このごろ新刊を読むことが少なくなり、このリストも選ぶのに苦労するようになった。次の10冊は厳密には今年の新刊だけではないが、私が今年読んだ本のベスト10である(書評はリンク先)。
- 櫻川昌哉『バブルの経済理論』
- Graeber & Wengrow: “The Dawn of Everything”
- マカフィー『MORE from LESS 資本主義は脱物質化する』
- Nordhaus: “The Spirit of Green”
- 川口マーン恵美『メルケル 仮面の裏側』
- ビル・ゲイツ『地球の未来のため僕が決断したこと』
- 杉山大志『「脱炭素」は嘘だらけ』
- フォルーハー『邪悪に堕ちたGAFA』
- 北岡伸一『明治維新の意味』
- 大西康之『起業の天才』
経済学の研究は論文ベースになり、専門書が出版されることが少なくなったが、1は久々の収穫。現在のゼロ金利状況をオーソドックスな経済理論で説明している。昨年、急死したグレーバーは、人類学の新しい地平を拓いた。2はその遺作だが、まだこれからという可能性を感じさせるのが惜しまれる。5は16年の政権を終えて引退したメルケルの実像を描いていて、おもしろい。
今年は地球環境問題で、良書が多かった。3は「脱成長」などの社会主義的な議論は誤りで、環境問題を解決するのは資本主義だと説く。4は脱炭素化の解決法として炭素税が合理的であることをていねいに説明している。6はカーボンニュートラル派の立場から、ガソリンに100%課税するなどの案を提示し、負担の問題から逃げていない。7は通俗的な温暖化論の誤りを科学的データで論駁している。