ウィーンで連帯の「光の鎖」が灯る

第4アドベントの日曜日(19日)、オーストリアで戦後初めて日曜日にショッピング街がオープンした。ロックダウン中も開いていた食料や日常必需品を扱う店とスーパーは閉店だが、それ以外の店は開店した。3週間続いた4回目のロックダウン(都市封鎖)でクリスマス商売がダメージを受けたことから19日の日曜日、クリスマス前のショッピングで活気を取りもどし、売り上げを上げてマイナスを埋めようということで商店街は喜んでいる。ただし、「今回1回限りで、日曜日営業を今後も認めるものではない」(政府側)という。

ウィーン市内でコロナ犠牲者を追悼し、コロナ禍で連帯を表明する「光の鎖」が灯る(2021年12月19日、バチカンニュース(独語版)公式サイトから)

クリスマス前最後の日曜日、多くの店はクリスマスバーゲンで人々を誘っている。久しぶりに街での買い物を楽しむ人々は大喜びだ。ウィーンではマリアーヒルファーやケルントナー通り、ショッピングセンターは多くの人で賑わった。

ところで、19日夜7時(日本時間20日午前3時)、ウィーン市のリンク通りにはコロナウイルスの感染で亡くなった約1万3400人を追悼するとともに、コロナ患者の看護に従事する医師、看護師、奉仕活動家などに感謝を表明する「光の鎖」(Lichterkette)が行われた。警察側の発表では3万人の市民が参加した。

「光の鎖」運動を呼びかけた主催者側によると、「コロナで亡くなった犠牲者を慰霊するとともに、コロナ感染対策のために従事する全ての人に感謝を表明するのが目的」という。スローガンは「Yes We care」だ。夜6時ごろになると、リンク通り周辺に人々が集まり出し、7時になると集まった人はろうそく、ランプ、スマートフォンで光を灯した。国立歌劇場からリンク通りは「光の鎖」が出来た。10分間灯し、その間、黙祷して終わる。主催者側や政治家の演説もなければ、プラカードを掲げる人もなかった。同運動には40の組織団体、医師会、労働組合、宗教団体が支援した。

オーストリア国営放送の夜のニュース番組の中で、「光の鎖」に参加した老夫婦が、「クリスマスを間近に控え、反対や抗議のためではなく、何か皆のためになることをしたいと思ってきた」と述べていた。参加した人は10分後、自然解散して家に戻っていった。ちなみに、ファン・デア・ベレン大統領は「光の鎖」には直接参加しなかったが、ホーフブルク宮殿の大統領府で窓際にろうそくを灯し、連帯の意思を表明したという。

オーストリアでは11月22日から3週間続いた4回目のロックダウンが終わり、ワクチン接種者は通常のコロナ規制下で動けるようになった。ただし、ワクチン未接接種者は依然ロックダウン状況が続くが、政府側は、「クリスマスの24日から26日の3日間」とシルベスター(大晦日)の31日は10人以下ならば集まっていい特例を発表したばかりだ。クリスマスの日も家族で集まることができないとなれば、未接種者の反発が大きいこと、コロナ規制を監視する警察側も大変ということから決まったのだろう。

コロナの新しい変異株オミクロン株が拡散したオランダでは19日から来年初めまでロックダウンを始めた。英国では2人に1人の感染者はオミクロン株だという。緊急事態を呈している。4回目のロックダウンを終え、制限された環境圏ながら、クリスマスを祝うことが出来るオーストリア国民はラッキーかもしれないが、ウイルス学者はクリスマス期間、オミクロン株が猛威を発揮し、再び新規感染者が増加する可能性がある、と既に警告を発している。

オーストリアでは4回目のロックダウン開始前の11月には新規感染者は1万5000人を超えたが、今月19日現在、2000人台に減ってきている。ただし、病院入院患者数や集中治療室患者数は微減に留まっている。ここにきてオーストリアでもオミクロン株の感染者が急増する気配が見られる。政府は国民にワクチン接種を呼びかけ、ブースター接種を勧めているが、ワクチン接種率は20日現在、接種完了者は71.1%とようやく70%台に入ったばかりだ。

来年2月1日から全国民を対象にコロナウイルスへのワクチン接種が義務化される。今月11日、12日の週末、オーストリアではワクチン接種義務化に反対する抗議デモが行われた。首都ウィーンで極右政党「自由党」が主催した抗議デモ集会では、警察側の発表によると、約4万4000人が市内を抗議行進した。第2の都市グラーツでも約2万人、インスブルックでは約6000人が抗議デモに参加したという。外出制限やFFP2マスクの着用義務などのコロナ規制が実施されて以来、オーストリア社会は規制反対派と支持派に分裂してきたが、ワクチン接種の義務化が表明されて以来、その分裂は一層深まってきた。

「光の鎖」に参加した1人のウィーン市民が、「コロナ規制に反対する抗議デモ集会が頻繁に行われ、一部過激化しているニュースを見聞きすることが多いが、大多数のウィーン市民はコロナ禍で助けあい、連帯している。その姿を見せたいと思った」と述べていたのが印象的だった。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2021年12月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。