)に対しては、なぜか因果関係が認められませんでした。遺族は怒り心頭で、再審査請求や行政訴訟を検討しているとの話です。明らかな恣意的判断であり、遺族の怒りは至極もっともです。

因果関係は、予め定めておいた基準に基づいて認定されなければなりません。恣意的に判断しては、だめなのです。

心筋炎は、アメリカのVSDのデータ分析で、ワクチンとの因果関係が明らかとなりました。厚労省Webサイト、より資料を引用してみます。

この資料が示していることは、

  • 12歳~39歳の接種者で、各期間の心筋炎の発生率を比較した。
  • 接種回数2回の時、【接種後0日~21日の期間】と【接種後22日~42日の期間】とにおいて、有意水準1%で統計上有意差が認められた。
  • 接種回数1回の時、【接種後0日~7日の期間】と【接種後22日~42日の期間】とにおいて、有意水準5%で統計上有意差が認められた。

ということです。

現時点で、新型コロナに特異的な心筋炎の所見は報告されていません。したがって、臨床検査所見や病理解剖所見より、因果関係を認定することは出来ません。因果関係は統計的分析より推測するしかありません。日本にはVSDに相当するシステムは存在しませんので、VSDの分析結果を流用することになります。

以上より、認定基準を考えてみます。

  1. 12歳~39歳である。
  2. 心筋炎が、接種回数2回の時、接種後21日以内に発症している。接種回数1回の時、接種後7日以内に発症している。
  3. 臨床検査所見、病理解剖所見より心筋炎の診断が確定している。
  4. 他の原因で心筋炎が発症したことを示す所見は認められない。

以上の4つの基準を満たせば、心筋炎とワクチン接種との因果関係を認定してよいと考えられます。心筋炎発症後に死亡したのであれば、死亡とワクチン接種との因果関係も当然認められることになります。

現時点で確認されている50歳未満の心筋炎死亡者のリストを見てみます。

認定基準に照らし合わせますと、6例が認定されることになります。症例8が某野球選手ですが、残念ながら今回の基準では認定されません。因果関係が認められれば、遺族に4420万円が支給されます。遺族にとっては、因果関係が認められるかどうかは、死活問題です。したがって、因果関係を恣意的に判断することは、決して許されることではないのです。