新しい事業を実現したいが、規制が壁となっている。何とかならないものか。
そんな悩みを抱えている企業、特にベンチャー企業の方から相談を受けることがよくあります。
その悩みはどうやら大きく2パターンに分けられるように感じています。
一つは、新規事業が規制に抵触するのか不明確であるというパターン。
この場合には、規制改正の働きかけをするまでもなく、その制度の運用を明確化してもらえばよいだけですが、普通の人にとっては結構難しいですよね。そもそも役所に電話することですらおよび腰になる人も多いような気がします。
仮に聞くことができたとしても、どれだけ丁寧に回答してくれるかは担当者次第です。
新しいビジネスモデルが既存の規制の対象となっているかを判断するのはかなりの労力を要するので、役所がいつまでたっても見解を示してくれないということも起こりえます。
実はこれについて、民間側が制度の解釈を問い合わせることができる公式な仕組みを政府として作っているんです。
二つめは、新事業の実施が現在の規制上違法であるパターン。
この場合は、最終的に各省庁の大臣をトップとする官僚がその規制を改正することを決意しなければいけません。
従来は政治家や官僚への提案の仕組みは体系化されておらず、働きかけが上手な人たちがそれぞれのやり方で政策提案をしていました。
でも最近は、民間企業や自治体がやりたいことをできるよう、民間からの提案で規制を変えていくための公式な仕組みを政府も作っています。
今回は規制を改善するための公式な仕組みについて、解説していきます。
1)新規事業が規制に抵触するのか確認する方法
新しい事業を始めた後に、実は既存の規制に反していることが分かってしまうと、企業にとっては大きな損失ですよね。大掛かりな投資や人的リソースを割く前に、新しく考えている事業が、法令に反していないかを確認できたら経営上のリスクは大きく下がります。
そんな場合に利用できる制度がグレーゾーン解消制度です。
この制度では、新事業を行おうとしている者は、新事業の内容や実施予定時期、解釈を明らかにしてほしい規制等を明確にし、規制の適用があるかどうかを規制を担当している官庁(以下「規制官庁」)に照会することができます。
また、照会内容を作るにあたって、役所(主に経産省)によるサポート(事前相談)を受けることができますので、役所に出す文書の作成に不慣れな方も安心して制度を利用できることができます。
その照会を受けた規制官庁は、原則として1か月以内に事業者に回答することになっています(※)。新事業実施までさほどのタイムロスなく役所の見解を確認することができるのは企業などにとって大きなメリットと思います。
※事前相談に半年以上の時間がかかるケースもあると制度利用者の体験談が記事になっています。
主務大臣は事業者への回答後、回答の概要を公表することになっているので、政府の公式見解を公にすることができる仕組みです。
一例として、寝具メーカーが、睡眠環境の改善アドバイスや商品提案を行うサービス等が
「医師でなければ、医業をなしてはならない。」と規定する医師法第17条に反しないか、という照会をしたことがあります。
このケースは厚生労働省により、医師法に反しないことが確認された結果、新しい事業実施(↓)につながりました 。
規制改革までは考えないが、新しい事業を実施する前に、法律上の懸念を解消しておきたい、という場合に利用できる仕組みです。
ただし、この制度を利用して、あなたが望む回答を規制官庁が返してくれるとは限りません。新規事業が規制に抵触する可能性があるという返答がかえってくる可能性もあります。
その場合、次にとりうる手段として、新事業特例制度や規制のサンドボックス制度を利用して、特例措置を狙うことが考えられます。しかし、「規制に抵触するのであれば、特例措置を要望します」と、規制の趣旨を理解せずに単に要望しても、必ずしも特例措置が認められるわけではありません。
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編集部より:この記事は元厚生労働省、千正康裕氏(株式会社千正組代表取締役)のnote 2021年12月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。