今、アフリカでおきている不思議な現象

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まず、アフリカ6か国の新型コロナ感染症の感染率、死亡率、致死率の表を御覧ください。

感染率は、10万人・1日あたりの感染者数です。 死亡率は、10万人・1日あたりの死亡者数です。 期間の設定は、すべての国において、4月1日~11月25日としました。 下の表は、日本を1.0とした時の比率で記載されています。データは、Worldometerより取得しています。

仮に、

A群(青色):アンゴラ、マラウイ、モザンビーク
B群(緑色):南アフリカ、ナミビア、ザンビア

としておきます。

A群の国の感染率は、日本より遥かに低く抑えられています。ワクチン接種率は日本より遥かに低いのに、なぜか感染率は低いのです。B群の国では、ザンビア以外の国の感染率は日本より高くなっています。死亡率は、A群の国では低く、B群の国では高くなっています。致死率は、面白いことに、A群の国とB群の国とでは、あまり差がありません。

データを見て、最初に思いつくことは、PCR検査の実施が不十分なために、A群の国の感染率が低くなったのではないかということです。発展途上国なので、検査の予算が不十分なため、無症状や軽症の感染者の検査ができなかったのでないかという疑惑です。ただし、検査が不十分であった場合には、致死率が非常に高い数値になるはずです。実際には、A群の国の致死率は、B群の国のそれと、ほぼ同じです。したがって、検査が不十分であったため、A群の国の感染率が低くなった可能性は低いと考えられます。

では、なぜA群の国の感染率は不自然なほど低いのか?

種明かしをしますと、A群がイベルメクチン配布国、B群がイベルメクチン非配布国です。配布の有無は、北里研究所の発表データを参考にしました。「投与」ではなく「配布」という用語を使用しているのは、予防的投与をしているからです。予防的投与の方法としては、イベルメクチン18mg錠1週間に1回内服イベルメクチン15mg錠2週間に1回内服など様々な内服方法が提案されているようです。後者の方法は、フィリピンで実施されています。1錠約70円なので、発展途上国でも十分継続可能です。なお、A群の国が、どのような予防投与を行ったのかは、記載がないため不明です。

表のデータから判断しますと、イベルメクチンは治療薬よりも、予防薬として期待できます。1~2週間に1回の内服程度であれば、副作用の生じる確率は、かなり低いと推測されます。また、薬剤の価格が安いことも、重要なことです。いくら優れた薬でも、価格が高過ぎては、発展途上国では使用できません。

イベルメクチンの有効性については、反論もあります。気候の違い、人口密度の違い、検査数が不十分な可能性、流行している他の感染症による影響などが指摘されています。交通手段が乏しいため、人の移動が少ないことが理由の可能性もあります。ただ、それらの反論も推測の域を出ず、イベルメクチンの有効性を否定できているわけではありません。

アフリカには、不自然なほど感染率の低い国が複数存在することは、紛れもない事実です。イベルメクチンが関与していると断定はできませんが、何か必ず理由があるはずです。感染率の低い国には、コロナ対策を考える上で、何か重要なヒントが隠されているように、私には思えます。

イベルメクチンの新型コロナに対する有効性については、現在も議論が続いています。有効だとする論文もあれば、無効だとする論文もあります。私には、どちらが正しいのか、現時点では判断できません。ただ、安価な薬で予防可能なのであれば、発展途上国には大きな福音です。

北里大学では、地道に基礎的および臨床的研究が続けられています。研究を積み重ねていき、イベルメクチンの効果が先進国でも認められるようになることを、個人的には期待しています。