第207回臨時国会における岸田総理の所信表明演説に対する代表質問

総選挙後初となる、岸田総理の所信表明演説に対する各党の代表質問が行われました。

私の代表質問は持ち時間15分ではありましたが、総選挙で掲げた公約を一つでも多く実現するために、岸田総理に直接提案しました。

選挙前の代表質問同様、あいまいな答えが多かったのですが、来週の予算委員会では詰めた議論をしていきたいと思います。

総選挙でいただいた議席と約260万票の比例票の重みを感じて練り上げた質問です。ぜひご一読ください。

第207回国会における岸田内閣総理大臣所信表明演説に対する代表質問

令和3年12月9日
玉木雄一郎(国民民主党・無所属クラブ)

「対決より解決」をつらぬく

国民民主党代表の玉木雄一郎です。私たちは、先の総選挙で国民の皆様の信託を受け、議席を増やすことができました。これからも「改革中道政党」として、国民のためになる政策を提案し「対決より解決」を実践してまいります。

さて、岸田総理の所信表明演説はカタカナだらけでした。「デジタル田園都市スーパーハイウェイ」、「スタートアップ・エコシステム」など抽象的な言葉がたくさん出てくる一方で、馴染みのあるカタカナは出てきませんでした。それは「ガソリン」です。

トリガー条項凍結解除によるガソリン値下げ

私が、ガソリン価格の高騰対策として「トリガー条項」の凍結解除を提案したのは、2か月前の10月12日の代表質問でした。その時も、そして昨日も、総理は「買い控えが起こるからできない」と答弁をされました。しかし、総理、今、「レギュラー満タン」と言えず、2000円分だけ入れてくれ、1000円分だけ入れてくれと言って給油されている方が増えているのをご存知ですか。買いたくても高くて買えないのが現実なのです。私たち国民民主党は、国会の初日に、日本維新の会とともに、ガソリン値下げ法案を提出しました。やはりトリガー条項の凍結解除が必要と考えます。霞が関の論理の代弁ではなく、総理の政治家としての見解を伺います。

日本がリードすべき人権外交

アメリカ、イギリス、オーストラリアそしてカナダが北京オリンピックの外交的ボイコットを表明しました。中国の人権問題を黙認する誤ったメッセージを国際社会に発しないためにも、日本も北京オリンピックの外交的ボイコットを検討すべきです。総理の明確な答弁を求めます。

また、重大な人権侵害に対して出入国制限や資産凍結などの制裁措置を可能とする人権侵害制裁法、いわゆる「マグニツキー法」を持っていないのはG7の中で日本だけです。この人権侵害制裁法を制定するのか、しないのか、岸田内閣の方針を伺います。加えて、企業が人権侵害に加担していないことを担保する「人権デュー・ディリジェンス法」についても制定するのか、しないのか、あわせて伺います。
国民民主党は、公約として「人権外交の推進」を掲げて選挙を戦い、日本版マグニツキー法案と人権デュー・ディリジェンス法案の準備もできています。政府が動かないのであれば国会に提出しますので、議場の同志の皆さん、賛同、よろしくお願いします。

事実上の移民解禁ともいえる特定技能2号の分野拡大

外国人労働者の拡大について伺います。政府は、在留期間に上限がなく、家族の帯同も可能な外国人在留資格「特定技能2号」について、現在の建設、造船の2分野から、宿泊・農業などの全14分野に拡大を検討しているとのことですが、事実ですか。また、この分野の拡大は閣議決定だけで可能で、法改正が不要とのことですが、事実ですか。事実上の移民解禁ともいえる重大な決定を、国会での十分な議論もなく進めることには反対です。特定技能2号の拡大は、法改正時の附帯決議にもあるように、「厳格な運用」が必要だと考えますが、総理の見解を伺います。

オミクロン株にこそデジタル化で対応

新型コロナの変異種であるオミクロン株の対策にこそ、デジタル化を最大限活用すべきです。総理に3つ提案します。

1つ目は、医療機関の持つ情報と行政の持つ情報の連携です。医療情報と行政情報を連携させれば、コロナワクチンの3回目接種について、基礎疾患のある方に優先的に先行して接種券を送付することが可能となります。これはすぐやるべきです。総理の見解を伺います。

2つ目は、「デジタル健康証明書」です。国民民主党は、ワクチン接種だけでなく検査での陰性の両方をQRコードで証明する「デジタル健康証明書」を昨年4月から提案してきました。しかし、政府が11月に発表した「ワクチン・検査パッケージ」では、デジタル化されるのはワクチン接種証明だけ。検査の陰性証明はデジタル化の予定すらありません。ワクチン接種しても感染する「ブレークスルー感染」もある中で、感染拡大防止には定期的な検査がむしろ重要です。検査の陰性証明も速やかにデジタル化すべきと考えますが、総理の見解を伺います。

3つ目は、抗原検査キットのネット販売です。その場で検査結果が出る抗原検査キットは、私が昨年11月の予算委員会で提案してから1年近く経った今年9月末、ようやく一般販売が解禁されました。総理、国が承認した抗原検査キットについては、現在認められている薬局販売だけでなく、ネットでの販売も全面解禁すべきです。これぐらいやりませんか。総理の見解を伺います。

「給料が上がる経済」の実現

総選挙前の代表質問で、「所得倍増」が所信表明演説から消えたことを指摘しましたが、今回の所信にも入っていません。残念です。国民民主党は「給料が上がる経済」を公約に掲げ、物価上昇率が2%なら名目賃金上昇率が4%になるまで、金融緩和と積極財政を継続するとの政策目標を掲げて戦いました。毎年4%賃金が上がれば18年で倍になります。岸田内閣は「所得倍増」を諦めたのでしょうか。いつまでに所得や賃金を倍増させるのか、政策目標を定めるべきです。総理の見解を伺います。

賃金アップには「フレキシキュリティ」が必要

生産性を上げ賃金を上げるためには、成長分野への円滑な労働移動がカギです。労働市場の柔軟性を実現しつつ、手厚い保障によって労働者のくらしを守る、フレキシビリティとセキュリティを組み合わせた「フレキシキュリティ」の概念が重要です。国民民主党は総選挙の公約として、職業訓練や学び直しと、その間の生活保障給付を組み合わせた「求職者ベーシック・インカム制度」を提案しましたが、この「フレキシキュリティ」の必要性について総理の見解を伺います。

現金とクーポンによる10万円給付は見直すべき

18歳以下への10万円給付について伺います。10万円分を全額現金で給付すれば、967億円の事務経費を節約できます。そして967億円あれば、困窮する大学生に10万円を給付する「学生支援緊急給付金」の予算675億を倍にして、支援できる大学生の数を倍にできます。総理、10万円を全額現金で給付して、より多くの人を助けようではありませんか。総理の決断を求めます。

なお、すでに全額現金で給付することを表明した自治体の長も出てきていますが、自治体の判断で全額現金で給付する際に、なんらかの条件やペナルティがあるのかあわせて確認します。「近くに商業施設がない場合」という条件を付すとの報道がありますが、そもそも商業施設がない場所に子どもは住んでいません。総理、やはり10万円は全額現金で給付すべきです。なぜなら、一番使い勝手のいいクーポン券は日本銀行券、つまり現金ですから。

住民税非課税世帯への10万円給付

次に、低所得者向けの現金給付について伺います。住民税非課税世帯のうち、60代以上の高齢者世帯は何割になりますか。厚生労働省の国民生活基礎調査を基に、全世帯から住民税「課税」世帯を差し引いた非課税と思われる世帯数は、60代以上が約8割を占めています。政府の低所得者向け現金給付では、コロナ禍で歯を食いしばって頑張っている多くの現役世代を救えません。総理の見解を伺います。

所得連動型課税条件付き一律給付

国民民主党は、10万円の現金給付は、全国民に一律で行った上で、高所得者には後に課税、すなわち逆還付を求める「所得連動型課税条件付き一律給付」を提案しています。複雑怪奇な政府案より、迅速に給付できます。そもそも、岸田内閣の給付金事業では、年収200万円程度の独身のワーキングプア層を救うことができません。総理、今からでも遅くありません。私たち国民民主党はこの「所得連動型課税条件付き一律給付」を盛り込んだ補正予算の組替動議を提出しますので、賛成してください。

マイナンバーと全銀行口座の紐付け

国民民主党は、マイナンバーを全ての銀行口座に紐づけ、イギリスのように月単位で所得や資産を把握できるようにし、生活に困った人が申請不要で迅速に振り込まれる「プッシュ型支援」を提案しています。コロナで露呈した政策インフラの不備を1年以上放置してきたことは問題です。給付方法をめぐる不毛な論争に終止符を打つためにも、マイナンバーを全ての銀行口座に紐づけるべきと考えますが、総理の見解を伺います。

消費税減税法案を提出

国が税金を集めて必要な人に配るのがこれほど非効率で遅いのなら、そもそも税金を取るのをやめたらどうですか。今こそ、コロナ禍からの経済回復までは消費税率を5%に引き下げるべきです。私たち国民民主党は、賛同いただける他党とも協力して消費税減税法案を国会に提出するので、賛成してください。

教育国債の発行で人づくり予算を倍増

国民民主党は、選挙公約で「人づくりこそ国づくり」を訴えました。総理も所信で「人への分配が未来への『投資』」と述べられました。もし本当に「投資」と考えておられるなら、教育・科学技術予算を公債発行対象経費とし、国債を発行して「人への投資」予算を倍増させるべきです。国民民主党は、使途を人づくりに絞った「教育国債」の発行によって、今後10年間、教育・科学技術予算を年間5兆円規模から10兆円規模に倍増させることを公約に掲げました。教育国債を発行可能とする財政法の改正を検討すべきと考えますが、総理の見解を求めます。

成長戦略

総理は「半導体国内立地推進のための法案を、この国会に提出する」と表明しましたが、この工場の新設支援は何件程度で、稼働はいつ頃を想定していますか。報道によれば、最初の支援先とされる台湾のTSMCが熊本に新工場を操業するのは3年後です。総理、それでは、当面の半導体不足の解消には間に合わないのではないですか。

国民民主党は、企業、特に中小企業におけるデジタル、環境分野への投資を加速するため、投資額以上の償却を認める「ハイパー償却税制」を公約に掲げました。デジタル化が遅れている政府が民間のデジタル化を主導するのは無理筋です。民間主導でデジタル化を一気に進めるため「ハイパー償却税制」を導入すべきと考えますが、総理の見解を伺います。

農業次世代人材投資資金の地方負担

農業分野は後継者の育成が急務です。しかし、岸田内閣は、全額国費負担だった青年就農給付金、現在の農業次世代人材投資資金について、地方自治体に半額負担を求める制度に変えようとしています。これでは財政力の乏しい地方では後継者育成が困難となるため、自治体の負担割合を引き下げるべきです。総理の見解を伺います。

皇位の安定継承

最後に皇位の安定継承について伺います。先日、皇位継承に関する有識者会議は、旧皇族の男系男子を養子として皇族にすることも提案しました。政府として、20代、30代の旧皇族の男系男子が何名いらっしゃるのか把握しているのか、また、皇族となる意思を確認しているのか、答弁を求めます。

結び

日本の最大の課題は、四半世紀にわたって賃金が上がらないことです。がんばって就職して一所懸命働けば給料が上がる、そんな希望さえあれば、学生は奨学金を借りることも不安ではないし、若い人も結婚できるし望めば子ども持てます。年金の不安だって薄らぐでしょう。つまり、日本の問題の多くは、給料、賃金が上がらなくなったことが原因です。しかし、この間、日本人が怠けたから賃金が上がらなかったわけではありません。みんな自分や家族、子どものために懸命に働いてきたはずです。間違っていたのは、経済政策です。だからこそ今、経済政策の転換が必要です。国民民主党は、経済政策を規律ある積極財政に転換し、人への投資を倍増させることで「給料が上がる経済の実現」に全力で取り組みます。国民民主党に任せていただければ所得を倍増させます。この決意を、国民の皆様にお誓い申し上げ、質問を終わります。