原作は1973年。テレビの「日本沈没」は視聴者に合わせてあまりにもお花畑過ぎもちろん読んでるけど設定がかなり変わったぞ、日本
小松左京の名作SF「日本沈没」です。当然読んでいます。日本SFの名作です。
いままで映画化もされました。これはまだしも草薙君のは駄作との評判。
でね。「日本沈没」はかなりの長編ですが、1964年に執筆が開始され、1972年に完成。今回、ビールデンタイムにテレビドラマ化されたわけですが、まずこのときと現在と日本はどのように変わったのか。データで見てみましょう。
執筆が始まった1967年の日本の人口構成。
最多人口層が15~19歳。70歳以上は国民の3.8%。
でもって、今
最多人口層は団塊の世代の70-74歳と団塊ジュニアの45-49歳。
70歳以上の人口は22.4% 65歳以上にすると人口の3割が高齢者。高齢者人口は3000万人を超えます。
1967年なら、各国とも人口はまだ少ないし、勤勉で働き者の若い国の労働力ならどの国も歓迎して受け入れたでしょう。ただ中国に受け入れられたら1976年までの文革でほとんど殺されたと思うわ。ソ連でも粛正されたはずよね。
日本人を受け入れられない理由 その1
ドラマの中では、受刑者をどうするかという話でもめてました。
しかし日本の受刑者は50000人もいないし、日本の受刑者は真面目で暴動も起こさないから労働力として受け入れる国はいくらでもあると思う。だから問題はそこではない。まずは高齢者の医療費。
日本の医療費は65歳以上は25兆1,584億円で医療費全体の59.7%を使用しています。
ひとりあたりの医療費は65歳未満は18万3,900円、以上は72万7,300円
厚労省のサイトにあるイラスト
こんな感じです。
テレビドラマの中では、世界中の各国が
日本の皆さんを歓迎します
とアピールするシーンが出てくるのだが、はっきりいって日本人1人の医療費は高齢者なら現地の人の年収を超えます。つまり日本と同じ医療を日本と同じコストで受けられるわけがないのです。日本政府はもうなくなるのですから・・・つまり
医療は全額負担です
加えて劇中では「入院中の国民はハイレベルの医療を受けられる国への優先移住を希望します」と厚労省の役人役のウエンツが主張していましたが、どこの国がタダみたいな値段でハイレベルの医療を提供するのか、バカじゃないのか。
日本国民が揃って移住すると、外資系でバリバリ働いていた人を除くと、はじめはみんな仕事なんてできないわけです。働ける人が負担するといういままでのシステムは一瞬にして崩壊する。つまり
医療は全額負担です アゲイン
ということになる。高齢者はほとんど受けいれる国がありません。家や土地は沈むので無価値になり、日本株も無価値になります。日本円も無価値になるので資産を外国のお金や株、不動産で所有していた人以外は無一文になるわけです。
日本人を受け入れられない理由 その2
加えて、年金も0になります。介護もありません。国が代わって給料から社会保険料を天引きする仕組みは、海外各国に移住することで消滅してしまうのです。年金は貯蓄ではなくて下の世代が負担していたと言うことを思い知ります。
繰り返しますが、語学力がなく専門的能力もない日本人はたとえ若くても海外に移住した段階で肉体労働しかできなくなるので、収入はドカンと減り、その国の法律に従って税金を納めることになります。医療制度や社会福祉もその国も制度下におかれます。
金やプラチナ、または海外資産があり、生活力のある日本人は受け入れてもらえますが、その国に貢献できず単に寄生するだけの立場になる人たちは、当然ながら受け入れられないでしょう。テレビでは世界中から「一緒に暮らそうよ」的なメッセージが来ていましたが、なにお花畑みたいなことを言っているのか。
テレビの視聴者は高齢者が主なので、こんな2021バージョンにすると「高齢者を見捨てるのか」という大炎上確実なので一番大事なこの点は完全にスルーされていました。が、最大の問題はここになるでしょう。
日本沈没の際、海外に受け入れられやすい人って?
まあ、ぶっちゃけて本当に日本が沈没するなら、海外に移住できる人はせいぜい数百万人です。95%くらいは日本と一緒に沈まざるを得ない。
海外に受け入れてもらえそうなのは
1 卓越した専門的技術がある
エンジニアはもちろん、ラーメン屋でも寿司屋でも、町工場の職人でも農家でも医者でもいいのです。海外にない技術を持つ人が緊急時ということもあって一番ビザが出やすいでしょう。ただし弁護士は日本の法律しかわからないの文句付けるの一流だから嫌われそう。w
2 海外に資産がある
日本の不動産がいくらあっても無一文。円をいくら持っていても日本沈没が明確になれば外貨と交換できなくなるのであとは仮想通貨とかドル建て預金とか、金とかプラチナを持っている人が資産家です。ほとんどの高齢者はだめですわな
3 外資系企業に勤務している
4 海外に工場や拠点がある日本企業に勤務している
くらいじゃないでしょうか。語学力がある程度では、外国人はみんな母国語が話せるわけでして、そこで肉体労働する程度ならあまり重要視されない。卓越した専門的ななにかがあるのなら逆に語学力はそれほど重要ではないので、あまり関係ないような気がします。もちろんできた方ができないよりはマジです。
5 若い
これ、重要です。50歳以上はよほど資産があったりや能力が高くないと厳しいと思います。
てなわけで、テレビの「日本沈没」は視聴者に合わせてあまりにもお花畑過ぎ、しかも非現実的。一番の非現実は、仮に日本が日本海溝に沈没するとなると、太平洋の沿岸には間違いなく高さ数十メートルくらいの津波が発生します。中国ともとより香港や台湾やロシア沿岸、ハワイも水没するかもしれないのです。そんなときに日本人を受け入れますとか言ってるわけないでしょ。自国民の避難だけで大変な騒ぎですから。
こちらはテレビの原作
いよいよ来週が最終回です。
編集部より:この記事は永江一石氏のブログ「More Access,More Fun!」2021年12月6日の記事より転載させていただきました。