18歳以下へのコロナ給付金10万円の支給方法をめぐっては、政府(与党)の政策が二転三転しており、野党や全国自治体からも批判を浴びています。
このところマスコミも毎日この問題を取上げ報道を繰り返していますが、支給対象者は一部ですから、全国民の関心事というわけではありません。それだけではなく、過熱報道すればするほど、給付金問題の本質からはずれていきます。
そもそも10万円給付の目的は何かを明確にし、費用対効果がどの程度あるのかもしっかり検証しなければならないはずですが、支給の対象範囲や方法に関心が集まってしまい、ああでもないこうでもないと、国会などで不毛な(?)論争が行われています。
地方紙にも、そんな有様に苦言を呈する記事が見られます。
記事の最後では、10万円給付の目的のあいまいさを指摘していますが、まさに同感です。ただ、筆者は「18歳以下への給付金迷走」にとどまるような問題ではなく、何か大きなことが起きるたびに繰り返されてきた給付金・補助金などのバラマキ政策が、構造的な問題の核心ではないかと睨んでいます。
コロナ禍において緊急の支援金が必要なことはわかりますが、非効率とも思えるお金の使い方をして、はたして日本の財政はこの先持ちこたえられるのでしょうか?
ご存知のように、日本の財政赤字は長期にわたり雪だるま式に増えています。
歳出・歳入、国債残高の推移をグラフや表から追っていくだけでも、日本の財政赤字の深刻さがわかると思います。確かに日本の場合、国債のほとんどを国内企業が購入し、大半のお金は国内で循環していますから、現時点ではそれほど深刻とまでは言えません。しかし、そもそもプライマリーバランスの赤字が続くこと自体が異常であり、一般家計ではありえないことです。このまま国富を超える借金まで膨れ上がってしまったら、国債の大暴落もないとは言い切れないでしょう。
実は政府が財政赤字を楽観視していないことは、国民に対して年金の徴収額増・支給開始年齢引き上げや健康保険料の値上げを、実施あるいは画策していることからもわかります。
サラリーマンが天引きされる税・保険料負担が増加 2023年に負担率50%超へ
つまり、私たちが給付金など目先の得に喜び浮かれていると、後々そのツケを払わされる可能性が大きいということです。この年金料や保険料の引き上げは、直に国民の生活を圧迫していく深刻な問題なのですが、給付金問題ではしつこく報道するマスメディアも、なぜか年金・保険料の負担増加問題を、ことさら取り上げて追及するようなことはありません。
何割もの大して痛手を受けていない家庭にまで、一時金というご褒美を与えることより、まずはその日暮らしの生活困窮者を助けるために、国民の税金は優先的に使うべきではないでしょうか?
コロナ禍が収まりつつある現在でも、主に非正規雇用者の中で、シフト・勤務時間が削られることで収入が減り、路上生活者と同様に食事も満足にとれなくなり、NPOなどが行う炊き出しに集まる人は増えているのです。
まず、政府がすべきことは、できるだけ早く経済活動を元通りにすることであり、企業の収益を回復させ、労働者の給与を増やしていくことです。また、すでに職を失った人々(特に非正規労働者)に対しては、再就職の場を用意したり、失業手当支給期間を越えた場合に延長支給したりするなど、実効性のある補償を迅速に行うべきではないでしょうか。
どうも政治家や官僚は、給付金や支援金は元々国民が納めてくれたお金だということを忘れてしまったかのようです。私たちは「お金をもらう」「サービスポイントが付く」ことに浮かれてはいけません。何も得をしたわけではなく、自分たちのお金が姿かたちを変え、世の中にばらまかれただけです。結局ツケは政治家や役人が払ってくれるわけではなく、国民自身で払うしかないのです。
そんな構図がわかれば、貴重な血税は本当に困っている人・団体へ直接行き渡るように、より効率的に投入されるべきではないでしょうか?
とにかく政府には、長いスパンで日本経済・国民生活のためになる政策を実行してほしいと思います。